もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

8 095 佐藤優「君たちが知っておくべきこと 未来のエリートとの対話」(新潮社:2016)感想4

2019年08月26日 22時22分52秒 | 一日一冊読書開始
8月26日(月):  

238ページ        所要時間4:25       ブックオフ200円

著者56歳(1960生まれ)。’85年、同志社大学大学院神学研究科修了の後、外務省入省。在英日本国大使館、ロシア連邦日本国大使館などを経て、’95(平成7)年から外務本省国際情報局分析第一課に勤務。2002年5月、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。’05年2月執行猶予付き有罪判決を受け’13年執行猶予期間を満了。’05年『国家の罠ー外務省のラスプーチンと呼ばれて』で毎日出版文化賞特別賞を受賞した。主な著書に『自壊する帝国』(新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞)などがある。

【目次】真のエリートになるためにー2013年4月1日(日本のエリートは後進国型/私はどんな高校生だったか/受験失敗、そして神学の世界へ ほか)/戦争はいつ起きるのかー2014年4月5日(エリートとしての問題意識/大英帝国の歴史教科書/日本の負うべき責任 ほか)/僕たちはナショナリズムから逃れられないー2015年4月1日(ナショナリズムはどこからやって来る?/やしきたかじんの民族意識/右翼と左翼 ほか)

本書は西日本の超進学校灘高校生たちが予め著者の本を読み込んだ上で、著者のいる東京の仕事場を訪れて著者に質疑応答をした記録である。とは言うものの、内容的には天下の灘高生たちも著者の前では一読者であり、対等に論戦を闘わせるのは不可能、高校生たちに対して噛んで含めるように知見を披瀝し、すそ野を広げ、高みに引き上げるが如きゼミナールが開かれている感じである。

言い換えれば、灘高生の意見はほとんど無くて、彼らに語り続ける著者の言葉がずっと続く内容である。その内容が非常に奥深く、興味をかきたてるものだった。感想4は、あくまで俺の力不足である。見開きページのほとんどすべてに付箋をしているが、それぞれについて立ち止まって考えを味わっていたのでは終わりまで読み終えることができない。

多くの思いを残しながらではあるが、それなりのスピードで読まねばならない。必然的に本書の感想が薄くなってしまったということだ。3年間、3回にわたる質疑応答の記録であるが、3回目の部分(第3章)が、一番こなれた感じのやり取りが行われていて面白いと感じた。
 
著者は、真のエリートは、総合的教養が重要だと主張する。理系であれば、歴史、人文、地理を、文系であれば数学Ⅲ、物理・化学などを身につけることが非常に大事である。そして、そのために高校での教科を文理の別なくしっかりとやっておき、その知識・能力を社会に出ても維持し続けることが重要だと述べる。

【目次】まえがき
真のエリートになるために 2013年4月1日
日本のエリートは後進国型/私はどんな高校生だったか/受験失敗、そして神学の世界へ/「受験勉強は役に立たない」はウソ/受験勉強はなぜ重要か/恐ろしくレベルが低い日本の大学院/アメリカとヨーロッパ、その教養の差/鳩山元首相の「マルコフ連鎖」/決断の専門家が見えなかったこと/民主制の起源/後進国だからできたドイツの知的革命/官僚や新聞記者を目指す人へ/対照的な二人の政治家/リエゾンの流儀/官僚は聞かないことも能のうち/政治家の引力/間違いだらけの外交教科書/権威に惑わされるな/なぜ信頼し、順応してしまうのか/「パンをよこせ」に至る歴史/民主主義政治はフランス革命をなぞる/ナポレオン政策で潜水艦を売る/反知性主義に「上から目線」で対抗する/ニヒリズムとは/女性問題は文学に学べ/人の気持ちになって考えること/自分の思考の鋳型を知ろう/受験を人生の目標にしない/〈永遠の椅子取りゲーム〉にハマるな/国家の崩壊を目の当たりにして
戦争はいつ起きるのか 2014年4月5日
エリートとしての問題意識/大英帝国の歴史教科書/日本の負うべき責任/基本は徹底暗記。ロシアの教育/海外で分かる日本教育の弱点/情報は事実・認識・評価/外務省が私を処分しなかった理由/オシントには経験が欠かせない/一般社会と政界は原理が違う/「俺の言うとおりにやれ!」/論理力をつけよう/「理系の時代」の真実/教養を身に着けるには/インテリジェンスの二大派閥/日本版NSCの目的は?/インテリジェンス人材は大学院を狙え/サイバー最強国・北朝鮮/第一次世界大戦のインパクトとアメリカ/近代の矛盾が凝縮するウクライナ/遠距離ナショナリズム/世界のトレンドは戦争へ向かう/戦争は阻止できるのか/国家が牙を剥くとき/国家と通貨の説明不能な関係/情報の真理は細部に宿る/危機を前にした僕らは
僕たちはナショナリズムから逃れられない 2015年4月1日
ナショナリズムはどこからやって来る?/やしきたかじんの民族意識/右翼と左翼/二級エリートとナショナリズム/他者の視点を獲得しよう/知識がなければ始まらない/「東大首席弁護士」の問題点/英露のトップエリート教育法/「陶片追放」が息づくロシアの選挙/教養の伝達は人から人へ/教養人、吉野文六/ベルリンの鹿児島弁/教養は重大局面でモノを言う/「イスラム国」のゲームのルール/中東全域が核保有する日/イランとイラクを指せますか?/ロシアがシリアに肩入れするわけ/アメリカン・エリートは一人五〇〇〇万円/アメリカの大学を勧める理由/「語学は複数習得」が国際基準/危うきに近付き、踏み込まない/競争が好きな自分を認めよう/軌道修正も想定する/良心と愛国心が衝突したら/「話者の誠実性」を見極めよ/海外の大学に進む人へ
あとがき
本書に登場した書籍一覧+α

【内容情報】日本中の秀才を集める有名難関高校の生徒から、ある日著者に呼びかけが届いた。偏差値上位0.1%の日常を生きる彼らは、大学で何を学ぶべきなのか。暗記偏重型の旧来型の指導者モデルが、各所で機能不全を起こすいま、未来のエリートに必要な歴史観や情報収集力をどう養えばよいのか。自ら長期にわたり企画を温め開講を提案した、次代を担うエリートに必要な教養と人間力を授ける特別講座。/こんな大事なこと、誰も教えてくれなかった! 「真のエリート」を目指す若者たちに送る渾身の授業。

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