もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

0018 坂野潤治「大系日本の歴史13 近代日本の出発」(小学館;1989) 評価5

2012年12月02日 19時56分13秒 | 一日一冊読書開始
12月2日(日):

366ページ  所要時間4:20         蔵書

著者52歳(1939生まれ)。自由民権運動にはじまり憲政擁護運動にいたる40年。

2度目。1ページ30秒と念じてページの上に目をはわせるだけでは、俺の力では本当に眺めてるだけで読めてはいない。ページをめくりながら、歴史的事実関係の順番の確認で精一杯である。そして、多少の犬耳と線引きをしただけで大幅に時間オーバーである。

それでも、やはり面白い。読んだしりから忘却していくが、さまざまな感慨がよぎっていく。特に、早く成立しすぎた隈板内閣の失敗が、政党内閣の不完全をさらけ出し、藩閥内閣を蘇生させ、その後の政党政治の成立を阻害することになった(222ページ)などの記述を読むと、現在の民主党内閣の無様な崩壊が、ウルトラ保守改憲勢力の活性化につながってるのと重なって、危機感と身にしみる感慨を覚えさせられるのだ。

・運動が量的に発展した時、その質がどこまで下がるか。58ページ
・開拓使官有物払い下げのリークの元は大隈以外に有り得なかった。72ページ
・明治天皇自身が、天皇制の否定をほのめかすような言動にたいしてはいちじるしく敏感であった。299ページ
・美濃部は、吉野作造とは違って決して民主主義者ではなかった。322ページ
・美濃部達吉の天皇制機関説にはじまり政党内閣制におわる解釈改憲の論理 324ページ
・山本権兵衛内閣から第二次大隈内閣への移行時の複雑さ 344ページ
・あくまでも理詰めの美濃部とちがい、吉野は細部の詰めより時代の行く手をさししめすことに熱意を燃やす。348ページ

目次:
明治時代の政治と知識人―はじめに―
維新の終幕
 征韓論と不平士族/西南戦争/政治休戦の二年間
「国民」の形成
 殖産興業政策の進展と挫折/愛国社と在地民権/国会開設請願運動
保守化・軍拡・デフレ
 政府の保守か/明治一四年の政変/東アジア政策の展開
松方財政と激化民権
 農民層の分解/激化事件/農民騒擾
立憲国家の誕生
 「新日本」への期待/日本主義の台頭/憲法発布/条約改正の挫折
立憲政治の実験
 最初の総選挙と官僚/教育勅語の発布/第一議会と第二議会/
 選挙干渉と自由党の転換/民党の変質
日清戦争と戦争経営
 「対外硬」論の台頭/日清戦争と三国干渉/戦後経営と政党/
 政党内閣の誕生
日清戦後の社会
 地租増微案の成立/社会問題の登場/山県内閣の内政と外交
帝国主義日本への道
 政友会内閣の崩壊/日英同盟と対露世論/日露戦争
桂園時代
 多様化する政治と社会/第一次西園寺内閣の政策/第二次桂内閣の
 政策/明治末期の社会
明治から大正へ
 明治の終焉/大正政変/憲政擁護運動
大正デモクラシーへの鼓動-おわりに-

「以上で自由民権運動にはじまり憲政擁護運動にいたる本書の幕を閉じる。振り返ってみれば、この時代の日本は、欧米先進国の一員に成り上がるために、対外的にも国内的にも、多くの犠牲を強いてきた。松方デフレで没落した農民、自由民権の実現のために一日十八時間もはたらいた女工たち、帝国主義日本によって植民地にされた台湾や朝鮮の国民、過敏ということばでは足りないぐらいの権力者の社会主義・無政府主義への恐怖の犠牲になった人たち、とてもバラ色の近代日本成功物語に与するわけにはいかない。「脱亜」のコストは相当にたかいものであったといえよう。/しかし他方で、本書が対象とした四十年間の明治の日本(大正の初年もふくめて)には、今日のわれわれが失ってしまった理想主義が一貫して脈打っていた。略/現実主義的な政治をもとめる者たちもその立場を理想主義的に主張した。現実主義的な政治観も、現状を維持するためにではなくそれを着実に改良するために唱えられたのである。」(352ページ おわりに)
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