今日は大荒れの天気でした。
そんな中、新年会が挙行され、本日はまあまあ宴会を楽しむモードに入れましたけど、それは出掛けにこんなアルバムを聴いた所為でしょうか――
特別な事をしなくても、周囲を和ませてしまう人って、どこの世界にもいますよねっ♪ ジャズ界では、ベニー・グリーンという黒人トロンボーン奏者が、そうだと思います。
ジャズ・トロンボーン奏者としては、超絶技巧のJ.J.ジョンソンやハスキーな歌心が魅力のカーティス・フラーあたりが、あまりにも有名ですが、隠れた人気者というか、ジャズ喫茶の人気者というか、自然体でジャズって良いなぁ~♪ とジンワリと染み入ってくるのが、ベニー・グリーンの真骨頂だと思います。
その特色は、オトボケ&ファンキー♪
また残された音源の共演者に、あのソニー・クラークが多いというのも、ポイントが 高いところです。
このアルバムは、もちろんそのひとつで、しかもソニー・クラークが作った人気曲を演奏しているという楽しい1枚♪
録音は1960年9月27日とされていますが、これは諸説あるようです。メンバーはベニー・グリーン(tb)、ジミー・フォレスト(ts)、ソニー・クラーク(p)、ジョージ・タッカー(b)、アルフレッド・ドリアーズ(ds)、ジョー・ゴルガス(per) という、シブイ人選です。
ちなみに演目はアルバム記載にミスがありますので、僭越ながら正しい曲順・曲名を記載します――
A-1 Sometimes I'm Happy
チャカポコの打楽器、そしてファンキーなソニー・クラークのピアノのオカズが印象的というリズム隊が、まず冴えていますねっ♪ 柔らかにテーマメロディをユニゾンしてくれるフロントのホーン隊2人の和み度も、かなりのものです。
それはアドリブパートにも持ち越され、オトボケを通すベニー・グリーンに対し、タフテナーの醍醐味を披露するジミー・フォレストの対比が鮮やか♪ 続くソニー・クラークのファンキー節も、期待どおりの味があります。
さらにラストテーマ前のオトボケアレンジが全く腑抜けた魅力なのでした。
A-2 Cool Struttin'
あまりにも有名なソニー・クラークのオリジナル曲ですが、ここでもなかなかファンキー度が高い演奏になっています。ただしそれは、ソフトファンキーとでも申しましょうか、緊張感よりはホンワカした黒っぽさなんですねぇ~♪ バックで炸裂するソニー・クラーク十八番のギュ~ンという伴奏も、たまりません。
と書くと、ライト感覚の演奏かと思われますが、いやいや、これは誰にでも出来る技ではありません。ベニー・グリーンのディープな歌心とジミー・フォレストの直球勝負というハードバップ魂は、聴いた瞬間にジャズの楽しさを感じるはずです。
また、お目当てのソニー・クラークはオリジナル・バージョンよりもテンポが速いこともあって、伴奏のパーカッションとのコンビネーションも絶妙なアドリブを展開しています。
A-3 Solitude
通常はスローで演奏される有名スタンダードなんですが、ここでは快適なテンポでグルーヴィに聴かせてくれます。
特にテーマ部分でのハスキーな管楽器の響きは最高ですし、リズム隊の粘っこい雰囲気も素晴らしいと思います。
そしてベニー・グリーンは本当に和みのアドリブ♪ いっしょに口ずさんで楽しめるという美メロのオトボケは、一代の至芸でしょう。またジミー・フォレストの堅実なフォローと自己主張からは絶対的な自信が溢れているようです。
B-1 Sonny's Crib
これも有名なソニー・クラークのオリジナル曲で、ブルーノートにはジョン・コルトレーン(ts) を含むハードバップ真っ只中のバージョンが残されていますが、ここではやはり和みのファンキー色に染上げた演奏になっています。
まずジミー・フォレストが絶好調の力み節♪ それが嫌味になっていない痛快さですし、もちろんソニー・クラークはツボを外さないアドリブソロと伴奏です。バックのチャカポコリズムも快適ですねぇ~♪
そしてベニー・グリーン! もう楽しさの極みつきですよっ♪ 覚え易いアドリブは点数が高いですし、音色がまた良いんです♪
B-2 Blue Minor
これまたソニー・クラークの名盤「クール・ストラッティン(Blue Note)」で演じられていた哀愁の名曲です。そこではジャッキー・マクリーン(as) の泣き節が冴えわたりでしたが、このバージョンは哀愁度では互角、さらに、そこはかとない泣きが含まれているという大人の味付けが、ニクイです♪
もちろんそれはベニー・グリーンというミュージシャンの資質が全開した魅力でしょう。続くジミー・フォレストのアドリブは、最初のワンフレーズの音色とアクセントが絶妙で、絶対的です。おそらく生涯の名演ではないでしょうか!?
そして、お待たせしました! ソニー・クラークが本領発揮の哀愁ファンキー節を濃密に聴かせてくれるのでした。ラストテーマのアレンジも、本当に良いですねぇ~♪
B-3 And That I Am So In Blue
オーラスはノーテンキに展開される哀愁のハードバップです。
まずソニー・クラークの素晴らしいイントロから泣いているテーマ吹奏で、グッときます。
もちろんアドリブパートも快調そのものというジミー・フォレスト、穏やかな歌心のベニー・グリーンがジャズの楽しさの真髄を追求しているようですし、ソニー・クラークは言わずもがなの好演! パーカッションが楽しいリズムアレンジも魅力的です。
あぁ、こんなに楽しいジャズがあっていいんでしょうか♪
ということで、とくかく楽しいアルバムです。
現在ではCD化もされていますが、実はアナログのオリジナル盤はウルトラ級の高嶺の花として、ジャズ喫茶では看板にしていた店もあったほどの人気盤でした。なにしろ1970年代のジャズ喫茶では、これが鳴り出すと店内の空気が和み、飾ってあるジャケットを眺めるお客さんが、必ず居ましたですね。
分かり易くて飽きないという、なかなかの名盤だと思います。