■Wynton Kelly (Vee Jay)
ウイントン・ケリーが嫌いなジャズ者って、いるのかなぁ~?
なんて戯言をタレるまでもなく、歯切れが良くて粘っこい、颯爽としてグルーヴィなウイントン・ケリーのピアノは最高ですよねぇ~♪
本日ご紹介のアルバムも名盤にして人気盤の1枚てすから、何時までも聴き飽きない魅力がぎっしり詰まっています。
録音は1961年7月20&21日、メンバーはウイントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds) という、当時のマイルス・デイビスのバンドでは鉄壁のリズム隊! つまりウイントン・ケリーが全盛期の演奏というわけです。
しかしこのアルバムには昔っからひとつの疑問点がつきまとい、それはジャケットに記載された、もうひとりの参加者たるサム・ジョーンズ(b) が、いったいどの曲で弾いているのか? ということです。そのあたりについてはジャズ喫茶でも論争が絶えないという、今では懐かしい思い出もあるほどですが、個人的には独断と偏見とはいえ、少しは聞き分けが出来るように思います。
A-1 Come Rain Or Come Shine
本来はスローバラードのスタンダード曲ですが、ウイントン・ケリーは得意のミディアムグルーヴが全開の粘っこい歌心を存分に披露した名演を聞かせてくれます。
硬質でシャープなジミー・コブのシンバルワークゆえに、それが新しいハードパップのひとつの道筋という感じですが、気になるペースはサム・ジョーンズだと推察しております。というか、この曲と続く他の演奏を比べると、明らかにベースの音色とノリが違うんですねぇ。所謂グイノリが強い、「先ノリ」のウォーキングとギシギシ歪む指弾きの音が特徴的です。それは短いながらも一瞬だけ演じられるペースソロでも明確じゃないでしょうか?
しかしそんな事に気をとられることも出来ないほど、ウイントン・ケリーのピアノは快適ですよ♪♪~♪
A-2 Make The Man Love Me
そしてこれが、淡く、せつないメロディのスローや演奏♪♪~♪
クレジットではウイントン・ケリーの作曲とされていますが、これって、スタンダード曲じゃないでしょうか? まあ、どちらしても、素敵なメロディに変わりはありません。
一般的にウイントン・ケリーはスロー曲がイマイチとか言われますが、この演奏を聴けば、それは一蹴されるでしょう。このメロディフェイクの上手さ、小粋なアドリブフレーズと絶妙のスイング感は絶対です♪♪~♪
あぁ、泣けてきますねぇ~♪
A-3 Autumn Leaves / 枯葉
これまたウイントン・ケリーの代名詞的な名曲名演! おそらくはマイルス・デイビスのバンドに入ってから十八番にしたのかもしれませんが、一説にはウイントン・ケリーの演奏を聴いてから、マイルス・デイビスがレコーディングしたという噂もあるほど!?
ですから、ここでのウイントン・ケリーは薬籠中の快演で、小気味よいアドリブフレーズの連なりや飛び跳ねて、さらに粘っこい絶妙の「ケリー節」が存分に披露されます。
ちなみにベースはポール・チェンバースでしょう。その柔軟なペースワークは、まさにこのトリオの要として、秀逸なアドリブと微妙に「後ノリ」の4ビートが実に心地良いと思います。
A-4 Surrey Wiht The Fringe On Top
これもマイルス・デイビスの名演が残されている小粋なスタンダード曲ということで、アントン・ケリーはテーマ部分の演奏から、少しばかり趣を異にしたアレンジが新鮮です。
そしてミディアムテンポのアドリブに入っては、ファンキーな味わいも強い、これぞの「ケリー節」が大サービスされるのです。
淡々としてジャストなジミー・コブのドラミングが粘っこいペースとピアノをがっちりと支えることによって生み出される、このトリオならではグルーヴは本当に最高ですねっ♪♪~♪
B-1 Joe's Avenue
ウイントン・ケリーが書いた変則的なブルースで、こういうテーマ部分の2ビートの絡みからして、ベースはポール・チェンバースでしょう。それに続く4ビートのウォーキングが、所謂「後ノリ」になっているのも特徴的です。
肝心のウイントン・ケリーは颯爽としてグルーヴィな魅力が全開!
B-2 Sassy
これもウイントン・ケリーのオリジナルで、前曲よりもグッと粘っこいテンポで演じられるグルーヴィなブルースです。そして明らかに異なる雰囲気のペースは、サム・ジョーンズじゃないでしょうか?
幾分ツッコミ気味のペースにジャストなドラムス、そして粘っこく飛び跳ねるピアノという、実にハードバップの真髄を体現したこのトリオも、なかなかに魅力的だと思います。
B-3 Love I've Found You
これは地味なスタンダード曲のスローな演奏ですが、おそらくはウイントン・ケリーのお気に入りだったのでしょう。同時期に録音されたマイルス・デイビスのライブ名盤「At The Blackhawk Vol.1 (Columbia)」でも、バンドチェンジの幕間に短く聞かせてくれましたですね♪♪~♪
ここでも同様の雰囲気で、そのシブイとしか言えないメロディフェイクは、ウイントン・ケリーの別の顔を見たという感じでしょうか、私は好きです。
B-4 Gone With The Wind
そしてオーラスは、まさにウイントン・ケリー・トリオの真骨頂という、アップテンポの大快演! シンプルなシンバルワークにビシッと炸裂する強烈なアクセントが最高というジミー・コブのドラミングも冴えわたりですから、ピアノとベースの強靭なコンビネーションも殊更に気持ち良いですねぇ~♪
スインギーに転がりまくるウイントン・ケリーのピアノは、こちらがイメージするとおりのフレーズ展開を存分に聞かせてくれるのでした。
ということで、人気盤はやっばり良いなぁ~♪
ベーシストの問題は「Come Rain Or Come Shine」と「Sassy」だけが明確にサム・ジョーンズの参加として良いと思いますが、これはあくまでもサイケおやじの独断とお断りしておきます。
まあ、それよりもピアノトリオの快演盤として素直に楽しむのが得策でしょう。聴いているうちに自然にそうなってしまう魅力が、このアルバムには確かにあるのです。
近年は大量の別テイクを入れたCDも出回っているようですから、そっちも欲しいのが本音ではありますが、このアナログ盤には曲の流れとか構成の妙に不思議な愛着が感じられ、おそらく私は死ぬまで愛聴する予感がしています。