もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

6 088 竹信三恵子「しあわせに働ける社会へ」(岩波ジュニア新書:2012)感想5

2017年08月08日 01時24分33秒 | 一日一冊読書開始
8月7日(月):  

194ページ    所要時間5:30    アマゾン発注285円(28+257)

著者59歳(1953生まれ)。76年朝日新聞社入社。経済部記者、シンガポール特派員、学芸部次長、総合研究センター主任研究員、編集委員兼論説委員などを経て、2011年退社。現在、和光大学現代人間学部教授。著書に『ルポ 雇用劣化不況』(09年、岩波新書、日本労働ペンクラブ賞)など多数。09年、貧困ジャーナリズム大賞受賞

2度目。前回は、図書館の本だったが、今回は自分の本。存分に付箋をして線を引いた。本書を読んでいて、一番に感じるのは、目線の低さである。読者のところに下りてきて、同じ目線で共感をしながら書き継いでいく感じだった。温かいハートのある内容である。

昔、「はたらく」は、「はた」を「らく」にすること、と言えた時代があったが、今は若者を取り巻く状況は全く違う。そんな中、「自己責任論」が横行し、「負け癖」を付けられた若者たちに対して、「あなたたちが悪いんじゃない。世の中のしくみが悪いんだよ。周りを見てごらんなさい。あなたたちに手を貸してくれる制度があるよ。それを知らされていないだけ! さあ、勇気を出して、仲間を見つけて、制度を生かして闘いましょう。勿論、きつい思いをさせられることもあるかもしれないけれど、謂われなく”怠け者”のように呼ばれて潰されるなんて決して認めちゃあダメ! あなたが勇気を出して闘えば、仲間がきっと現れるし、それによってきっとこの社会もよくなっていくはずなのよ! さあ、目を開いて、私(著者)も応援しているから、前を向いて進みましょう!」って感じの内容。

俺は、著者のような人間を肯定する。こういう優しく温かい共感を大事にしてくれる著者のような存在でありたいと思う。本書は今後折に触れて眺め直して線を引きながら読み返したいと思う。

【内容情報】長引く不況の影響を受け、若者たちの就職が厳しさを増す一方、働き口があっても苛酷な労働に心身の健康を損ねて退職を余儀なくされる者もいる。誰もがしあわせに働ける社会にするために必要な労働政策とは何か?働く者に必要な知識とは?多くの労働現場を丹念に取材してきた著者が、さまざまな事例をもとに提言する。

以下、前回の分を掲載する。

「0051 竹信三恵子「しあわせに働ける社会へ」(岩波ジュニア新書;2012) 感想4」
                2013年04月03日 23時32分41秒 | 一日一冊読書開始
(2013年)4月3日(水):

194ページ     所要時間2:05      図書館

大変残念な読書になった。仕事から帰って、時間のない中、なんとか読書しようと取りかかった。1ページ30秒のペースでは、内容を十分に理解・咀嚼できなかった。しかし、ページの上に目を這わせていくにつれて、この本が良書であり、多少の時間は覚悟してページ折り、線引き読みをできたら、非常に有用な読書になっただろうことは理解できた。自分の本として購入(もちろん古本だが…)して読み返したいと思った

著者59歳(1953生まれ)。母子家庭に育ち、東大を出て、長らく朝日新聞記者と子育てを無理やり両立させてきた。著者の目線は、弱い立場の労働者に寄り添うように向けられている。

「過労死するほどの長時間労働の正社員か、不安定で生活できないほど賃金が安い非正社員かの選択肢の中で、自分の体に合うように働くことが難しい時代になっている(189ページ)」現代日本に生きる若者に「大切なのは、しあわせな働き方について目をふさがないこと、変えていける自信を回復することです」と語りかける内容。日本の労働を取り巻く現状が、如何にさまざまな問題をはらんでいるかが、よくわかる…はずだった…。

*労基署とは先ほど紹介したマンガ「ダンダリン一〇一」のモデルになった公的機関で、会社が労基法を守っているかどうか監視する役割を担い、各地に置かれています。この窓口で「申告に来ました」と言うと、会社に調査に入る権限のある労働基準監督官が出てきます。監督官は相談の割に人員が少ないことが多く、「相談に来ました」というだけでは着手してくれないこともあります。ただ、「申告です」と言えば、監督官には乗り出す義務が発生します。106ページ

*経済が成長を続け、会社が自然に大きくなっていった時代には、学校は子どもを会社に送り出しさえすれば、後は会社が働き手として抱え込み、職業訓練をしてくれることになっていました。ところが、使い捨てることを前提に訓練を施さない非正社員という存在がこれだけ増えてくると、学校や行政、または自力による「仕事をする力」のカリキュラムが必要になってきたわけです。「仕事をする力」をつけることは会社も歓迎します。そのため、キャリア教育に力を入れる学校は、近年増えています。一方で、働き手としての権利やルールを学ぶ「労働教育」は、普及が遅れています。略。働き手が身を守る知識なしでは、会社に入ったとしてもすぐ使い捨てにされる働き方を繰り返すことになりかねません。略。職を得るための「キャリア教育」職を維持するための「労働教育」は、働き続けるための車の両輪です。その両方を身につけることも、落とし穴に備える自分づくりのひとつです。123~127ページ

*フランスでもドイツでも、ヨーロッパの国々に共通のルールの下で、同じ仕事に同じ賃金(同一労働同一賃金)という仕組みがあるため、派遣労働者が正社員と同じ仕事をしている限り、賃金は同じに払わなければなりません。派遣会社は正社員と同等の賃金に加えて、宣伝広告費や派遣社員と派遣先の間をつなぐ営業担当社員の賃金などの経費を上乗せした派遣料金をもらわないとやっていけませんから、派遣料金は正社員を直接雇うより高くならざるをえません。そこで、派遣先の会社は、緊急に必要な場合だけ、派遣社員を依頼する形になり、正社員が減らされて派遣社員で補うといった事態は起きにくくなり、安定雇用が不安定雇用に押しのけられることはなくなります。172~3ページ

目次:※コピペです。
はじめに
第1章 就職難は若者のせいなのか
それは「ぜいたく」なのか/それは「スキル」のせいなのか/それは「えり好み」のせいなのか/それは「覇気のなさ」のせいなのか/労働の手すりが腐食した/手すりが腐ったわけ/「新時代の『日本的経営』」構想/「自己責任」主義の限界
第2章 正社員,大手企業なら安心なのか
会社は「働く」の足がかりにすぎない/「社畜」といわれた人びと/フリーター人気/名ばかり正社員の広がり/中心的正社員にもリスク/「多様な正社員」で大丈夫か/中小企業の再評価を
第3章 まともな働き方をさぐる「前期ロスジェネ」からの出発/ブラック企業の連続/「派遣切り」がやってきた/介護労働と「便利屋」にかけた夢/労働相談への関心/サブカルチャーに支えられ/キャバクラ労組の登場/反貧困のたすけあいネット/人間関係で食べていく/長時間労働を押し返す/大人の支え
第4章 落とし穴に備える自分づくり落とし穴を知っている人,知らない人/働くことの楽しさと苦しさ/労働教育とキャリア教育の両輪を/雪玉型とリセット型/雪玉の核をどうつくるか/自分史年表を書いてみる/方向を定め直す/未来年表で歩き出す方向を考える/時間を生み出すための二四時間手帳/負け癖から抜け出す/自立とは人に助けを求められる力
第5章 しあわせに働ける仕組み作り
それは偉い人が考えればいいこと?/過労死を防ぐ労働時間制度/なぜ長時間労働が騒ぎにならないのか/安定雇用をつくり出す/労働権と派遣法/賃金差別を防ぐ仕組みづくり/安全ネットをつくる/だれが仕組みを変えるのか
おわりに
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