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「バルト海の復讐」斜め読み1/2

2024年06月11日 | 斜読

斜読・日本の作家一覧>   book566 バルト海の復讐 田中芳樹 光文社 2004

 2009年9月にリトアニアの首都ビリニュス、ラトビアの首都リガ、エストニアの首都タリンを旅し、リガでハンザ同盟の隆盛をいまに伝えるブラックヘッド会館を見た。ハンザ同盟は教科書で習うが、背景や実態は学んでいなかったか、記憶に残らなかった。
 バルト3国の旅を終えたあとドイツのハンザ都市が気になり、2015年5月にドイツ北東部ツアーに参加し、リューベック、リューネブルク、ロストク、ハンブルグ、ブレーメンなどのハンザ都市を見て歩き、ハンザ同盟がヨーロッパ交易の大動脈だったことを実感し
た。 

図書館で手ごろな本を探していて、「バルト海の復讐」が目についた。目次のうしろに「ハンザ都市関係要図」が挿入されている。著者田中芳樹氏の「ラインの虜囚」を読んだことがある(HP「b359ラインの虜囚」参照)。主人公が苦難に打ち勝ち悪を倒すといった冒険心、探検心を満たしてくれる展開だった。「バルト海の復讐」となれば、ハンザ都市を舞台にした主人公が悪を倒して復讐を果たす展開で、「ラインの虜囚」のように痛快な筆裁きだろうと予想して読み出した。

 予想通り、第1章 主人公、海に放り込まれこと、第2章 主人公、ホゲ婆さんに借金すること、第3章 主人公、故郷へ帰ること、第4章 主人公、旧友たちと再会すること、第5章 主人公、故郷から逃げ出すこと、第6章 主人公、謎の解明に挑むこと、第7章 主人公、斬り合いを経験すること、第8章 主人公、行方が知れぬこと、そして第9章 主人公、再出発すること、と主人公が復讐を果たし幕となった。

第1章 主人公、海に放り込まれこと」 舞台は、1492年11月の夜、凍り付くような寒さのバルト海で、全長23.2m、幅7.3m、約200トンのコツゲ=一本柱帆船の船長である22歳のエリックが、初航海でリトアニアの琥珀を買い集めての帰路、間もなく生まれ育ったリューベックに着くころ、航海士ブルーノがオークの棍棒でエリックの後頭部を一撃し、巨漢の船員マグヌスと肥満した船員メテラーがエリックを縛り上げ、バルト海に投げ落とすところから物語が始まる。

 海に投げ落とす瞬間、メテラーが密かにエリックの手を縛った綱を切り、エリックは凍えながら岸まで泳ぎ、高さ18mのブローテンの断崖をよじ登り、気を失う。  ブローテンの断崖の森に1人で暮らす、魔女と噂される謎めいたホゲ婆さんは、漆黒だが白と呼ばれる猫と暮らしていて、白が瀕死のエリックを見つける。  ホゲ婆さんは、3度は溺死し4度は凍死していいくらいなのに助かるのはよほど運のいい若者とエリックに興味を持ち、介抱する。

第2章 主人公、ホゲ婆さんに借金すること」 元気を取り戻したエリックは、未経験のエリックを船長に抜擢したリューベックの豪商で参事会会員のグスマンに事態を知らせるためリューベックに戻ろうとすると、ホゲ婆さんはエリックを殺そうとした陰謀の理由を考えるように諭す。人生経験の浅いエリックだが、ブルーノたちがエリックをグスマンの持ち船と積み荷の琥珀を横領した犯人に仕立てようとしているらしいことに気づく。リューベックに戻って見つかれば横領犯として絞首台である。

 エリックはホゲ婆さんの助言で変装したうえ当座の活動資金を借金し、ホゲ婆さんの手紙を持ち、黒猫の白を連れて、塩の都リューネブルクの製塩工場主ユルゲン・ベンツに会いに行く。
 エリックが去ってから5日後、ホゲ婆さんを訪ねて騎士ギュンター・フォン・ノルトが現れ、グスマンの素行を報告する。騎士はホゲ婆さんに返せないほどの恩義があるようだ。

第3章 主人公、故郷へ帰ること 」 リューネブルクに着いたエリックは製塩工場主ベンツにホゲ婆さんの手紙を渡す。ベンツはホゲ婆さんには逆らえないといい、塩の取引で50人ほどを連れてリューベックに向かう一行にエリックを甥ということにして加えてくれた。
 ベンツの一行とともにリューベックに着いたエリックは、ホルステン門(写真右上がホルステン門、左下が塩の倉庫、2015.5撮影)やトラーヴェ河、市庁舎を懐かしく感じるが、正体がばれないように行動しなければならない。

 日没後、白とグスマンの館の裏口で使用人で信頼できるザンナが出てくるのを待ち、ザンナにバルト海で殺されそうになったこと、無実であること、ホゲ婆さんに助けられたことを話す。  ザンナの手引きでグスマンに会うことができたエリックは、船荷の横領はブルーノ、マグヌス、メテラーの仕業であること、海に放り込まれたがメテラーが綱を切ってくれて何とか生き延びたことなどをグスマンに伝え、いったん引き上げる。
 エリックが出て行った後、隣室で話を聞いていたブルーノは、エリックとメテラーを相討ちさせれば、足手まといのメテラーも片付けられる、とグスマンに提案する。さらにブルーノはマグヌスに会い、メテラーを片付け分け前を2人で分けようと持ちかける。

第4章 主人公、旧友たちと再会すること」 グスマンの館を出たエリックは、メテラーに尾行されていることに気づき、身を隠してメテラーをやり過ごす。エリックは、尾行を失敗しうろたえているメテラーに声をかけ、驚いているメテラーに海に投げ込む前に綱を切ってくれたので命拾いした、真実を明かし法の手でブルーノとマグヌスを縛り首にするが、メテラーは助かるようにすると持ちかける。エリックは、メテラーの恩着せがましい反応にメテラーも怪しいと思うが確証がない。

 エリックと別れメテラーはグスマンの館に戻ってくると、エリックの綱を切ったメテラーの裏切りに激怒したブルーノがメテラーを殴り倒し、マグヌスが首を絞めようとする。グスマンが(エリックとメテラーの相討ちで片をつけさせるため)首締めを止めさせる。  翌朝、エリックはベンツに別れを告げリューベックの町を歩いていると、グスマンがメテラーを供に待ち構えていて、エリックに裁判を開くよう市長に話すからホルステン門が見える塩の倉庫(前掲写真左下)の裏で待つように言う。メテラーの顔の青黒いあざを見て、エリックはグスマン、ブルーノ、マグヌス、メテラーがぐるだったことに気づく。
 エリックが塩の倉庫の裏に隠れ対策を考えていると、ザンナがグスマンの指示で食事を持ってくる。空腹を満たしたエリックに、ザンナはエリックは人を見る目がないから油断するな、と忠告する。

第5章 主人公、故郷から逃げ出すこと」 エリックとザンナの前にメテラーとマグヌスが棍棒を持って現れる。ザンナはメテラーを突き飛ばし逃げる。エリックはマグヌスの一撃をかわし、メテラーが落とした棍棒を取り、ザンナが持ってきたが飲まなかったヴィスマル産ビールを手に倉庫の壁際に逃げる。追い詰めたと思ったマグヌスが棍棒を振り下ろした瞬間、エリックは身を沈める。マグヌスは石壁を強打して手がしびれ、棍棒を落とす。
 エリックはメテラーから奪った棍棒でマグヌスの顔を殴り、血だらけのマグヌスの顔にヴィスマル産ビールをあびせる。マグヌスはヴィスマル産の強烈なビールで目が焼けて動けなくなる。エリックはマグヌスの左すねに棍棒を何度も振り下ろし、巨漢マグヌスは崩れ落ちる。

 そこへグスマンに金で雇われた無頼漢6人が棍棒を持って現れる。6対1ではかなわない。エリックは逃げ出し、追いつかれそうになったとき、騎士ギュンターが助けに入り(ホゲ婆さんからエリックを助けするよう頼まれていたようだ)3人を倒すと、無頼漢は逃げ出す。
 ザンナがグスマンにエリックが襲われていると助けを求めていたところに、6人の無頼漢が逃げてきてエリックを殺し損ねたと報告する。事態を飲み込んだザンナは近くの荷馬車に積まれた干し鱈でグスマンをひっぱたき、荷馬車に飛び乗って逃げる。
 エリックたちに追いついたザンナの荷馬車の手綱をエリックが替わり、ギュンターは自分の馬に乗り、閉まりかけたホルステン門を駆け抜ける。
 鼻血を出しながらグスマンはブルーノと足が動かないマグヌスの失態をなじり、新手の無頼漢を雇う。 
 続く

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