ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「アテネのタイモン」

2018-01-22 16:32:51 | 芝居
12月28日彩の国さいたま芸術劇場大ホールで、シェイクスピア作「アテネのタイモン」をみた(翻訳:松岡和子、演出:吉田鋼太郎)。

アテネの貴族タイモン(吉田鋼太郎)は執事フレヴィアス(横田栄司)の助言、哲学者アペマンタス(藤原竜也)の皮肉を無視し、誰にも
気前よく金品を与え、ついに破産。友人たちが自分の金目当てだったことが分かり、すっかり人間不信に陥る。森に引きこもるタイモンは、
復讐のためにアテネを滅ぼそうと蜂起した武将アルシバイアディーズ(柿澤勇人)に掘り当てた金を与えるが・・・。

蜷川幸雄亡き後、彩の国シェイクスピア・シリーズの二代目芸術監督に就任した吉田鋼太郎が、残る5作品を演出するらしい。

冒頭、全員白い衣装でダンスパーティの趣き。
哲学者アペマンタス役の藤原竜也は茶色っぽいボロい衣装に毛皮を引っ掛けて登場。
予想通り emotional 。すべてのセリフを絶叫する。そのため(いつものことだが)かえってよく聞こえない時もある。
想像できると思うが、これではとても哲学者には見えない。
宴会で踊る女性たちの衣装はアラビアンナイト風。

人々が手にして返済を迫る借用書が赤い紙で統一されている。視覚的インパクトがあり効果的。
借金の依頼を断る友人たちのシーンが面白い。
一人は寝椅子にゆったり横たわってワインを飲みながら。
一人は友人と酒を飲みつつタイモンの噂をしていて。
一人は家でたらいの湯につかり、召使に湯をかけさせながら髪を洗っている時。

タイモンが「アテネよ、燃えてしまえ」と2台の燭台を倒すと、しばらくしてパチパチと音がし、煙が客席にまで流れて来る。赤い紙が
天井から次々と降って来る。蜷川風。

武将アルシバイアディーズ役の柿澤勇人は赤い軍服で凛々しい姿。声もよく、セリフも聞き取り易く、好演。

休憩後、舞台はガラリと変わって深い森の中。落ち葉がうず高く積み重なっている。
二人の泥棒が森に棲むタイモンのところにやって来て、彼と話すうちに改心して生き方を変えようとしていると、タイモンがいきなり銃で
彼らを撃ち殺してしまう。これには驚いた。
タイモンはすべての人を言葉で呪いまくるが、一人も殺しはしない。元々あれほどの善意の人が、そんなことできるわけがない。
一体なぜ原作をこうも捻じ曲げてしまう?
主人公の絶望を強調したいだけのためか?
全く納得できない。

それ以外の演出は全体にいいと思ったが、音楽が一貫してカタルーニャ民謡の「鳥の歌」なのはどういうわけか。
短調だからこの芝居に合ってるとでも思ったのか?

滅多に上演されることのない作品をとにかくナマで見ることができたのは幸いだった。
今後も、彩の国に関する限り、この表現を使うことになるのかも(笑)。

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