ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「二人の主人を一度に持つと」

2024-05-26 23:43:28 | 芝居
5月16日下北沢 本多劇場で、カルロ・ゴルドーニ作「二人の主人を持つと」を見た(加藤健一事務所公演、演出:鵜山仁)。



口から出まかせ系コメディ in ヴェネツィア
召使いカトケン、デタラメ言いまくり!

18世紀、ヴェネツィア。
とある男性主人の召使い・トゥルッファルディーノ(加藤健一)は、
仕事中、召使いを雇いたいと言う男に出会う。
「二人の主人に仕えれば、給料も2倍になる!」
と思いついたトゥルッファルディーノ。
主人が増えたことで起こる数々の難題を、ウソでごまかし乗り越えていく。
けれども彼の周囲の人々は、
男装中、婚約破棄、恋人との死別・・などなど、カオスな状況。
そこへトゥルッファルディーノのウソがとんでもない誤解を呼び、事態は大混乱!
お調子者のトゥルッファルディーノ、果たして上手く場を収められるのか?(チラシより)

パンタローネ(清水明彦)の家では、娘クラリーチェ(増田あかね)と恋人シルヴィオ(小川蓮)との婚約が無事済み、
シルヴィオの父ドットーレ(奥村洋治)共々お祝い気分。
そこに、トリノから来たという召使いトゥルッファルディーノ(加藤健一)登場。
彼はクラリーチェの婚約者ラスボーニの召使いで、ラスボーニももうすぐこちらに到着すると言う。
変わった男で、早速女中ズメラルディーナ(江原由夏)に言い寄ったりしている。
だがラスボーニは最近男に刺されて死んだはずなので、誰も相手にしない。
それに、ラスボーニと娘の婚約は父であるパンタローネが決めたことだったが、彼が死んだので、娘は晴れて恋人と結婚できることになったのだった。

だがそこに本当にラスボーニがやって来たので、一同大あわて。
その場にいたホテルの支配人ブリゲッラ(土屋良太)だけが、かつてトリノでラスボーニと面識があったので、
今ここに来たのが、実はラスボーニではなく彼の妹ベアトリーチェ(加藤忍)の男装した姿だと見抜く。
だがブリゲッラに気づいた彼女から、秘密を守ってほしい、と陰で密かに言われるので、彼女の芝居に協力することにし、
パンタローネたちに、この人は確かにラスボーニです、と請け合う。
するとパンタローネが、娘はかつて決めた通りにあなたと結婚させます、と言い出すので、娘たちは大パニック。

トリノからフロリンド(坂本岳大)という男もやって来る。
この男はベアトリーチェの恋人で、彼女の兄が二人の結婚に反対したため、決闘して刺し殺してしまい、
ベアトリーチェを追ってこの町に来たのだった。
彼はトゥルッファルディーノを見て、召使いにならないか、と持ちかけ、相手は給料欲しさにOKする。

パンタローネがラスボーニに返す金=金貨百枚(入りの袋)をトゥルッファルディーノに預け、「お前の主人に渡せ」と言ったので、
どちらの主人に渡したらいいのかわからず、フロリンドに渡してしまったり、
郵便局に行って、私宛の手紙が届いているかどうか見て来い、と両方から言われたり、
てんやわんやの騒ぎになる。
彼は昼飯がまだなので早く食べたいのだが、なかなかありつけない。

クラリーチェは、ラスボーニになりすましているベアトリーチェを嫌い、避けている。
ベアトリーチェは、クラリーチェと二人きりにしてほしい、とパンタローネに頼む。
二人きりになると、彼女は自分が実は女だと秘密を打ち明ける。
クラリーチェは驚くが、これでシルヴィオと結婚できる、と喜び、彼女の秘密を守る、と約束する。
こうして「たったの4分で」二人が和解し、手を取り合うのを見て、父は驚く。

一方シルヴィオは恋敵ラスボーニ(実はベアトリーチェ)に決闘を挑み、またしても騒ぎに・・。

トゥルッファルディーノは二人の主人の荷物を開けて服に風を通すことにする。
白と黒の二つのトランクを持ち出し、それぞれ預かった鍵で開け、中身を広げる。
ナイトガウン、緊急用トイレ、しょうゆ味のラーメン、水のペットボトル。
もう一方には同じくナイトガウン、緊急用トイレ、ペットボトル、味噌味のラーメンなど(笑)。

そこにフロリンドが来たので慌てて中身をしまうが、一部を間違えてもう一方のトランクに入れてしまう。
彼は自分のトランクを開けさせガウンを着ると、ポケットに、かつて自分がベアトリーチェにあげた肖像画が入っているので驚く。
トゥルッファルディーノは問いただされて苦しまぎれに「これは間違えて入れてしまいました。実は私のものです。
ある人の遺品としてもらったのです」と言い出す。
驚いたフロリンドがさらに問い詰めると、つい一週間ほど前まで雇われていたご主人が亡くなり・・と。
フロリンドは「その人は髭が生えていたか」と尋ね、生えてなかった、と言われると、
ベアトリーチェが死んだと思い、絶望。嘆きながらよろよろと立ち去る。

そこに、今度はベアトリーチェがやって来る。
彼女は自分のトランクから、かつて自分がフロリンドにあげた本と手紙を見つけ、驚いてトゥルッファルディーノに問いただすと、
彼はさっきと同じ手を使ってごまかそうとする。
かつての主人の遺品・・だと。
するとベアトリーチェはフロリンドが死んだと思い、大声で嘆き悲しむ。
そこにパンタローネが通りかかり、ベアトリーチェが悲しむ声を聴いて、彼女が女であることに気がつく。
パンタローネは喜び勇んで帰り、シルヴィオの父親に話そうとするが、相手はまるで聞く耳を持たない。

クラリーチェはシルヴィオの誤解を解こうとするが、ベアトリーチェとの約束があるので秘密は打ち明けることができない。
シルヴィオが冷たくするのでクラリーチェは死のうとしてシルヴィオの剣を取り、首に当てるが、シルヴィオは止めない。
そこに女中のズメラルディーナが来て止め、シルヴィオを責める。
ズメラルディーナはクラリーチェに、世間は女が浮気をしたら寄ってたかって非難するけど、男が浮気したって誰も何も言わない、
世の中の規則や法律は男たちが作ったものだからよ!、とズバリ言って聞かせる。

ようやく誤解が解けてクラリーチェとシルヴィオは仲直り。
トゥルッファルディーノは二人の主人に問い詰められて、ペペロンチーノ(笑)という架空の男をでっち上げる。

互いに恋人が死んだと思って自殺しようとしたベアトリーチェとフロリンドは、すんでのところで相手に気づき、再会を喜ぶ。
こうして二組の結婚が決まるが、そこにトゥルッファルディーノがズメラルディーナと結婚したいと申し出る。
そこから彼のこれまでのウソがバレ、ペペロンチーノなどという男はそもそもいなかったこと、彼が二人の主人に一度に仕えていたことがバレてしまう。幕

目まぐるしいが、楽しかった。
女中が力強く小気味よくジェンダー論を語るのが素晴らしい。
これだから、今でもこの人の芝居は大人気で、よく上演されるのだろう。
時代を考えると、作者カルロ・ゴルドーニという人は男性なのに実に新しい。
シェイクスピアを思わせるところもある。
女性が男装して恋人を探すのは「ヴェローナの二紳士」と同じだし。
主人と召使いとの間で何度も人違いが起こるのは、その名も「間違いの喜劇」と同じだし。

あちこちに笑える箇所があって楽しい。
トリノから来た手紙を書いたのはルチアーノ・パヴァロッティという召使いで、「この男はいい奴で、おまけに歌もうまいんだ」とか(笑)。
こういうのとかトランクの中身とかは、もちろん現代日本人向けに演出家が付け加えたり、書き変えたりしたのだろう。
宴会の料理の品数と出す順番、そして皿の並べ方についてのトゥルッファルディーノのうんちくもおかしい。
料理の中身も、歯の悪いパンタローネのための「一口コロッケ」とか「イギリス名物のプリン」とかも興味深い。

役者ではベアトリーチェ役の加藤忍が素敵だった。





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「出番を待ちながら」 | トップ | 「デカローグ 5 ある殺人... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

芝居」カテゴリの最新記事