9月2日(土):
192ページ 所要時間5:30 アマゾン2013年購入332(82+250)円
著者74歳(1931生まれ)。
著者は、俺が最も信頼を寄せ、共感できる歴史家、要するに”師匠”である。その著者の基準で選ばれた近代史上の重要人物について、著者が、各人物ごとに6ページを使って、その人物の最も有名な文章を冒頭に配し、著者独自の視点で人物の人生や歴史上の存在意義をまとめた紹介文を記し、最後に関連書籍・資料の紹介がなされている。
セット販売?の
姉妹編「近代国家を構想した思想家たち」(岩波ジュニア新書;2005)と比べると、雰囲気的には陽・有名なメジャーに対する陰・無名なマイナーの人々を取り上げた印象である。
もう少し踏み込んで言えば、歴史上の評価が確定して報われた人たちと、評価が不十分で報われたとは言い難い人たち、とも言える。もちろん、例外や程度の差はある。ただ全体から受ける印象はそうだということ。
その意味で、本書を読むことは、姉妹編「近代国家を構想した思想家たち」を読むこと以上に、意味のあることだったと俺は納得し、満足をしている。とは言え、各分野で知る人ぞ知る有名人ばかりなのだろうから、俺としては実際不覚にも知らなかったり、よく知らなかった人が多かったのは事実であり、
今回、ブログ7年目の最初の1冊にふさわしい本だった。
俺にとって、全く知らなかった人、名前だけかろうじて知っていた人が合わせてほぼ半分だった本書を読めた意義は大きい。特に、著者が、各人物について、その業績と同じぐらい、その人の社会的評価、生きざまについて重点を置いた解説をしていたことは俺にとってとても興味深かった。
50歳代半ばで、何事もなさずに人生の峠を越えてしまった俺から見て、登場人物たちの亡くなった年齢及び生き様と死に様は非常に強い関心の対象であった。と言うか、多くの有名な人物たちが、俺よりもずっと若くして、または60歳前後で人生を閉じているのを知ると、我が身を振り返って、ため息を吐き肩を落とさざるを得なかった。
一体俺は何をしていたんだろう……。しかし、反転して「でも自分なりに精一杯生きるしかないのだ。本書に出てきた人たちも、何かを成し遂げたり、有名になることが目的だったわけではないだろう!精一杯生きた結果がそういう風だったということだ。俺も肩の力は精一杯抜いた上で、自分なりに真面目に生きてお迎えが来るのを待つしかないのだろう」と思うのである。(ああ、だいぶんチャンジャ・キムチとウィスキーで酩酊してきた……)
でも、まあ今、俺はこの偉人たちの人生を本書を通じて俯瞰させて頂いてるけれど、一人一人はそれぞれに孤軍奮闘、力を尽くして誠実に生きていたのだ。少しでも学ばせて頂くのが読む側のせめてもの誠意だろう。
【目次】(※赤字は俺が全く知らなかった人物)プロローグ
1 文化をひらく : 北村透谷/石川啄木/柳田国男/南方熊楠/柳 宗悦/津田左右吉/寺田寅彦
2 生命をみつめて : 横山源之助/田中正造/
石原 修/山本宣治/
野村芳兵衛/
丸岡秀子/
若月俊一
3 存在の復権をめざして : 伊波普猷/知里真志保/松本治一郎/与謝野晶子/平塚らいてう/高群逸枝
4 戦争のなかで :
柏木義円/
黒島伝治/清沢 洌/竹内 好/
仲宗根政善
エピローグ
【内容紹介】
明治維新以後,富国強兵の名のもとに進められた日本の近代化は,いったい社会に何をもたらしたでしょうか.成功と見なされる反面で,さまざまな矛盾や新たな問題が発生しました.地域の人びとが暮らしのなかから作り出してきた知恵や習俗がこわされ,労働者は苛酷な労働を強いられ,新たな貧困と差別が形成され,抑圧された社会は戦争へと突き進んでいきました.この本では,こうした社会にあって,それぞれの場から声を発した25人を取り上げます.足尾鉱毒事件で生命の尊厳をかかげて闘った田中正造,民俗学という新たな学問分野を拓いた柳田国男,女性復権をめざした与謝野晶子,沖縄学の祖・伊波普猷,戦争の愚かさを「暗黒日記」に書き綴った清沢洌など.一人物6ページで,それぞれの生きざまと思索の核心を描きます.先に刊行し好評の『近代国家を構想した思想家たち』の姉妹編.
※【参考】姉妹編
「0062 鹿野政直「近代国家を構想した思想家たち」(岩波ジュニア新書;2005) 感想5」
【目次】プロローグ
1 近代への先駆者 : 渡辺崋山/吉田松陰/坂本龍馬/中山みき
2 「国民」の形成をめざして : 福沢諭吉/中江兆民/植木枝盛/馬場辰猪/陸 羯南/吉野作造/美濃部達吉/市川房枝
3 アジア・世界のなかの日本 : 内村鑑三/岡倉天心/宮崎滔天/朝河貫一/金子文子/石橋湛山
4 体制の変革を志す : 出口なお/幸徳秋水/大杉 栄/北 一輝/山川菊栄/戸坂 潤/河上 肇