鹿島アントラーズ、2014補強診断。戦力上積みなく、名門復活へ大きな不安
フットボールチャンネルでは、Jリーグ開幕に向けて、Jクラブの補強動向を診断していく。今季の目標に向けて、効果的な補強を行うことができたクラブはどこなのか。名門復活を目指す鹿島アントラーズを占う。
2014年02月15日
text by 編集部 photo Asuka Kudo / FootballChannel
昨季は久々の無冠
昨シーズンの鹿島アントラーズは、リーグ順位こそ一昨シーズンの11位から5位へ改善されたが、カップ戦を含めて6年連続で獲得してきた国内タイトルを逃した。復帰2年目となるトニーニョ・セレーゾ監督の元、覇権奪回を果たせるのだろうか。
2014シーズン 戦力入れ替え
大迫の穴埋めだけでない、鹿島が抱える問題
【写真:工藤明日香/フットボールチャンネル】
昨シーズンの最終節、ごくわずかながら優勝の可能性も残していた鹿島だったが、石原直樹の2ゴールに屈して自らのホームでサンフレッチェ広島の連覇を祝っただけでなく、ACL出場権も逃した。
この試合で前半ロスタイムに退場した大迫勇也は、自らの失態に涙を流したが、彼がいなければ優勝を争うことすら出来なかったことも事実だ。19得点という攻撃力のみならず、抜群のキープ力や前線からの積極的な守備でチームの中心となった。
しかし、大迫は2014年の年明け早々に1860ミュンヘンへの移籍を発表した。このエースの放出は、かなりの痛手だろう。昨季オフに獲得したダヴィはチームにフィットすることが出来ず、負傷もあって期待に応えたとは言いがたい。今季は、ダヴィの突破力を活かすためにもカウンターに磨きをかける必要がありそうだ。
そのFWには、大学ナンバーワンの呼び声高い赤崎秀平を筑波大から獲得。ダヴィとともに大迫の穴を埋められるかが注目される。
また、昨季はダヴィ以外の新戦力も軒並み低調なパフォーマンスに終わった。新井場の抜けた左サイドバックとして獲得した前野貴徳は定着できず、ヴィッセル神戸から復帰した野沢拓也も全盛期のインパクトを残すことは出来なかった。
さらに1月31日、クラブは西大伍に対して規律違反による処分を発表した。西は、複数年契約下にありながら海外クラブへ移籍を希望しており、チームの始動日である1月20日に合流しなかった。
その他にも、12年にトップチームへ昇格したばかりの中川義貴が突如引退を発表するなど、内部での混乱はチーム全体に影響を与える可能性もあるため、トニーニョ・セレーゾ監督にとっても頭の痛い問題だろう。
補強ポイントに選手は獲得しているが…
トニーニョ・セレーゾ監督【写真:工藤明日香/フットボールチャンネル】
新戦力で注目の赤崎は、関東大学リーグで2度得点王に輝き、昨シーズンには特別指定選手としてJ1デビューも果たした即戦力。ルーキーとはいえ大卒の22歳で、1年目からの活躍に意欲を示している。
キャンプでも評価を高めており、ダヴィとの2トップ定着に期待したい。さらに、遅攻では活かしにくいダヴィの状態次第では一気にエースの座を手にする可能性もある。
さらに、本職ではない中田浩二が務めるなど人材難の左SBには、磐田から山本脩人を獲得。ジュビロ磐田では定位置を獲得出来なかったが、サイドバックとしては左右でプレー可能で、選手層に厚みを持たせる補強となった。また、定位置奪取に燃える新選手会長の前野貴徳と切磋琢磨すれば、チームにとって大きなプラスとなりそうだ。
こちらも補強ポイントだった守備的MFには、ルイス・アルベルトを獲得。183センチ、80キロと大柄で玉際に強く、小笠原と柴崎の守備面での負担を減らせる存在となりそうだ。とはいえ、来日以降コンディション調整に苦しんでおり、開幕までにベストな状態に出来るかが懸念される。
さらに、帝京大学可児高からU-17日本代表MFの杉本太郎も獲得。2012年のU-16アジア選手権でMVPを獲得した有望株で、世代交代を図るクラブにとっても大切に育てていきたい逸材だ。
その他、新卒では千葉国際高からブラジル人FWのカイオを獲得。快足を生かしたドリブル突破が武器で、アピール次第ではジョーカーとして定着できる可能性を秘めている。
放出選手を見ると、中盤ではジュニーニョが退団。昨季、大きな期待を背負って加入したものの、真価を発揮できずに終わった中村充孝の奮起に期待したい。DF陣では、長くチームを支えた岩政がタイへ移籍したものの、山村和也が先発に定着。植田直道や昌子源といった有望株が控えており、新戦力の獲得は無かった。
補強面と総合力それぞれの診断結果
鹿島アントラーズ・2014シーズン 予想フォーメーション
補強診断 D+
全体的に小粒な補強。戦力の上積みはない
大迫の抜けた穴をカバーするためには、ダヴィと赤崎ではやや心細い。フロントは、いまだ外国人選手の獲得を狙っているが、チーム状態次第では本腰を入れる必要に迫られる可能性もある。全体では将来有望株の獲得には成功したが、現状では昨季からの上積みは出来なかった。
総合力診断 C
ポゼッションだけでない鹿島らしい柔軟さが求められる
昨季チームが掲げた「ポゼッションサッカーへの回帰」では、ダヴィは活かしにくい。ショートパスで崩すスタイルではブレーキとなってしまう事が多々あり、状況次第では縦に速いサッカーに舵を切る必要もありそうだ。
大迫が抜けた事で、柴崎岳や遠藤康ら既存の主力にかかる負担は大きい。覇権奪回のためには、赤崎や土居聖真、中村充孝が予想以上の活躍を見せなければならない。
【了】
フットボールチャンネルによる戦力評価である。
非常に低評価といって良かろう。
「昨季からの上積みは出来なかった」と言い切っておる。
確かに左SBの補強である山本脩斗は負傷で離脱しており、ボランチのルイス・アルベルトの運動量は上がらぬままとなっておる。
これでは、補強に成功したとは現時点では言えなかろう。
とはいえ、左SBには源が名乗りを上げ、ボランチではJ屈指の満男と岳が並ぶ。
ヤスには風格が身に付いてきており、ダヴィには実績がある。
ここで、攻撃の選手が一駒ブレイクすれば、このような予想を覆す力を持っておると言い切れよう。
その第1候補はアツである。
昨季はポジションを確保するまでに至らず悔しいシーズンを終えておる。
良い状態の時は日本代表以上の力を持つと言われる才能を更に開花させるのだ。
アツの躍動に期待しておる。