ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

井上ひさし作「ムサシ」

2009-03-07 23:02:10 | 芝居
3月6日、井上ひさし作「ムサシ」(蜷川幸雄演出)を彩の国さいたま芸術劇場で観た。
 
 冒頭の音楽(宮川彬良)で、何だか大河ドラマを見ているような気分にさせられる。
 
 舞台装置は寺の渡り廊下と清々しい竹林だけ、というシンプルな美しさ。そこにセミしぐれが降り注ぐ。これぞまさしく日本の夏だ。

 鈴木杏は初めて観たが、声がいいし演技もできる。
 白石加代子はいつも通り達者。こんな役者がいたら、誰だって当て書きしたくなるだろう。
 藤原竜也も勿論うまいが、たまにセリフが聞き取れないことがある。
 小栗旬は長身、白皙、絵に描いたような小次郎だ。

 「カチカチ山の狸の(孝行な)遺児」という創作能!このアイディアがいい。時の将軍徳川秀忠(家光?)から書くように言われたという設定はエリザベス一世とフォールスタッフの逸話に想を得たのかも知れないが、なかなか面白い。

 日本の人口が3000万人の時、侍が300万人というのは多過ぎやしないか。武士は一割もいたのだろうか。

 二人の最後の決闘シーンで、切々と胸に迫ってくる音楽と機関銃の音に、’03年(イラク戦争が起こった年)の蜷川演出の「ペリクリーズ」を思い出して鳥肌が立った。今年はガザ攻撃で多くの民間人が殺された。

 「・・雷が恐い・・」という娘のセリフが要。これによって観客は次の幕への心積もりができる。これがなければそのあとがあまりにも唐突で、ついて行けなくなる。

 作者は最後をどう締めくくるか、迷ったのかも知れない。難しいところだ。途中までは破綻もなく、見せ場も多くて客席は大いに沸くだけに、終わり方が厄介だ。

 最後に響き渡るパイプオルガンがいい。舞台装置も人々の心情世界も、言わば和の極みなのに、西洋音楽の極みとも言うべきオルガンの音色が、不思議なことに全く違和感がなかった。

 キャスティングは万全。禅寺の和尚役の人もよかった。主役の二人にとってこの作品は、今後貴重なレパートリーになるだろう。
 

 

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