もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

0017 神谷美恵子「人間を見つめて 神谷美恵子著作集2」(みすず書房;1971) 感想4+

2012年12月01日 20時54分39秒 | 一日一冊読書開始
12月1日(土):

310ページ  所要時間4:30         蔵書

 著者57歳(1914~1979)。著者は、旧内務官僚の父を持ち、津田英学塾に学び、らい園と出会って医師を志すも、結核となる。幸運にも全治し、アメリカのコロンビア大学に留学、ギリシャ語を専攻するが、途中で医学に転科、戦争で帰国後東京女子医専で医者となる。結婚・子育て、神戸女学院での教鞭と併行して月1,2回のペースで15年間岡山県長島愛生園に通い続ける。聡明で強靭な意志力と行動力をもった女性である。間違いなく筋金入りのお嬢様だが、ノブレス・オブリージュを持つ女史である。

 5年前に書いた前著「生きがいについて」が長島愛生園のハンセン病患者の実態と極北のような精神状態を考察して、読者を圧倒する内容だったのに対して、本書の迫力不足は否めない。前著の反響の大きさに対して、続編として自己の主観的感想を前面に出して書いた「人間について」に、関連する過去の日記や論考を足して、さらに自分が翻訳した古代ギリシャの「ケベースの絵馬」を復刻して一冊にまとめたもの。

 約100ページ、前に途中まで読んだ線引き痕あり。今回も前半は、線を引き、犬耳しながら読んだ。前半の内容は、死を主題に置くなど読み応えが無くも無かったが、抽象的議論が多く、梵我一如的な宇宙的宗教観とでも言いたくなるような内容だった。「修証一如」「老荘思想」的な言葉が頭を過ぎり、反社会的な内容を持つ使命感に関する話は、オームの麻原批判に使えると思った。後半は、活字の上に目を這わせる感じだったが、「万霊山にて」は短編だが良かった。

 いずれにせよ一読で太刀打ちできるような本ではないので、今後犬耳や線を引いたところなどを中心に、反芻していきたいと思った。

目次:

Ⅰ 人間について
はじめに
第一章 いのちとこころ
 いのちを支えるもの―外なる自然について/脳とこころ(1)―内なる自然について/脳とこころ(2)―新しい脳のもたらしたもの/人格について/知性について/こころのいのち
第二章 人間の生きかた
 自発性と主体性について/反抗心について/欲望について―何がたいせつか/生存競争について/使命感について
第三章 人間をとりまくもの
 科学と人間/病める心をみつめて―罪の問題/死について/自我というもの/人間を超えるもの/愛の自覚
おわりに

Ⅱ らいとともに
らいと私:らいとの出会い/島との出会い/島との再会
島の精神医療について:その歴史/島の精神医療の特殊性/生きる力をみつめて/島のしごとをかえりみて
光田健輔の横顔

Ⅲ 島日記から
島日記から:あとがき/改訂版へのあとがき
万霊山にて 
米国のらい病院をたずねて
 カーヴィルへの道/病院の沿革、運営について/患者の生活について/医学的方面について/リハビリテーションについて/見学を終わって

付録 ケベースの絵馬

*串田孫一の月報は読めず。
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