ケネス・ブラナー版エルキュール・ポアロの第3作。
ベネチアの古い館に嵐で閉じ込めらた11名の一夜の物語なので、地味な設定だ。なのにメチャメチャびっくりする。
まず、亡霊の使い方が本当に上手い! 下手なホラー映画より怖い。驚く。
そして、アガサ・クリスティーの「ハロウィン・パーティ」が原作のはずなのだが、まるっきりケネス・ブラナーのオリジナルだ。あのポアロが隠遁生活をベネチアで送る設定がまずおかしい。冒頭にハロウィン・パーティとアップル・ボビングは出てくる。だけど、それだけで全く異なるストーリーにびっくりする。なので、前2作「オリエント急行殺人事件」「ナイル殺人事件」の焼き直し感が全くないので、一緒に謎解きをする楽しさがあった。ただ、犯人は・・・。
ミシェル・ヨーが霊媒師の役だ。ギャラが高いのは彼女だけのような気がする。
時代設定が1947年、第二次世界大戦が終結して2年なので、キャラクターのほぼ全員が戦争に巻き込まれていて、PTSDに悩まされていて普通の生活がおくれていない。そこが哀しい。だからこそ、PTSDに悩まされてない数名が能天気に自分の事しか考えてないのが憎たらしい。
ポアロが終盤、見ていたように事件の核心に迫るご都合主義は否めないが、一人ひとりの事情が暴かれていって、ええっ!そうだったのか!!と、やっぱりびっくり!
「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」もそうだったけど、ベネチアが舞台なのは、コロナ禍で観光客がいなくて、ロケをしやすかったからなのかな?
以下、ネタバレ。
スーシェ版ポアロではそこまで酷くなかった、アリアドニ・オリヴァのキャラ設定が・・・。ムカつく。なんだ!この女は! あんなにいろいろ画策して!
新鮮なストーリーの割には、犯人の設定が原作と同じなので、そこは原作を知っている人は最初からそう観てしまう。ただ、その他の人の抱えている事情の設定は上手い。
二つに引き裂かれた写真をお互いに持っていたのは悲しい。でも、あの時代にスナップがカラー写真? そこは疑問。
ハンガリー(?)から地獄を見て逃げてきた姉弟がアメリカに行ける事になったのは良かったが、レオポルド君の将来は大丈夫なんだろうか? 父の面倒を母のように看て、この夜の事件の発端が自分で・・・。頭が良い分、暗黒面に落ちたら凄い悪い奴になりそうだ。無事に育ちますように。
私は個人的に、アガサ・クリスティ原作の映像化で凄い!と思ったのは「アクロイド殺し」のあのトリックを映像化した、フジテレビの2018年の「黒井戸殺し」なんだが。ポアロの野村萬斎はともかくとして、脚本の三谷幸喜と大泉洋と斉藤由貴がとっても良かったんだ。これはもっと評価されてもいいんじゃないかと思う。