ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

オペラ「魔笛」

2012-04-20 22:21:54 | オペラ
3月22日彩の国さいたま芸術劇場大ホールで、ピーター・ブルック演出によるモーツアルトのオペラ「魔笛」
をみた。
オケの代わりにピアノ一台のみを使い、歌手はたったの9人。3時間かかるところを90分に短縮した翻案というので、
あまり期待しないようにして出かけた。

大蛇に追われ森に迷い込んだ若き王子タミーノは、すんでのところで助かり、夜の女王から、娘パミーナが悪者に
さらわれ捕えられていると聞く。パミーナの肖像画を一目見て恋に落ちた王子は女王から魔法の笛を授かり、
鳥刺しの青年パパゲーノと共にパミーナ救出の旅に出る。パミーナを捕えているザラストロとは何者か。タミーノは
恋する人を救うことができるのか・・。

舞台は例によって簡素。竹の棒がたくさん立てられていて、歌手たちがそれらを必要に応じて動かす。
3人の侍女も童子たちもいない。

モノスタトスは白人男性が演じ、捕らわれたパミーナの部屋に入りながら言う、「おれは心が黒いから・・」。これには
驚いた。ブルックが「心が」を付け加えたのだ。political correctness(差別的でないこと)を志向する適切で
立派な処置だ。従来この役は黒人が演じ、白人パミーナのことを「白いってきれいだなあ・・」と歌うのだが、
もちろんそこは省略。

パパゲーナが老婆のかっこうをして登場し、ひとくさり聞いたこともない短いアリアを歌う。「昔はよかった・・」
という内容。これにもびっくり。

夜の女王は娘に向かって「あなたの父が死ぬ前、胸の太陽の輪をザラストロに与えた。そして私もあなたも彼に
従うがいい、と言った」と話す。こういう解釈を加えることによって、不可思議な物語を分かり易くしようと
している。

ピアニストは達者で、陰影に富む名演奏だったが、ピアノ一台ではいかにも貧弱で、あの輝かしいオペラを知る
者としては欲求不満が募った。ブルックは大げさなオペラの組織に嫌気が差してこういう形を模索してきたと
言う。それは分からなくもないが、観客としては、こういうのもありか、という感じ。

歌手はフランス人が多く、ブルックの拠点がフランスなので、歌はドイツ語だがセリフは全部フランス語(字幕あり)。
モーツアルトの別の曲も挿入されている。


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