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「居眠り磐音 陽炎の辻」斜め読み1/2

2024年01月09日 | 斜読
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book560 居眠り磐音01 陽炎の辻 佐伯泰英 文春文庫 2019
 webで、佐伯泰英著「居眠り磐音 江戸双紙」シリーズが累計2000万部を超えるベストセラーになり、加筆修正を加えた決定版「居眠り磐音」シリーズが2019年から刊行されているのを知った。佐伯氏の筆裁きは歯切れがよく、検証を重ねた知見が織り込まれ、テンポのいい活劇に仕立てた物語が多い。「居眠り磐音01陽炎の辻」を読んだ。

 居眠り磐音こと坂崎磐音は豊後関前藩士で、江戸で高名な佐々木道場で修行した剣の達人である。冒頭に主な登場人物の紹介と、豊後関前藩地図、江戸地図が見開きで挿入されていて、磐音の行動が理解しやすい。
 第1章 向夏一石橋、第2章 暗雲広小路、第3章 騒乱南鐐銀、第4章 大川火炎船、第5章 雪下両国橋と展開する。「第1章 向夏一石橋」の舞台は豊後関前藩で、主人公・磐音が佐々木道場でともに修行した幼馴染みを斬ることになった話が描かれる。
 第2章~第5章の舞台は江戸で、浪人になった磐音が両替商の用心棒を頼まれ、田沼意次が進めようとしている財政再建、上方の金と江戸の銀相場の統一のため南鐐二朱銀=1両に反対する勢力の騒乱に巻き込まれ、気持ちの優しさと凄腕の剣と機転の利く動きで騒乱を解決する話である。

第1章 向夏一石橋 
 明和9年1772年4月下旬、幼馴染みの坂崎磐音、河出慎之輔、小林琴平が前後して江戸への勤番、留学をし、佐々木道場で剣術修行を終え、いっしょに豊後関前藩に戻った。藩士・琴平には舞と奈緒の2人の妹がいて、舞は御手先組頭・慎之輔の妻、奈緒は磐音との祝言が控え、幼馴染みの3人は縁戚になろうとしていた。
 磐音の剣は、日向ぼっこをしている猫のように手応えのない構えで相手の攻撃をかわし続け、相手が根負けすることから居眠り磐音と呼ばれた。慎之輔は真っ正面から押していく剣技で、攻撃の予測がつきやすい。琴平は変幻自在の剣捌きで波状攻撃を繰り返すが、相手を見くびり反撃されることもあった。
 城下に入った3人はそれぞれの屋敷に向かう。磐音の帰国祝いで豊後関前藩の財政立て直し、外様大名の生き残る途が語られる・・徳川幕藩体制160年余、世の中の主導権は江戸と上方の商人になっていたことは歴史小説でよく語られる。佐伯氏も田沼意次が南鐐二朱銀で財政再建を進めようとする話を物語に織り込む・・。

 話は前後する。慎之輔の妻・舞と妹で磐音の許嫁である奈緒、岩根の妹・伊予は仲がよく、磐音たちが江戸勤番で不在のとき、先祖の墓参りをしそのあと料理茶屋で食事を終えたところに御番組頭山根家の次男・頼禎が奈緒に一目惚れしたと言い寄る。その後も反物、紅白粉などを贈って奈緒に面会を強要したので、舞が慎之輔の叔父の案内で頼禎に会い強く断った。間もなくして、舞が頼禎と密会しているとの流言が流れ始めた・・叔父の嫌がらせらしい・・。

 話を戻して、磐音たちと分かれた慎之輔を酒癖の悪い叔父が酒屋に誘い、舞と頼禎の密会を真実のように話す。真に受けた慎之輔は酒の勢いもあって、屋敷に戻るなり問答無用で舞を手討ちにしてしまう・・これは無謀すぎる・・。
 妹・舞の死を聞いた琴平が慎之輔の屋敷に向かうと、酔っ払った叔父が舞の不義の証人といいながら刀に手をかけたので、琴平は袈裟懸けに斬り倒す。舞の遺骸を運ぼうとした琴平に慎之輔が斬りかかり、琴平は慎之輔も斬り倒す。
 豊後関前藩国家老、目付頭は、琴平を捕らえて処罰し事態を収拾しようとする。琴平は山根家に侵入し頼禎も斬り倒す。上意討ちの命を受けた目付配下の武士5人が山根家に向かうが、逆に琴平に斬られる。
 駆けつけた磐音に琴平はもう後戻りはできないと言い、磐音と空しく視線を交わしたあと、2人の勝負が始まる。ひたすら攻撃する琴平の剣を磐音はかわし続けるが、琴平の刃が磐音の右手首を斬り、左肘、内股をえぐり、脇腹を斬る。磐音は居眠りの体勢に入り、琴平が八双で斬りかかった一瞬、磐音の剣が伸びきった琴平の胴を薙ぐ。琴平は事切れ、磐音も気を失う。

 第1章の紹介が長くなった。居眠り磐音シリーズは51巻も続いたそうで、佐伯氏は豊後関前藩での出来事や財政立て直し、許嫁・奈緒のことなどを「居眠り磐音」シリーズのほかの物語で登場する予定だったで、仔細に語ったのではないだろうか。

第2章 暗雲広小路 
 磐音は琴平に斬られた傷でひと月余り熱にうなされ、回復したあと、豊後関前藩に暇乞いし、ほぼ無一文で江戸に出てきて、大川に架かる新大橋の東の金兵衛長屋に住んでいた。
 江戸は1772年2月の明暦の大火以来の大火事で、大名屋敷169、寺社382を焼失、死者15000余、行方不明4000余の被害を出した。磐音は火事場の後片付け人足でなんとか暮らしてきたが、その仕事も終わってしまった。大家の金兵衛は磐音に鰻屋宮戸川の鰻割きの仕事を紹介する。磐音は、宮戸川2代目鉄五郎の前で豊後関前流の鰻の薄造りをつくる。江戸では鰻の蒲焼きを食べるので薄造りは向かないが、鉄五郎は磐音の包丁捌きを認め、のちに鰻捌きを手伝うことになり、日に70文を稼ぐようになる。

 老中田沼意次は、南鐐二朱銀8枚で小判1両とする財政再建、上方・江戸の相場統一を進めようとしていた。両替商今津屋吉兵衛は幕府の意向に沿って南鐐二朱銀を流通させようとしたが、金相場が崩れ利鞘で稼いでいた両替商が反発し、今津屋は脅されていて用心棒を探していた。金兵衛の娘おこんは今津屋の奥向き女中をしていたので金兵衛に用心棒のことを話し、金兵衛が稼ぎのない磐音を今津屋に連れて行くが、すでに丹石流市村道場の5人が雇われていた。
 帰ろうとしたとき、やくざ毘沙門の統五郎が南鐐二朱銀80枚を小判に両替してくれと現れる。今津屋が南鐐が偽と見破る。もめごとに市村道場の用心棒の1人が顔を出すと、いち早く統五郎が匕首で腹を刺す。市村道場師範代が剣を抜くがやくざの用心棒種市が師範代の胴を切り抜く。市村道場の竹村武左衛門と品川柳次郎は手が出ない。
 居合わせた磐音があいだに入ると、種市が八双の構えで磐音に斬りかかる。磐音は居眠りの構えで躱し、種市の次の剣を柔らかく跳ね返し、種市の先手を取って首筋を刎ねる。磐音の腕を目の当たりにした吉右衛門は磐音に用心棒を依頼する。
 市村道場主市村集五郎は竹村と品川を破門にし、やくざのような黒岩と天童を今津屋の用心棒にする。黒岩、天童の素性が怪しいとみた磐音は、破門になった竹村と品川に2人を尾行してもらい、2人がやくざ五大の力五郎の博奕場に出入りし、南鐐二朱銀と小判を交換していたことが分かる・・磐音は剣も立つが、直感も鋭い・・。

第3章 騒乱南鐐銀 
 話が前後する。金銀相場は本両替町の金座会で両替屋3組から派遣された手代12名で決める。手代12名の代表の両替屋行司は阿波屋有楽斎で、為替組と越後屋三井に通告、為替組から勘定所、御金蔵に書類をあげる決まりである。
 江戸の両替商は600株=600人で、両替商は基本的に利を追う商人なので南鐐二朱銀には反対だが、上方、江戸の金銀相場統一は国政上重要である。今津屋は幕府の南鐐二朱銀8片で小判1両とする政策を守ろうとするのに対し、反対勢力は密かに賭場などで南鐐二朱銀10片で1両に交換し、今津屋で1両を南鐐二朱銀8片と交換して南鐐2片を儲け、幕府の政策に逆らおうとしていた。
 ・・磐音が父の借金の形に女衒に連れて行かれそうになる娘を剣捌きで助ける話が挿入されるが、割愛する・・。
 用心棒の黒岩、天童は、両替商伊勢屋丹兵衛の口利きで伊勢屋の菩提寺である厳念寺の離れに住んでいた。2人の部屋代も伊勢屋が払っていた。伊勢屋は相場に失敗して、阿波屋に使われたらしい。さらに、有楽斎の背後で田沼に対抗する幕閣が動いているようだ。

 黒岩と天童を尾行していた竹村が、尾行がバレて斬られるが、名医厳原湖伯の手当で命は助かる。磐音は源念寺に出向き、黒岩と天童に今津屋の用心棒解雇を通告する。 
 続く

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