新しく来た若い者が、今日は見事な坊主頭で仕事場へ出てきました。
これには一同、吃驚したわけですが、実は昨夜、数人の若い者を連れて飲みにいった店で、件の新人が酒に酔って醜態を曝し……。
それで迷惑をかけたという謝罪を態度で示したというわけでしょう。
なにも丸坊主にならなくても! と思うのですが、そういう潔さが最近は珍しいですからねぇ。好感が持てるという前に、いろいろと考えるところが多かったです。
ということで、本日は――
■Turning Point / Lonnie Smith (Blue Note)
1990年代からのレアグルーヴなんていうブームで、所謂コテコテ派のミュージャンが突如として脚光を浴びたのは、私のような者にとって、いまさらジロー的なミョウチキリンな気分でした。
なにしろ、それまで千円以下で売られていたコテコテのアルバムがグングンと高値を付け、ジャズ評論家の先生方やイノセントなファンからは相手にされていなかったミュージャンが、あたかも巨匠のように持ち上げられていくのですからっ!
例えば本日の1枚の主役であるロニー・スミスは、典型的なコテコテオルガン奏者でありながら、もちろんその道の大御所というジミー・スミスには遠く及ばない存在で、モダンジャズでは白眼視されていたのに、コテコテが遅れてきたブームとなった時には、大スタアに変身したのです。
そのキャリアはルー・ドナルドソンやジョージ・ベンソンとの共演が最も有名なところでしょう。しかし肝心のリーダー盤はほとんど無視され続けていたのが、リアルタイムでの我国の真相だったと思います。
ただしこのアルバムは、その中でもまあまあ注目されていた作品で、何故かといえば共演者が豪華絢爛♪
録音は1969年1月3日、メンバーはリー・モーガン(tp)、ベニー・モウピン(ts)、ジュリアン・ブリースター(tb)、ロニー・スミス(org)、メルヴィン・スパークス(g)、レオ・モリス=アイドリース・ムハマッド(ds) という本格派が勢揃いしています。特にリー・モーガンの参加は特筆物でしょう。
しかし結論から言えば、フロントホーン陣に期待するとハズレ、逆にリズム隊中心に聴くとブッ飛びの歓喜悶絶盤です――
A-1 See Saw
ミック・ジャガーが自らのボーカルスタイルのお手本としたドン・コヴェイが自作自演で大ヒットさせたR&B曲で、アレサ・フランクリンの強力バージョンも残されていますから、ここでの演奏も油断が出来ません。
原曲の魅力だったヘヴィなビートを重いグルーヴで表現するリズム隊が、とにかく強烈です。レオ・モリスのシャープで横揺れするようなドラミングが本当にたまらんです♪ ドヨドヨドヨ~、と響くオルガンも最高ならば、シンプルなホーン隊のリフも、これが正解でしょうねぇ。
お目当てのリー・モーガンはそれなりのアドリブですから物足りませんが、ファンキーグルーヴど真ん中のリズム隊を聴いていれば、それだけで気分は最高♪ ロニー・スミスはアドリブパートでも奮戦し、ある有名なR&B曲の一節を弾いてくれますから、これは聴いてのお楽しみなのでした。
A-2 Slow High
倦怠期のセックスような、それでも結局はイッてしまうという、タイトルどおりの名演が楽しめます。この弛緩したグルーヴこそがロニー・スミスの十八番じゃないでしょうか。
メルヴィン・スパークスのギターはほどよく歪み、レオ・モリスのドラミングもダレ寸前でありながら、気持ち良さは保証付き♪ ですからベニー・モウピンの煮詰まったようなテナーサックスが逆に味わい深く、ロニー・スミスのオルガンは単純なフレーズしか弾いていないのに、気持ちよくノセられてしまうんですねぇ~♪
気抜けのビールのようなテーマリフが、本当にクセになります。
A-3 People Sure Act Funny
これはリズム隊だけの演奏で、もちろんエグイばかりのコテコテグルーヴが楽しめます。特にヘヴィなビートを敲き出すレオ・モリスが素晴らしいですねぇ~♪
メルヴィン・スパークスも早弾きフレーズを交えた熱演ながら、リズム&サイドギターをもっと聴きたいと思うのは私だけでしょうか。告白すれば、この演奏を流しながら、ついつい自分でリズムギターを弾いてしまうのが私です。本当に気持ち良いですよっ♪
B-1 Eleanor Rigby
説明不要のビートルズ曲で、この手の演奏としてはクルセダーズもやっていますが、このバージョンは不思議系のアレンジも冴えた隠れ名演だと思います。まず緩いグルーヴを噴出させるロニー・スミスのテーマ演奏が味わい深いですねぇ。
アドリブパートではベニー・モウピンのイナタイ雰囲気がなんとも言えず、またリー・モーガンは間延びしたようなフレーズばっかりでも、そのあたりが逆に混濁して熱いリズム隊を聴くのには絶好でしょう。けっこう暴れるレオ・モリスとかファンキーから宇宙へ飛び出していくロニー・スミスが、もう最高♪ メルヴィン・スパークスのリズムギターも流石だと思います。
B-2 Turning Point
ロニー・スミスが書いたアルバムタイトル曲は、幻想的なイントロから白熱の4ビートに突入して燃え上がる、真にモダンジャズな演奏です。う~ン、レオ・モリスは4ビートも上手いですねぇ♪
アドリブパートでは、まずジュリアン・プリースターが新主流派の意気地を聞かせれば、ベニー・モウピンが十八番の煮詰まり節! するとようやくリー・モーガンが本領発揮のトリッキーなフレーズを連発して突進です。
リズム隊ではメルヴィン・スパークスがちょいと頼りない感じのアドリブですが、ロニー・スミスはツボを押えたモダンな展開ですし、なによりもレオ・モリスのドラミングが痛快! 最後のフェードアウトが勿体無い感じです。
ということで、例よってそれほどの名盤でもないんですが、偏愛してしまうツボが確かにある作品で、個人的にはA面が大好き♪ とにかくレオ・モリスのドラミングがこれだけ聴ければ、それだけでゴキゲンですよ。
ルディ・ヴァン・ゲルダーの録音も重心の低いグルーヴを見事にとらえています♪