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河津桜を歩く

2019年05月21日 | 旅行

静岡を歩く>  2019.2 静岡を歩く 河津桜

 朝起きたときも駿河湾は鈍色に染まったままである。ときおりパラパラと小雨が流れる。送迎バスで伊豆高原駅に送ってもらった。
 伊豆高原駅周辺も桜が色づいている。濃い桃色だったので河津桜と思っていたが、大寒桜だった。花は一重で、寒桜より少し大きいことから大寒桜と呼ばれるらしい。伊豆高原では3kmに及ぶ大寒桜のトンネルが人気だそうで、桜祭りは3月中旬~下旬に予定されているから河津桜より少し遅い。
 河津桜が大勢の観光客を集めているから、伊豆高原でも桜にあやかり、河津桜と時期がずれる大寒桜を選んで植樹が進められたようだ。日本人ならず、近年は外国人もわざわざ桜の時期に合わせて来日するほど花見の人気はうなぎ登りである。この日も、伊豆高原駅ロータリーには外国人ツアーがいたから、桜祭りは賑わいそうだ。

 10時少し前の伊豆急行線に乗る。まだ早いせいか、ほどほどの混みようだった。20分ほどで河津駅に着く。改札口あたりはすでにざわつき始めていた。
 昨晩考えた計画では、バスで水垂バス停まで行き、七滝ハイキングコースを下り、河津七滝バス停から上峰バス停までバスに乗り、上峰バス停から河津川沿いを歩いて桜を堪能し、河津駅から帰る、つもりだった(図web転載、緑…バス、茶色…歩)。
 河津七滝方面のバス停でチケットを買いながら七滝(ななたき)ハイキングを確かめたら、七滝(ななだる)ハイキングは雨で滑りやすいから止めた方がいいと忠告された。小雨が断続的に降っていて、岩場は滑りやすそうだ。地元の方の忠告に従い、無理を避けることにして、河津七滝バス停周辺の滝見学に絞ることにした。
 河津七滝方面のバスは、天城峠、浄蓮の滝、湯ヶ島温泉などを経て修善寺が終点である。人気の観光地や温泉地を抜けるバスなので、混み合っていた。

 バス通り=県道14号線を走り始めてほどなく、桃色を空に広げた河津桜が現れた。何人もが桜を見上げながら写真を撮っている。
信号待ちでバスが止まったので目をこらすと、河津桜原木の説明板が見えた(写真、web転載)。
 web情報によると、1955年、高さ1mほどの桜を見つけた人が庭に移植した。よほど桜が好きだったのであろう、大事に育て、1966年ごろから開花した。
 ソメイヨシノより1ヶ月も早く咲き始め、桃色も濃い。新品種であることが分り、河津桜と命名された。1975年に町の木に指定され、有志による植栽が進められて、いまや河津川沿い3kmに及ぶ桜並木となった。
 2月10日ごろから3月10日ごろに桜祭りが開催され、2019年花見人出ランキングで全国第8位、100万人に迫るほどの人気である。河津駅に近く、交通の便の良さも人気に拍車をかけているようだ。
 桜原木の樹齢は60年を超えるが、大きく枝を伸ばし、濃い桃色の花をたわわにつけて、勢いがある。カメラを構えようとしたらバスが走り出し、シャッターチャンスを逃した。

 11時過ぎ、水垂バス停に着く。河津七滝見学の拠点になっているらしく、大型バスの外国人グループが見学に向かうところだった。
 河津七滝は、滝の漢字を「たる」と発音し、七滝は濁って「ななだる」と発音する。河津駅のバス停で確かに「ななだる」と言っていた。伊豆の訛りかと思っていたが、水が垂れる様子から「滝」を「垂る=たる」と言い習わしたらしい。
 25000年ほど前、伊豆東部火山爆発の溶岩流が谷に流れ込んで、滝?崖?をつくりだした。いまの河津川にも滝がいくつもつくられ、七滝あたりには、上流側に釜滝かまだる、次にエビ滝、以下、蛇滝、初景滝しょけいだる、カニ滝、出会滝、大滝が1.5kmのあいだに連続し、七滝ハイキングコースが整備された。伊豆半島ジオパークのジオサイトにも指定されているから、天気が良ければ地球の旅を楽しむことができる。
 バスを降りたときも小雨が通り過ぎた。断続的だが、昨晩からの雨で足元は水浸しである。駐車場を下り、県道に出る。左に下れば大滝、右に上れば出合滝、カニ滝、初景滝が続き、伊豆の踊子像もあるらしい。河津駅に向かう次のバスは11:43、その次が12:38である。雨で滝巡りが難しいので、伊豆の踊子像あたりまで散策し11:43のバスに乗りことにした。
 県道を少し上ると、出会滝の表示がある。狭い石段を80mほど下る。雨で滑りやすい。石段を降りきったところで、先客が記念写真を撮っていた。出会滝は、二つの流れが合流する=出会うことから名付けられたそうだ(写真)。
 記念写真のカップルは自分たちの出会を思い出しているのかも知れない。高さ2mほどの滝は、溶岩流の特徴である柱状節理が表れた岩を削りながら流れ落ちている。

 県道は次のカニ滝の手前で河津川を渡り、左にカーブする。七滝ハイキングの散策路は河津川に沿って上っていく。
 散策路から河津川に30m下ると、カニ滝が見える(写真)。落差2mほどの小さな滝が、ごつごつした柱状節理を削って落ちている。ごつごつした溶岩の膨らみが蟹の甲羅に見えることから「カニ」と名付けられたらしい。周りは林で開け、明るい。ここも先客が写真を撮っていた。

 河津川を眺めながら散策路を歩く(写真)。溶岩流がむき出しになった川床を流れるのが河津川である。降ったり止んだりの小雨のせいか今日の流れは穏やかだが、多雨、豪雨のときは激しい流れが溶岩を削り、荒々しい川床をつくり出すようだ。
 しばらく歩くと、第2回「伊豆の踊子」読書感想文最優秀賞作品と題した看板が立っていて、最優秀賞の読書感想文が全文書かれていた。隣に、伊豆の踊子モデル像も置かれている(写真)。看板の読書感想文を少し読んだ。自分の物語として自分を重ね合わせたそうで、書き出しもうまい。が、全文を読むほどの時間はない。この先に初景滝と伊豆の踊子像があるらしいが、ここで戻ることにした。

 11:43のバスに乗り、上峰バス停で降りる。川沿いに出ると、桃色の河津桜絶景が始まる(写真)。ときおり小雨が流れ風景が煙っているが、濃い桃色の河津桜は煙った風景をものともせず咲き誇っている。
 およそ3kmの桜並木を歩く。歩き始めてしばらくはすれ違う人が少なかったが、河津駅に近くなるにつれ人出が増え、呼応するように屋台も並び始めた。
 写真を撮る人、屋台で買い食いする人は、日本人も少なくないが、外国人の花見グループが圧倒する。伊豆急行を利用し、河津駅から歩いてきたようだ。
 民家の庭先に菜の花が植えられていて、菜の花の黄色と桜の桃色の組み合わせが絶妙だった(写真)。桃色一色の桜並木は十分に見応えがある。しかし、菜の花の黄色を組み合わせると、さらに目を楽しませてくれる、と思う。
 桜を眺めながらランチを取るつもりだったが、屋台か仮設の食事処しか見当たらず、しかもどこも混み合っていた。
 駅まで歩く。駅近の食事処でおすすめの海鮮丼をいただいた。
 河津駅改札口は、これから花見に出かける?外国人グループで混み合っていた。花見の時期は全国第8位の人出になるそうだが、オフシーズンの11ヶ月の人出は少ないだろうから、1ヶ月のための過剰な投資もできないのであろう。桜並木を眺められる食事処やカフェがないのも、11ヶ月の閑散さを物語っている。

 スーパービュー踊り子号は1時間近く待たねばならないし、下田発で混み合っているそうなので、13:39発の普通列車に乗った。ほどほどの込みようで座れた。駿河湾はあいかわらず鈍色である。
 熱海から上野東京ラインに乗り、本を読んだり、うつらうつらしたりしながら家に帰った。昨日の梅見で8200歩、今日の花見は11500歩、足に疲れは残っていない。
 帰宅後、梅園と河津桜を思い出しながら、花見酒をいただいた。  (2019.5)

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