アナーキー小池の反体制日記

世界中のひとが 仲良く助け合い ほほえみながら 平和に暮らしていくために (イマジン)

#101 学生時代(16)

2008年03月12日 | 学生時代
翌日からは必死にバーテンの勉強をしました。
店を開けているので落ち着いて勉強するわけにはいきませんが、何せ基礎知識がまるで無いものだから本を頼りに、ボクの生涯で一番集中して勉強しました。

でも、ほとんど独学だから間違いも沢山ありました。

当時、スロージンフィズというジンの代わりに赤い色のスロージンを使ったフィズがはやっていたんです。
若い女性からオーダーがありました。
何回か練習をしていたので自信を持ってシェーカーを振っていました。
キャー!と叫び声が聞こえます。
シェーカーがしっかりしまっていなかったのでしょう。
赤い液体が、振られるたび若い女性の真っ白なブラウスに注がれています。

すぐ支配人を呼び謝りました。

その当時に定山渓にはゴキブリがすでにいました。
チャバネという、この頃はこの辺でも見かけるものですが、当時はススキノか定山渓にしかいなかったと思います。

お通しの凝ったものはもちろんボクに作れるわけがないので、チーズかサラミソーセージか乾物です。
この日はさらに貧しく“柿の種”のみでした。
お客さんに出した“柿の種”にこいつの死骸がまぎれて入っていたのです。

ボクはすぐに気づいて片付けましたが、お客の視線が一瞬ゴキブリに行ったような気がします。
慌てましたね、「お客さん、見た?」って聞いたんです。
お客さんは「見た!・・・ボクは柿の種って好きでないんだ。ビールだけ貰うよ。」と言い、ビール一本だけ飲んで帰りました。
このシーン、今でも思い出すたび当時の心境がよみがえり、切なくなります。

昔も北海道は夏が観光シーズンでした。
こんな小さなホテルでも、本州からツァー客が押し寄せます。
特に土曜日は満員です。
カクテルラウンジどころかダンスホールまで満席です。
素人バーテンにはちょっと無理でした。
若い女中さん2人に手伝ってもらっても追いつきません。
かなり適当に、かなりでたらめに、その場をしのぎました。

旅行の添乗員という職業があります。
旅行が出来ていいなーと思っていました。
その人達がカクテルラウンジを時々訪れます。

飲まずにいられないというんです。
そして、今日あったとんでもない客のことを話してくれます。
その頃も今同様いたんです、とんでもないのが。

うん、うんと話を聞いて、思いました。
みんな大変な思いをして仕事をしているんだ、楽な職業なんてないんだって。

ある添乗員が店を出るとき言いました。
「何かすっきりしたよ。ありがとうね。」って。
ボクは生まれて初めて人の役に立てたような気がして、うれしく思いました。
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