OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

夜通しオールスタアズ

2008-09-14 17:40:52 | Jazz

飛行機のトラブルか、仕事のスケジュールが狂った感じで、待ち人来たらず……。今はケイタイの時代でしょう。そんなんじゃ、人望無くするよぉ~。

ということで本日は――

All Night Long (Prestige)

ジャズの醍醐味のひとつにアドリブ合戦があるのは言わずもがな、それをレコード化して発売するのは業界の王道です。しかし制作が比較的容易な反面、その場のリラックスした雰囲気と緊張感を両立させた作品は、それほど多くありません。

そのあたりはプロデューサーの手腕、現場の仕切る者の人望と度量、さらに参加ミュージシャンのその日のコンディション等々が大きく関与するのかもしれませんが、そういうレコーディングを得意にしていたのがプレスティッジという会社です。

実際、その手の作品をどっさり発売していた実績は無視出来ず、それがジャズの歴史の中でどうこう云われる価値とは無縁でも、間違いなく当時リアルタイムの熱気とモダンジャズ黄金期の勢いが封じ込まれたアルバムは楽しいかぎりなのです。

本日の1枚は、まさにそうした中の代表作で、録音は1956年12月28日、メンバーはドナルド・バード(tp)、ハンク・モブレー(ts)、ジェローム・リチャードソン(ts,fl)、マル・ウォルドロン(p)、ケニー・バレル(g)、ダグ・ワトキンス(b)、アート・テイラー(ds) というバリバリの凄腕達です――

A-1 All Night Long
 ワイワイガヤガヤしたスタジオの雰囲気からアート・テイラーの素晴らしいシンバルが4ビートの美学を敲き出し、ケニー・バレルがそれを受け継ぐリードのアドリブ、そしてダグ・ワトキンスの強靭なウォーキングベースが響いてくれば、その場は完全なハードバップに染まります。
 あぁ、これがジャズの醍醐味でしょうねぇ~♪ 自然体のグルーヴがハードバップそのもので、この最初の雰囲気を聴きたいがために、私はこのアルバムを取りだすほどです。
 ちなみに演奏には特に明確なテーマメロディが無く、自然発生的にケニー・バレルがペース設定のアドリブを展開し、リズム隊が快適なバックキングというツカミが本当にたまりません。
 そしてジェローム・リチャードソンが滋味豊かなフルートを聞かせれば、続くハンク・モブレーは柔らかな音色でタメとモタレの至高の芸術♪ さらにマイルド&パワフルという、まさに「モブレー節」のテナーサックスが最高です。
 またドナルド・バードの溌剌としたトランペットは、些かの力みがかえって好感を呼ぶほどですし、ダグ・ワトキンスがいろいろと仕掛けてくるリズム隊の強靭なグルーヴは、これが当たり前と思ったらハードバップ全盛期の凄さに震えがくるほどです。
 しかもジェローム・リチャードソンがハードエッジなテナーサックスを聞かせる二度目のお勤めとなるのですから、たまりません! LP片面全部を使った長い演奏ですが、各人のアドリブパートでは背後から楽しいリフが様々に聞かれたりして飽きませんし、クライマックスでのアート・テイラーをメインとしたソロチェンジも、流石の楽しさに溢れています。

B-1 Boo-lu
 ハンク・モブレーのオリジナル曲で、フルートとラテンリズムを上手く活かしたアレンジが新鮮です。
 もちろん、そのフルートを操るジェローム・リチャードソンがここでも名演を披露♪ 時折入れるヒステリックなフレーズもイヤミではなく、あくまでもハードバップの範疇という正統派の主張に徹しています。
 ちなみにアドリブパートはグルーヴィな4ビートになっていますから、ケニー・バレルの安定感、ドナルド・バードの丁寧なノリ、ハンク・モブレーの味わい深さは「お約束」ながら、アート・テイラーのドラムスが何時ものヴァン・ゲルダー録音よりは強くミックスされているので、演奏に「芯」が入ってる感じです。

B-2 Flickers
 ちょっとホレス・シルバーかハンク・モブレーが書きそうなファンキーメロディですが、実はマル・ウォルドロンの作曲!? 力強いリズムアレンジも魅力ですし、グイノリのリズム隊をリードするダグ・ワトキンスが流石の働きです。
 しかしアドリブパートは短めで、各人がいずれも好演なだけに勿体感じ……。中でもジェローム・リチャードソンのフルートが実に良いですねぇ~♪ ハンク・モブレーとドナルド・バードがソロチェンジで進めるパートも楽しいところです。

B-3 Lil' Hankie
 タイトルどおり、これもハンク・モブレーのオリジナル曲で、如何にもという、ちょっと燻ったファンキー節にグッとシビレます。 もちろんアドリブパートの先発はハンク・モブレー自身ですが、これが珍しく意気込み過ぎたというか、入り方に何時ものタメがなく、それゆえにアート・テイラーがオタオタする様子が面白いところ♪ まあはっきり言えばイモったわけですが、その後のハンク・モブレーは平常のペースを取り戻し、モブレーマニアには感涙のフレーズを連発してくれますから結果オーライ♪ と苦しい言い訳をしておきます。
 しかし続くドナルド・バードがミュートで快演を聞かせ、ケニー・バレルの張り切ったギターが続くあたりは、如何にもハードバップな日常として痛快です。
 ちなみにケニー・バレルは、これがプレスティッジに移籍しての初レコーディングでしょうか? だとすればハッスルぶりも憎めませんね♪

ということで、なかなか味わい深くて楽しいアルバムですが、録音の良さというか、その場の雰囲気がしっかりと残されているのは流石です。特にアート・テイラーのドラムスの迫力とシンバルの鳴りの良さ、ジェローム・リチャドーソンのフルートの音色等々、なかなかリアルだと思います。ギシギシと軋むダグ・ワトキンスのペースも凄いですねぇ~♪

それと特に目立つアドリブは演じていないものの、実はこういうセッションではバンマスだったと言われるマル・ウォルドロンの存在は、多分ここでもヘッドアレンジやメンバー召集に手腕を発揮しているものと推察しています。

人徳が必要なのは何もジャズに限ったことではありませんが……。

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