アギーレ監督の言葉からメンバーをシミュレーション。トップ下廃止で本田は選外か。柴崎&宇佐美の選出とスタメン定着に期待
日本代表を率いるハビエル・アギーレ監督が来日会見を行った。そこでは、これからの4年間で目指すチーム作りのヒントがちりばめられていた。アギーレ監督の言葉をもとに、9月5日に迫った初戦のメンバーをシミュレーションする。
2014年08月12日
text by 海老沢純一 photo Asuka Kudo / Football Channel
「4-3-3をベースに、将来性のある選手や、攻守両方をこなせる選手が必要」
8月11日、35度を越える灼熱に加えて台風の影響で強風が吹き荒れる中、日本代表を率いることとなったハビエル・アギーレ監督が来日した。長時間におよぶ空の旅の末、日本の土を踏んだその足で都内某所の会見場に姿を現したアギーレ監督。
会場には、その声を聞くために多くの報道陣が駆けつけた。試合が行われるJリーグのスタジアムの記者室やJFAハウスで定期的に開催される記者会見とは比べ物にならない人の数で、サッカーを伝えるメディア媒体はこんなにも多かったのかと気付かされたほどだった。
そして、アギーレ監督がカメラのシャッター音を浴びながら壇上に登場すると、会場の端には夫人や息子さんらご家族の姿も。
そんなご家族に見守られながら質問に答えるアギーレ監督だが、その中でもやはり「守備を固めて勝利を目指したいと考えており、それを目標にしている」というコメントは興味を引くものだ。
さらに、フォーメーションに関しては「4-3-3をベースに考えている」と語っており、選手選考については「将来性のある選手や、攻守両方をこなせる選手が必要。特に守備ができるというのは重要だ。GKもFWも含めて11人全員が守って攻められるチームを目指す」と答えた。
では、9月5日に予定されているウルグアイ戦と同9日のベネズエラ戦には、どんなメンバーが選出されるのだろうか? ただ、1ヵ月を切っている段階で大幅に選手を入れ替えることは考えにくいので、ブラジルW杯を戦った選手たちを中心にシミュレーションしてみようと思う。
本田、今野、大久保、遠藤、伊野波は選外か。山口は負傷で欠場
以下は、ブラジルW杯日本代表の23選手。
GK
川島永嗣(31歳)、西川周作(28歳)、権田修一(25歳)
DF
吉田麻也(25歳)、今野泰幸(31歳)、森重真人(27歳)、伊野波雅彦(28歳)、長友佑都(27歳)、内田篤人(26歳)、酒井高徳(23歳)、酒井宏樹(24歳)
MF
長谷部誠(30歳)、遠藤保仁(34歳)、山口蛍(23歳)、青山敏弘(28歳)
FW
本田圭佑(28歳)、香川真司(25歳)、清武弘嗣(24歳)、岡崎慎司(28歳)、柿谷曜一朗(24歳)、大久保嘉人(32歳)、大迫勇也(24歳)、齋藤学(24歳)
ここから、アギーレ監督が掲げた「4-3-3(アンカーを置いた4-1-2-3とする)」「将来性のある選手」「攻守をこなせ、守備に貢献出来る選手」という基準に沿わない選手、つまり30歳以上の選手や運動量の少ない選手、ポジションのない選手を考えてみる。(GKはポジションの特性上、30歳以上でも除外しない)
まず、30歳以上の選手は今野、長谷部、遠藤、大久保。ただ、長谷部は攻守に貢献出来るため、例不外的に選出される可能性が高い。その一方で、今野と大久保に関しては年齢的にも4年後は厳しく、遠藤は守備も出来ないため選外となることも考えられる。
そして、本田は90分間を走り切るスタミナがなく、トップ下以外のポジションでの起用は難しいため、4-1-2-3にはフィット出来ない。ミランでは右ウイングで起用されているが、適正なポジションとは言えない状況が続いている。
さらに、伊野波は能力的に厳しく、山口は残念ながら負傷によって出場不可となっている。
外せない細貝の存在。中盤の守備力は日本No.1
となると、計6枠が空いていることになる。4-1-2-3のシステムで枠数を考えると、GK3、CB4、SB4、MF5、WG4、FW3の計23枠となる。上記の6人を外すと、現状ではGK3、CB2、SB4、MF2、WG4、FW2。そのため、CB2、MF3、FW1で新戦力となる選手をピックアップしてみよう。
まずはCB。このポジションは最も問題が多く、人材難も嘆かれているだけにアギーレ監督も頭を悩ませることになるだろう。そこで、このポジションは「将来性のある選手」に重点を置いて考えてみる。
1人目は、サンフレッチェ広島の塩谷司。ブラジルW杯前も招集を臨む声が多く、現在25歳。チームは苦戦中ながら今シーズンすでに5得点をあげるなど「攻守に貢献出来る」という点にもマッチ出来る選手だ。
2人目は、鹿島アントラーズの昌子源。塩谷よりも更に若い21歳で、今シーズンは19節時点で全試合フル出場を続けるなど、鹿島の主力に定着した有望株だ。A代表としてプレーするためにはまだまだ成長が必要だが、4年後に期待して早いうちから代表の空気に慣れさせるのも良いだろう。
さらに、同僚の19歳・植田直通も有望な存在だけに、切磋琢磨して代表入りを競い合うことでアギーレ監督を良い意味で悩ませて欲しい。
次にMF。まず、「守備を固めて勝利を目指す」というスタイルに欠かせないのはヘルタの細貝萌だ。軒並み苦戦を続ける海外組において、クラブで完全にレギュラーを掴んでいる存在でドイツでもその守備力は高く評価されている。
ザッケローニ監督が守備ではなく攻撃面に比重を“置き過ぎた”ことでブラジルW杯行きは逃したが、中盤の守備力は間違いなく日本No.1だろう。
覚醒の時を迎えた宇佐美。G大阪で大車輪の活躍
鹿島アントラーズの柴崎岳。22歳という年齢ながら落ち着いたプレーでチームをけん引している【写真:工藤明日香 / フットボールチャンネル】
2人目は、鹿島アントラーズの柴崎岳。22歳という年齢ながら落ち着いたプレーでチームをけん引している。攻撃面では決定的なパスを供給し、自ら得点も奪える力を持ちつつ、守備でも貢献出来る選手。“将来の代表エース”と言われていたが、これからの4年間がその“将来”となるはずだ。
3人目は、FC東京の米本拓司を推したい。フィジカルの強さは日本人屈指で、ボール奪取能力はJリーグNo.1と言っても過言ではない。細貝とともに中盤の守備を担う存在としてチームに貢献できるはずだ。
そして、最後の1枠。FWにはガンバ大阪の宇佐美貴史がふさわしい。開幕序盤は負傷の影響で出場出来ずにいたが、戦列に復帰してからは大車輪の活躍。8試合で5得点を挙げており、自らが不在の間には勝ち点を稼げなかったチームを完全に蘇らせた。
10代でのブレークやドイツでの苦悩など22歳にして波瀾万丈のキャリアを送ってきたが、ついに覚醒の時を迎えたと言える。また、センターフォワードはもちろん、左WGとしても起用可能というのは代表監督としても重宝したい存在だ。
以上の選手を変更したリストは以下の通り。
GK
川島永嗣(31歳)、西川周作(28歳)、権田修一(25歳)
DF
吉田麻也(25歳)、森重真人(27歳)、塩谷司(25歳)、昌子源(21歳)、長友佑都(27歳)、内田篤人(26歳)、酒井高徳(23歳)、酒井宏樹(24歳)
MF
長谷部誠(30歳)、青山敏弘(28歳)、細貝萌(28歳)、柴崎岳(22歳)、米本拓司(23歳)
FW
香川真司(25歳)、清武弘嗣(24歳)、岡崎慎司(28歳)、柿谷曜一朗(24歳)、大迫勇也(24歳)、齋藤学(24歳)、宇佐美貴史(22歳)
柴崎はスタメン定着にも期待。宇佐美は香川の状態次第では先発も
4-1-2-3のフォーメーションで先発の11人を選べると…
そして、このメンバーから4-1-2-3のフォーメーションで先発の11人を選ぶと、
GK:川島
DF:内田、森重、吉田、長友
アンカー:細貝
CH:長谷部、柴崎
WG:岡崎、香川
FW:柿谷
CBは吉田が批判の対象となっているが、ザッケローニ監督時代のように中盤から前線の選手が効果的な守備をせず、ただラインを押し上げるだけではCBの2人に大きな負担となるため、持ちこたえられないのも仕方がない。
細貝がアンカーとして中盤の守備を担えば、CB勢のパフォーマンスも見違えるように良くなる可能性も十分にある。
FWは大迫もいるが、ショートカウンターならばやはり柿谷だろう。昨シーズンのセレッソ大阪でも、柿谷の裏を狙うスピードはショートカウンターでこそ生きることが証明されている。また、香川がクラブで全く出場機会がない場合には宇佐美や齋藤を左WGで起用することも考えられる。
もちろん、アギーレ監督が単純に30歳を超えた選手を外すかは分からないし、本田や遠藤を「フィット出来ない選手」と判断するかも分からない。しかし、会見で「五輪やユース世代の育成にも関心がある」と語っていたことからも、今後はより若い選手の抜擢も期待で来そうだ。
【了】
ハビエル・アギーレ日本代表監督の会見を元に新生代表メンバーを予想するフットボールチャンネルの海老沢氏である。
これまでの中心選手であった遠藤を守備ができない、本田を90分間を走り切るスタミナがないとバッサリ選外とし、伊野波に至っては能力的に厳しいと言い切る。
このあたりに関して、いかがなものかと言いたいところであるが、ここは敢えて新戦力の選考について目を向けたい。
鹿島からは岳と源が挙げられ、植田も有望な存在と述べる。
まあ、普通の意見であろう。
岳と源は前監督にも選出されており、日本の将来を担う選手であることに間違いはない。
そして植田については、身体能力は日本人選手としてはずば抜けておる。
後は経験のみと言って良かろう。
この9月の試合に選出される可能性は極めて低いが、リオデジャネイロ経由ロシア行きに最も近い存在ではなかろうか。
また、新監督が挙げる布陣に当てはめた中に岳がおる。
4-3-3の左セントラルハーフとは面白い予想と言えよう。
アギーレ監督の意向が全く見えぬ今は、あれこれ予想することが楽しい。
どこにどの選手をはめ込めば、どうなるだろうと予想するのもファンの楽しみである。
新代表の発表を心待ちにしたい。