ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

オペラ「修道女アンジェリカ」 / オペラ「子どもと魔法」

2023-10-14 17:33:50 | オペラ
10月7日新国立劇場オペラパレスで、プッチーニ作曲のオペラ「修道女アンジェリカ」と、ラベル作曲のオペラ「子どもと魔法」の二本立てを見た(演出:粟國淳、
指揮:沼尻竜典、オケ:東京フィル)。




①「修道女アンジェリカ」
17世紀末イタリアの女子修道院。春の夕暮れ、礼拝堂で祈りを終えた修道女たちが1年前に死んだシスターのことを思い出して語り合う。
アンジェリカは薬草の知識があり、シスターの一人が蜂に刺されると、庭で薬草を摘んで煎じ方を教えてやる。
四輪馬車が到着し、アンジェリカの叔母である公爵夫人が面会に現れ、アンジェリカの妹が結婚するので親の遺産の相続権を放棄するよう求める。
実は、アンジェリカは公爵家の令嬢だが、7年前に未婚で息子を産んだためにこの修道院に入ることになったのだった。
彼女はそれ以来会うことを許されていない息子の消息を尋ね、2年前に病気で死んだと教えられる。
相続放棄の文書に署名し、絶望して泣き崩れたアンジェリカは母なしで死んだ子に思いを馳せ、天国での再会を強く願う。
その日の深夜、庭で摘んだ薬草を煎じた毒をあおぐが、自殺の大罪を犯したことに気づき、聖母マリアに慈悲を乞う。
すると天の合唱とともに聖母が子どもを伴って現れる。奇跡を目の当たりにしたアンジェリカは、聖母に促されて
こちらに歩む息子に向かって腕を伸ばし、息絶える。

英語と日本語の字幕付きだが、両者が微妙に違うので、つい、いつもの癖で見比べてしまって目が疲れた。
それぞれイタリア語から別々に訳したのかも知れない。
和訳の方は、時々親切に意訳してくれているが、どうも間違っていると思える箇所もあった。

衣装は、修道院長だけが黒で、修道女たちは灰色と白。
大勢なので、黒でなくて大正解(衣裳:増田恵美)。

女子修道院だから当然だが、冒頭からラストまで、みな聖母マリアを讃美し続ける。
同じく未婚の身で妊娠した女性なのに、アンジェリカは赤ん坊と引き離されて修道院に無理やり入れられる。
公爵家の令嬢という高貴な身分だったことも災いしたわけだが、考えると、憮然とさせられる。

音楽は、何しろプッチーニだから、ドラマチックで雄弁。

歌手では、公爵夫人役の齊藤純子が好演。
アンジェリカを冷たく突き放す役どころだが、彼女はアンジェリカの醜聞のため、世間の好奇の目にさらされ、それに耐え、公爵家の家名を守ってきたのだった。
だが彼女はアンジェリカに対して、同情する温かい気持ちも持ち合わせている。それが伝わってくる演技だった。

ラストで上空から光が射してきたり、聖母マリアが男の子を抱いて現れたりするのを客席のみんなが固唾を飲んで待っていた(と思う)。
だが・・結局何も起こらなかった。
演出家は「アンジェリカの死の瞬間に起こったのは、客席の私たちも共有できるような奇跡」ではなかった、
それは「彼女にしか見えないものだったのでは?」と書いているが、だからといって、何もしないのがいい方法なのだろうか。
その瞬間、彼女にだけ見えたものを、劇場内に再現してほしかった。
彼女が死ぬ間際に幻覚を見て「救われたと感じたのならば、それを奇跡と呼ぶのだと思う」とも書いているではありませんか。
その奇跡を可視化してほしかったのです。

②「子どもと魔法」
 宿題が進まない男の子にママがお小言を言う。
子どもは部屋にあるものに当たり散らす。
子どもが肘掛け椅子に座ろうとすると、椅子が突然動き、安楽椅子や柱時計も動き出す。
ティーポットと中国茶碗は二重唱を歌う。
子どもが暖炉に近づくと、火が子どもを追いかけ回す。
壁紙に描かれた登場人物たちがおしゃべりを始める。
おとぎ話の本からお姫様が現れるが、ページが破られたことを嘆き、消え去る。
ページの間から老人のかたちをした算数が現れる。
外で黒猫と白猫が愛の二重唱を歌う。
 庭ではそれまでいじめられていた樹木やリスなどの動物たちが、子どもを取り囲む。
しかし、リスが足にケガをすると、子どもは自分のリボンでリスの傷口を縛ってやり、自分もその場に倒れてしまう。
動物たちは子どものやさしさに触れ、みなで子どもを家に連れて行き、「ママ」と叫ぶ。
動物たちは「あの子はいい子だ」と歌いながら去っていく。
子どもは手を前に伸ばしながら、「ママ!」と叫んで、幕が閉じる。

舞台は一転して、カラフルな生き物や道具でいっぱい。
文字通り、おもちゃ箱をひっくり返したような騒ぎだ。
衣装もそれぞれ工夫が凝らされていて飽きさせない。
中国茶碗が「ハラキリ、セッシュ―・ハヤカワ(早川雪洲のこと)」と歌うなど、ハチャメチャで可笑しい。
第2部で、室内から森に場面が移ると、緑の森の光景が美しい(美術:横田あつみ)。
ラベルの音楽が面白くて楽しかった。
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