今日は寒さが身に染みましたねぇ~、やっぱり冬です。こういう時は熱い珈琲に熱いアルバムという、ジャズ喫茶モードに入りたくなります。
そこで――
■Hard Driving Jazz / Cecil Taylor (United Artists Jazz)
フリーの闘将と呼ばれたセシル・テイラーのリーダー盤にしては、ジャケットがお洒落でしょう♪ これだけ見ていると、なんか今流行りのソフトロックのオムニバス盤みたいですが、中身はブリブリのハードバップというのも、これまた意外だと思います。
なにせリーダーがフリーの闘将ですし、もう1人の看板がジョン・コルトレーンですから! 聴く前だと、どんなに恐い演奏になっているか、恐ろしさだけが先にたつような、嫌な予感に満たされているはずです。
また、後にジョン・コルトレーン名義のアルバム「コルトレーン・タイム」として再発までされているブツでもあります。
録音は1958年10月13日とされており、メンバーはケニー・ドーハム(tp)、ジョン・コルトレーン(ts)、セシル・テイラー(p)、チャック・イスラエル(b)、ルイス・ヘイズ(ds) という、やっぱり震えがくるほどのコワモテ揃いです――
A-1 Shifting Down
セシル・テイラーのイントロは、ちょっとデューク・エリントンかセロニアス・モンクに通じる幾何学的なものですが、続くテーマが極上のグルーヴィなブルースというアンバランスな魅力が最初から全開してしています。ちなみに作曲はケニー・ドーハム♪
しかしアドリブパートに入って最初に登場するジョン・コルトレーンが、得意技のシーツ・オブ・サウンドで音符の洪水を聞かせるクダリになると、背後で炸裂するセシル・テイラーの恐い伴奏と相まって、決定的にハードな世界に様変わりするあたりが快感です。
するとセシル・テイラーは案外メチャクチャはせずに、セロニアス・モンクの影響下にあるような、それでも自分なりの文法でクールなアドリブを聴かせてくれます。
そして締めはケニー・ドームスが、これぞファンキー&ハードバップの真髄という、温か味のあるトランペットを吹きまくり♪ もはや伴奏でセシル・テイラーが暴れても全く動じない、堂々たる存在感を示すのです。
う~ん、このあたりの三者三様の有り様は、まさにプロデューサー=トム・ウィルソンの思惑どおりなんでしょうか? 一粒で三度美味しいという、ありがたさです。
さらにチャック・イスラエルの独白のようなベースソロもあって、なかなか妙な心持になれる演奏だと思います。
A-2 Just Friends
モダンジャズでは定番のスタンダード曲ということで、初っ端からケニー・ドーハムとジョン・コルトレーンが素直にテーマを吹き、リズム隊も快適なテンポで伴奏して演奏がスタートします。
しかしアドリブパート先発のセシル・テイラーが、独り浮きまくりの過激節です! 叩きつけるようなピアノタッチ、どこから持ってきたのか不明という音符の連なりが、グイノリのベースとドラムスを置き去りにするかのような弾けっぷりなんですねぇ~♪ こういうの、好きですよっ、私は!
ただし、続くケニー・ドーハムの極めて正統派のハードバップ節も、たまりませんねっ♪ 本当に溢れ出る歌心と和みの音色は快演だと思います。
そしてジョン・コルトレーン! ブリブリに吹きまくっていますが、歌心も忘れていない、この時期だけの良さを存分に聴かせてくれます。
B-1 Like Someone In Love
これも有名スタンダード曲で、本音は和みの追求なんでしょうが、テーマをリードするジョン・コルトレーンは意識過剰……。逆にケニー・ドーハムは余裕の変奏から絶妙のアドリブに入っていくあたりが、流石です。おぉ、最高の歌心♪
ですから、伴奏で好き放題のセシル・テイラーが悲しい雰囲気にも……。
しかしジョン・コルトレーンがド迫力の猛烈ソロを展開すると、ようやくセシル・テイラーも息を吹きかえすというか、違和感なく馴染みだし、自らのアドリブも全くのジコチュウながら異様な空間美の追求は聴き応えがあります。
またチャック・イスラエルのベースソロが、良いですねぇ~♪ この人は後にビル・エバンス・トリオに入りますが、ここで既に完成されたスタイルを聴かせてくれるのでした。
B-2 Double Clutching
そのチャック・イスラエルが書いた急進的なブルースで、アップテンポで絡み合う2管が刺激的というテーマに味があります。
アドリブパートでは、まずケニー・ドーハムが、ここでも絶好調! ルイス・ヘイズのドラムスとのコンビネーションも冴えています。
またジョン・コルトレーンは少しばかり無機質になっていますが、ダークな音色を活かしたテナーサックスの魅力を聴かせつつ、厳しい世界を構築していきます。
すると続くセシル・テイラーも大ハッスル! ジョン・コルトレーンのバックでは、やや押され気味でしたが、ここでは思う存分に自己中心世界を演じています。もちろんベース&ドラムスは、それに巻き込まれることがありませんから、全く独立したグルーヴが発生している素晴らしさだと思います。
終盤のソロチェンジも楽しい結末ですねっ♪
ということで、ド派手なバリバリ演奏を期待するとハズレ、逆に和みを期待してもハズレという意地悪な作品ですが、なんとも味があります。それはメンバーがそれぞれに自分を曲げていないからですし、ドラムスのルイス・ヘイズの汎用性の高い実力とチャック・イスラエルの物分りの良いベースも嫌味になっていません。
現在ではセシル・テイラーにしても、またジョン・コルトレーンにしても、過渡期の演奏記録としての価値しか認識されていないようですが、ひとつのアルバムとして楽しむのが王道かと思います。
メンツに臆する事無く、聴く前に肩の力を抜いておくと、なかなか楽しい演奏だというのは、余計なお世話でしょうねぇ。現在は「Coltrane Time」のタイトルでCD化されています。
ハンニバルも良いし、グロスマンも良いですねぇ~♪
一途なところが好きですよ。
そういう烈しいジャズは、滅多に聴くこともなくなりましたが、たまに無性に精神と身体が要求することがありますね。
これからもよろしくお願い致します。