ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

イプセン作「ちっちゃなエイヨルフ」

2009-02-19 15:21:00 | 芝居
 2月15日タニノクロウ演出のイプセン作「ちっちゃなエイヨルフ」(上演台本:笹部博司)を観た(あうるすぽっと)。

 灰色の円柱が左右に5本ずつ並んだ回廊のような整然とした舞台(美術:朝倉摂)。
 ピアノの音がD,A,F,D ・・・と響き始める。バッハの「音楽の捧げもの」。
 「ぼくら一族には何か独特のもの、共通点がある。みんな名前が母音で始まるし・・」とアルフレッドが妹アスタに言うセリフが面白い。

 非常に分かり易い展開。こうなるんじゃないか、と思っていると本当にそうなってゆくのがおかしい。
 アルフレッドの妻リタは独占欲の塊で、何ともいやな女に見えるが、そんな彼女も見方を変えれば夫を愛するという一点においては一途で、むしろ夫より深くて純粋な愛を抱いているということが終盤明らかになってくる。

 情けないのは夫アルフレッドだ。金持ちで働かなくても生きていけて、やりたいことも特になく暇を持て余している。自分だって子供の頃は貧乏で苦労したのに、金持ちの女と結婚したお陰で有産階級に成り上がり、今では貧乏人たちを「あの下の連中」と呼んで差別する。

 夫が「復活」という言葉を口にすると妻は聞きとがめ、いきり立つ。かつて信仰をあざ笑って捨てさせた・・というようなことを言うが・・・。そのあたりがよく分からなかった。原作を読んでみないといけない。 
「悲しみを分かち合うためでなく、喜びを分かち合うためにこそ連れ合いが必要・・」という言葉に打たれた。

 子供の事故死の後、夫婦が互いを責め合うシーンには既視感がある。「風と共に去りぬ」のレット・バトラーとスカーレットだ。しかしここでは、別れると思われた二人が、妻の思いがけない決意によって新たな関係へと導かれてゆく。

 演出家に頼みたいのは、台本を全然知らない人に、時々客席に座って稽古を聞いてもらってほしいということだ。自分たちは何度も練習しているからセリフをどんなに早いスピードで話しても全部聞き取れるように「なってしまっている」けれど、初めて聴くお客には必ずしもそうではない、ということをしっかり念頭に置いてセリフを発してほしい。
 セリフが聞き取れないことほど腹立たしいことはないのだから。

 しかし、イプセンの女(ここでは妹だが)は強い。いろいろあってもしまいには男を捨てて出て行く・・・。
 

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