■Pretty Woman / Van Halen (Warnar Bros. / ワーナーパイオニア)
バンドをやる難しさは人間関係にあるという話は、ひとつの真実でありましょう。
例を挙げれば、偉大なるビートルズだって、それで活動を停止してしまったわけですし、そこに至る大きな要因は、メンバーの中の誰かが突出し、グループとしてのバランスが崩れる事の怖さは皆分かっているはずなんですが……。
公式レコードデビューから僅か2年で超人気バンドに成り上がったヴァン・ヘイレンにしても、グループ内にはボーカリストとして大衆的な人気を集めるデイヴィッド・リー・ロスと天才ギタリストして玄人筋からも一目置かれる立場になっていたエディ・ヴァン・ヘイレンという、2人のスタアが存在していたが故に、ギクシャクした関係がレコード制作やライブの現場にも影響していたんじゃ~ないでしょうか?
そんなふうにサイケおやじが思ってしまうのは、大きな勘違いかもしれませんが、エディ・ヴァン・ヘイレンのギターが大活躍した4枚目のアルバム「戒厳令 / Fair Warning」では、明らかにデイヴィッド・リー・ロスに精彩が感じられず、これが発表された1981年前後に残された非公式、つまりはブート等々で聴けるライブ音源に接する限りでも、アレックス・ヴァン・ヘイレンのドラムスが荒れ放題と申しましょうか、ほとんどメチャクチャな叩き方になっているほど、バンドとしてのテンションが下がっている気がするんですねぇ……。
そして翌年、つまり1982年に発売された5枚目のアルバム「ダイヴァー・ダウン」では、一転してデイヴィッド・リー・ロスが大暴れというか、自分の趣味性をモロ出しにしたかの様なプログラムで十八番の節回しが全開!
それはシングルカットされた本日の掲載盤A面収録「Pretty Woman」のお気楽なカバーバージョン仕様だけでも明確で、本家ロイ・オービソンのオリジナルに比して何らのヒネリも無いあたりの分かり易さがあればこそ、ロックの楽しさが満喫出来るんですが、エディ・ヴァン・ヘイレンのギターに期待すると完全な肩透かしでしょう、これはっ!?
しかし、こ~ゆ~歌と演奏に限って、ライブ映えするのも、また事実であります。
その意味で、アルバム「ダイヴァー・ダウン」は当時の彼等のライブに接した後には必ずや欲しくなるレコードであったに違いありません。
もちろん、以降のバンドの進むべき道が所謂「ポップ化」であった事は、次作にしてメガヒットになったアルバム「1984」、そしてシングル曲「Jump」で正体を露わにするんですが、それが結果的にデイヴィッド・リー・ロスの脱退に繋がったというのですから、本当に難しいものです。
また、そんな状況の中、エディ・ヴァン・ヘイレンが単独でマイケルジャクソンのレコーディングに参加した「今夜はビートイット / Beat It」で名演ギターソロを披露していたという現実も、複雑な状況を増幅させた要因でしょうか……。
今となっては、全てが結果論でしょう。
それゆえに、この楽しさ優先主義が表出した「Pretty Woman」のカバーバージョンは、しっかりとヴァン・ヘイレンの裏と表が刻まれている様な気がします。
ということで、本日は特段のオチも無いんですが、久々にヴァン・ヘイレンの諸作をみっちりと鑑賞してしまいました。
それは気分にも左右されるんだと思いますが、今日は殊更に5枚目のアルバム「ダイヴァー・ダウン」に惹きつけられ、軽い感じのハードロックもイイ感じ♪♪~♪
それも音楽を聴く喜びですからねぇ~~、レコードに虚心坦懐に針を落とす、その瞬間は生甲斐にしたいものです。