ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

チェーホフ作「プラトーノフ」

2019-03-14 23:36:35 | 芝居
2月8日東京芸術劇場プレイハウスで、アントン・チェーホフ作「プラトーノフ」を見た(脚色:デイヴィッド・ヘア、翻訳:目黒条、演出:森新太郎)。

翻訳劇の名手・森新太郎がチェーホフを演出する新シリーズが始動!
第一作目は、作者の死後20年近く経ってから発見された幻の処女戯曲。
森新太郎と初タッグを組む藤原竜也が、4人の女性の愛に溺れ、破滅していく教師プラトーノフ役で、新境地に挑む(チラシより)。

19世紀末のロシア。将軍の未亡人アンナ(高岡早紀)の屋敷にはさまざまな人が集まってくる。そこに、アンナの義理の息子セルゲイ(近藤公園)が
結婚したばかりの妻を連れてきた。その相手を見てプラトーノフ(藤原竜也)の心は激しく揺れ動く。彼女はかつての恋人ソフィア(比嘉愛未)だったのだ。
アンナ、ソフィア、サーシャ、マリヤ、4人の女性の愛が交錯する中、プラトーノフは破滅へと突き進んでいく・・・。

まずゲイゲキの席について一言。評者の席は2階右寄りの最後列。S席なのにこんな悪い席とは・・・と思ったら、何とほとんどの席がS席なのだった!
さらに終演時刻を確認しようとすると、「1幕90分、休憩15分、2幕75分」という表示が。えっ?何これ?これを見て計算しろということか?
なぜこんな不親切なことをする?おおよそでいいから終わる時刻を書いてくれればいいのに。
この2点が重なって、一気にゲイゲキの印象が悪くなってしまった。

主人公プラトーノフはどこに行っても女たちにモテモテだが、実はれっきとした妻サーシャ(前田亜希)がいるのだった。
一方、未亡人アンナも美しく知的で魅力に溢れており、何人もの男が彼女の魅力に参っていて、求婚者もいる。
そのアンナ自身はプラトーノフにお熱で、妻子持ちの彼に猛アタックする。彼も彼女に惹かれてはいるが、むしろ親友の妻となって現れた元カノの
ソフィアの方が気になるのだった。そしてソフィアの方も・・・。

藤原竜也は相変わらずごつごつした発声で、その演技は翻訳劇には少々過剰なほど emotional 。だが意外とコメディセンスがあることが分かった。
妻と赤ん坊のいる家の近くまで帰って来て、もうちょっとというところでアンナに誘惑され、行こうかやめようかとさんざん迷うシーンが実におかしい。
アンナ役の高岡早紀が適役。声も仕草もとにかく色っぽい。多くの男を虜にする役として充分説得力がある。

結局彼はアンナとではなくソフィアと不倫してしまったらしい。ソフィアは豹変。それまでびくびくおどおどしていたのに、見違えるほど元気に強気になっていて、
男に「明日一緒にこの村を出て行きましょう」「二人で手に汗して働くのよ」と力強く宣言。男の方はというと、(親友セルゲイを裏切ったという罪の意識から)
憔悴し、身なりも構わずぐったりしていて彼女に言われるままにおとなしく従う。実に面白い。

これがチェーホフの処女戯曲!しかも死後20年近く経ってから発見されたとは・・・。全く驚いた。
処女作にはすべてがある、というのは正しい。領地を売る話、恋愛格差、凶器のピストル・・・まさに我々に馴染み深いチェーホフの世界だ。
ストーリーはさほど単純でもない上に、不自然なところもない。笑えるシーンも多い。この芝居の発見は宝の山を掘り当てたようなものだ。
最後は一応悲劇のはずだが、チェーホフの皮肉な目は、やはり人生を喜劇ととらえている。

「けいばい」という言葉を聞いて、しばらく意味が分からなかった。少したって、やっと競売のことと分かったが、「桜の園」など他の芝居では「きょうばい」と
発音していたように思う。文法的にはどちらも正しいらしいので、好みの問題か。

サーシャの父イワン大佐役に西岡徳馬、サーシャの弟ニコライ役に浅利陽介を配するなど、脇もなかなか豪華。

というわけで、収穫の多い一夜だった。
今後も続くというチェーホフの新シリーズが楽しみだ。




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