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「居眠り磐音 陽炎の辻」斜め読み2/2

2024年01月10日 | 斜読
斜読・日本の作家一覧>  book560 居眠り磐音01 陽炎の辻 佐伯泰英 文春文庫 2019

第4章 大川火炎船 
 磐音は黒岩と天童を訪ねた源念寺で、毘沙門の統五郎に出会う。黒岩と天童に会いに来たようで、統五郎は匕首で磐音を襲い脇腹をこそぐ。なおも突っ込んできたところを磐音が斬り上げ、統五郎は絶命する。統五郎の持っていた結び文には「今宵にも今津屋吉右衛門を始末せよ 伊」と書かれていた。
 磐音は吉右衛門を警固して勘定奉行を訪ね、両替屋行司阿波屋有楽斎の背後にいたのは先任の老中備後福山藩阿部正右だったことを知る。帰り道に黒岩、伊勢屋、3人の浪人が現れる。3人が磐音に斬りかかるが、磐音は正面の浪人を深々と斬り、反転して1人の首を斬ると、もう1人は逃げる。黒岩が気配もなく磐音に斬りかかり、磐音が黒岩の剣を弾き返すが、黒岩は肩に脇腹に小手に眉間に変幻して襲ってくる。一瞬静止した黒岩の眉間を磐音の剣が断ち割る。伊勢屋は川に飛び込み、おぼれ死ぬ。

 磐音は今津屋で南町奉行所同心竹村に会う。江戸市中の南鐐は小判相当で1万両流通していて、伊勢屋は南鐐10枚を1両で買い取り4万枚の南鐐を集めていた。それを今津屋に持ち込めば南鐐8枚で小判1両だから5000両で兌換になり、阿波屋は1000両の儲けになる。放っておけば田沼意次の新貨幣政策、金銀相場統一はついえてしまう。
 今津屋は伊勢屋の通夜に出るので、阿波屋を始めとする敵対する両替屋と会うことになる。磐音は品川に指示を出してから、今津屋に同行して浅草妙高寺での伊勢屋の通夜に向かう。伊勢屋没後、伊勢屋の株は習わしでは一番先に申し込んだ越後屋の老分加三が引き継ぐが、阿波屋有楽斎は魂胆があるようで手元預かりにする。
 今津屋たちの帰りは屋形船で大川を下る。今津屋に南鐐が大量に持ち込まれた場合、1両8枚で兌換すると2枚の損が出るが、5000両までなら耐えられると話しているところに、天童と浪人が乗った2隻の緒牙舟が近づく。
 磐音は竿を切って8尺余の竹槍にし、飛び移ろうとした浪人の1人を川に落とし、2人目の腹を突き刺し、3人目も川に落とす。天童は松明を投げてきて、屋形船に火がつく。そこへ品川が船で駆けつけ弓矢で剣客2人を射る。天童たちは逃げ、今津屋一行は助かる。

第5章 雪下両国橋
 今津屋に女が南鐐8枚で1両への両替に来る。女は切賃=手数料20文も払う。南鐐は本物なので両替する。次々と客が南鐐8枚を1両に取り替えに来る。磐音は異変に気づき品川たちに両替した客のあとをつけさせる。その日の両替は小判に換算して357両、南鐐2856枚に達した。いよいよ敵対勢力の嫌がらせが始まった。吉右衛門は持ちこたえられるだけ頑張るという。
 尾行した5人が戻り、両替した客はみな浅草寺の隅の地主稲荷にお参りし賽銭を入れていたことが分かる。磐音たちが地主稲荷を調べていると、芝居小屋の木戸番がやくざの黒崎常五郎の三下もお参りしていたことを教えてくれた。磐音たちが黒鷲一家を見張っていると、裏口から出てきた番頭が駕籠に乗り、番頭に常五郎が重い包みを渡し、浪人2人が駕籠の左右についた。駕籠をつけると、本両替町の能登屋に入って行った。

 翌日は勘定奉行所金座方日村たちも見張りに来てくれていた。品川たちは最初に両替をした女をあとを長屋までつけ、黒鷲親分の手下に30文もらって両替をしたことを聞き出す。ほかの両替をした客にも仔細を聞き出し、書類にする。
 両替に来た青物売りの梅吉の南鐐が怪しいので日村が調べると、4枚は偽だった。梅吉は黒鷲一家に30文の手間賃で頼まれたと白状し、書類に署名する。磐音はとっさに策を考える。
 この日はおよそ400人が両替に来て、778両が交換された、持ち込まれた南鐐二朱銀は6224枚、うち651枚が偽金で、日村たちはその全員を取り調べ、書類に残した。

 磐音は、梅吉に「二朱銀4枚は偽物、証拠を買ってくれ」との文を書かせ、黒鷲一家に届けていた。丑三つ時、梅吉の住む裏長屋に浪人を含む黒鷲一家8人が現れ、梅吉に襲いかかる。が、寝ていたのは磐音で天秤棒で1人を倒し、もう1人も倒す。表に出た磐音に正面の浪人が八双に構え、もう1人の浪人が横に回る。磐音は正面の浪人の胴を叩き、腰骨を折る。横の浪人が突きの構えで襲ってくるが一瞬早く胴打ちにして倒す。子分は逃げ出す。磐音は残った常五郎を峰打ちして気を失わせ、今津屋に運び込んで勘定奉行所に引き渡す。
 今津屋での南鐐の両替は35720枚、支払った小判は4465両に上った。巷の闇値では1両=南鐐11枚まで値崩れしていて、阿波屋は1両=南鐐12枚まで下がったら買いためた南鐐を今津屋で両替しようともくろんでいるらしい。南鐐12枚で1両の交換なら今津屋は1両交換で南鐐4枚の損になる。田沼の改革を死守しようとするがどこまで持ちこたえられるか。
 それを聞いた磐音は相場を一気に下落させ、反撃に出ようと奇策を提案する。吉右衛門は奇策に不敵な笑みを浮かべる。その夕刻、江戸市中に「南鐐二朱銀大暴落・・新貨幣市場に流通せず・・」という闇の読売が撒かれた。磐音は、能登屋が読売を読んで阿波屋に入るのを見届ける。

 翌日、阿波屋の店に魚河岸の問屋月番行司千束屋らが現れ、1万両を南鐐に交換し、今津屋に持ち込んで南鐐8枚で1両に変えると話す。阿波屋は5000両を南鐐13枚相当に交換する。続いて芝居小屋中村座の座元が阿波屋に現れ3000両の交換を頼み、南鐐13枚相当で交換する。
 次に吉原の花魁髙雄が主の三浦屋と来て小判と南鐐の交換が始まったとき、勘定奉行川井、金座方日村の一行が船で乗り付け、南鐐を改めたところ偽南鐐が見つかる。実は前日、磐音が由蔵と魚河岸月番行司、中村座座元、吉原の三浦屋を訪ね千両箱を預けておいたのだった。川井が、偽南鐐を混ぜたうえ、南鐐二朱銀8片=小判1両の相場を下落させた咎は重い、有楽斎を捕縛し阿波屋の店は停止と言い渡したところ、有楽斎は逃げ出し行方をくらます。

 幕府の老中会議で、田沼意次が備後福山藩主阿部に両替屋行司阿波屋有楽斎が屋敷に駆け込んだという噂を聞いたが、いかがかと問う。その夜、備後福山藩中屋敷から密かに誰かを乗せた屋形船が大川を下る。磐音と品川が猪牙船であとをつけると、江戸の海に出て間もなく屋形船で悲鳴が上がり、誰かが海に落とされる。浮き上がった死体は阿波屋だった。
 南鐐二朱銀騒動が決着する。磐音と品川は今津屋から南鐐二朱銀を8枚もらい、用心棒の仕事が終わる。今津屋は1両13片で買い取った南鐐143000枚を1両8片で両替できるのだから6875両の儲けになるのに意外とケチと話ながら磐音と品川が帰る道に、天童が待ち構えていた。
 間合いは3間、天童が磐音の喉元に狙いをつけて襲いかかり、磐音が天童の突きを払う。脇腹に変化した天童の剣を磐音が防ぐと、天童は八双で磐音の眉間を狙い、磐音がその剣を跳ね上げると天童は袈裟斬りで襲う。磐音が小手斬りで応え天童の右手首の関節を斬るが、磐音も肩を斬られる。激痛に耐えながら磐音は上段撃ちで天童の眉間を割る。
 磐音の傷も深く、品川が磐音に肩を貸し医師源斎を訪ねる。手際よく傷口を縫合して止血してくれたが、なんと治療代は貰ったばかりの南鐐二朱銀2人分16枚で、2人は無一文になり幕が下りる。 

 人がらもよく誰からも好かれ、居眠り剣法の腕が冴え、機転が利いて南鐐二朱銀騒動を解決に導いた磐音の時代活劇といった展開である。田沼意次の財政再建策は教科書でも習い、映画やテレビドラマでも登場する話題だが、小判1両=南鐐二朱銀8片や江戸の両替の仕組み新たな知見になった。展開にハラハラドキドキの盛り上がりやスリリングな行き詰まる場面は少なく、物足りなく感じたが、肩の凝らない時代活劇だから51巻も続いたのであろう。 (2024.1)

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