行きつけの酒場で聞いた話。
店主の妻が、汚れた器を洗おうとしたら、
突然、流しのお湯が出なくなってしまった。
湯沸かし器の電池が切れたのか。
そう思って確認しに行くと、
湯沸かし器の近くにあるガスの元栓が締められていた。
そりゃ、お湯は出ないよ。
でも、誰がそんなことをしたのか?
店主の妻が、一見さんの大学生グループに詰問した。
「ガスの元栓、締めました?」
犯人は彼らの中の一人だった。
「火がボッとついて怖かったんです」
その店の湯沸かし器はトイレを出た手洗いの所にあるのだが、
かなり古いもので、
普段は種火が灯っているが、
お湯を使うとボッと音をたてて火が点く。
昔はどこの家庭にもあったものだが、
まだ二十歳そこそこの大学生は見たことがなかったようだ。
そうか、あの湯沸かし器も今では過去か。
それはさておき、
いくら怖かったとはいえ、勝手に元栓締めるなよ。