3月4日赤坂ACTシアターで、三島由紀夫作「ライ王のテラス」をみた(演出:宮本亜門)。
実在したカンボジア最強の王として今も語り継がれるジャヤ・ヴァルマン七世王。彼が「アンコール・トム」「バイヨン寺院」を建設してゆく
雄大なロマンを、アンコール王朝の衰亡を背景に描いた壮大な物語。1965年にカンボジアを訪れた三島由紀夫が史実にフィクションを加え
4年をかけて書き上げ、69年に北大路欣也主演で帝国劇場にて初演された(チラシより)。
<1幕1場>
冒頭、職人たちが王の噂をしている。若い見習いの青年とその恋人。
戦から戻ったカンボジアの王(鈴木亮平)は、第一王妃(中村中)、第二王妃(倉科カナ)、王太后(鳳蘭)らに迎えられる。王は観世音菩薩への
感謝を込めて大寺院を建立しようとする。職人たちを宮廷に入れることは前例がない、と皆に反対されるが、それを押し切って彼らを呼び入れ、
案を出させる。見習いの若者の案が気に入った王は、その場で彼を棟梁とし、寺院の設計を任せる。王のために女たちの踊りが繰り広げられる。
<2場>棟梁となった若者と恋人、彼は突然抜擢された驚きと喜びから、工事が完成するまでは結婚しません、と王の前で誓ったことを後悔している、
と言うが、恋人は理解を示す。前の場から一年たったことが分かる。寺院建設の命令が下ったあの日、王の病の最初の兆候(肩にバラの花びらのよう
なアザ)が現れた。王は日に日に衰えてきている。地下で囚人たちが歌いながら工事中。2人が去ると、かつての棟梁(親方)が「恩を忘れて…」と
恨み言を言っていると、そこに宰相が現れ、布袋に入れた金を渡す。「お前の役目はなるべく皆のやる気を削ぎ、工事を遅らせることだ」「王を何とか
して亡き者にせねば」と言うのには驚いた。その会話を第二王妃が聞いてしまう。宰相は彼女を捕え、口止めのため手ごめにしようとする(!)ところ
を王太后に見つかり、彼女は彼を鞭打つ(!)。実は二人は以前からグルで、し、しかもデキているようなのだ!王太后は第二王妃に毒を渡し、「王
はお前しか信用せず、お前の手からしかものを食べない。これを飲ませ、殺すのだ。十日たっても王が死ななかったらお前は死ぬことになる」と告げ
る。彼女は弱り果てた息子に代わって以前の彼のような若くて強い王をもう一度生み出したいとか言う。意味分からん…。
<2幕>
二匹の尾の長い猿(に扮した役者たち)が飛び跳ねる。第二夫人が第一夫人の部屋に来て、1、2日匿ってくれと頼む。その後国外逃亡する手はず
となっているという。第一王妃が国王の発病後しばらくしてそばに寄りつかなくなり部屋にこもりきりなことをめぐって2人は言い合う。王は
らい病の由。そこへ王太后が第二王妃を探しに来て、今日が約束の10日目だと分かる。そこに更に王登場。皆が自分を避ける、と3人を責める王。
言い争う内に王が第一王妃の袖をまくると手も腕もどす黒い紫色。彼女が王と同じ病であることが皆に知れる。
第一王妃はナーガ女神への嫉妬心を露わにするが、王は「定刻になった」といつも通りナーガの神殿に向かう。
<2場>場面は暗い神殿。正面の王座に王が座り、祈り、首を垂れると、手足を暗い茶色に塗った3人のほっそりした女たちが現れ、エロティック
な踊りを踊る。この場面が実に美しい。王が「お前こそが私の永遠の女」とか言っていると、そこにいつもと違う金色の衣をまとった第一王妃
が現れる。「ここに来てはならぬ」と王。だが彼女は既に覚悟を決めており…。
ああ、疲れた。この調子で書いていくとまだまだ終わらないので、以下、文字通りのあらすじ(粗筋)を書くと、
第一王妃は「今から私がナーガとなる」と火の中に身を投げる。王がショックで気を失っている間に宰相が王を殺そうとするのを王太后が後ろから
刺す。ラスト、病み衰えた王は完成した寺院を見つめながら第二王妃をも遠ざけ、一人死んでゆく。と思いきや、死んだのは彼の肉体のみで、
彼の精神は若い頃のまま強く美しく生き続けるのだった???
とまあ三島由紀夫らしい話であります。面白いけど難解。
特によく分からないのは
①王とナーガとの関係
②王太后の気持ち(これから宰相との間に子を産むつもり、とか聞こえたが?)
③肉体と精神の関係
というところだろうか。
だが演出も美術(松井るみ)も期待通りよかったし、役者は第一王妃役の中村中、王太后役の鳳蘭、第二王妃役の倉科カナが、いずれも好演。
主役の鈴木亮平は初めて見たが、うまいし熱演。数ヶ月かけて鍛えたというその肉体の美しさ!演出家の言う通り「三島が嫉妬する」と思われる
ほど。今回参加した、カンボジアの舞踊家たちの舞踊も素晴らしかった。
実在したカンボジア最強の王として今も語り継がれるジャヤ・ヴァルマン七世王。彼が「アンコール・トム」「バイヨン寺院」を建設してゆく
雄大なロマンを、アンコール王朝の衰亡を背景に描いた壮大な物語。1965年にカンボジアを訪れた三島由紀夫が史実にフィクションを加え
4年をかけて書き上げ、69年に北大路欣也主演で帝国劇場にて初演された(チラシより)。
<1幕1場>
冒頭、職人たちが王の噂をしている。若い見習いの青年とその恋人。
戦から戻ったカンボジアの王(鈴木亮平)は、第一王妃(中村中)、第二王妃(倉科カナ)、王太后(鳳蘭)らに迎えられる。王は観世音菩薩への
感謝を込めて大寺院を建立しようとする。職人たちを宮廷に入れることは前例がない、と皆に反対されるが、それを押し切って彼らを呼び入れ、
案を出させる。見習いの若者の案が気に入った王は、その場で彼を棟梁とし、寺院の設計を任せる。王のために女たちの踊りが繰り広げられる。
<2場>棟梁となった若者と恋人、彼は突然抜擢された驚きと喜びから、工事が完成するまでは結婚しません、と王の前で誓ったことを後悔している、
と言うが、恋人は理解を示す。前の場から一年たったことが分かる。寺院建設の命令が下ったあの日、王の病の最初の兆候(肩にバラの花びらのよう
なアザ)が現れた。王は日に日に衰えてきている。地下で囚人たちが歌いながら工事中。2人が去ると、かつての棟梁(親方)が「恩を忘れて…」と
恨み言を言っていると、そこに宰相が現れ、布袋に入れた金を渡す。「お前の役目はなるべく皆のやる気を削ぎ、工事を遅らせることだ」「王を何とか
して亡き者にせねば」と言うのには驚いた。その会話を第二王妃が聞いてしまう。宰相は彼女を捕え、口止めのため手ごめにしようとする(!)ところ
を王太后に見つかり、彼女は彼を鞭打つ(!)。実は二人は以前からグルで、し、しかもデキているようなのだ!王太后は第二王妃に毒を渡し、「王
はお前しか信用せず、お前の手からしかものを食べない。これを飲ませ、殺すのだ。十日たっても王が死ななかったらお前は死ぬことになる」と告げ
る。彼女は弱り果てた息子に代わって以前の彼のような若くて強い王をもう一度生み出したいとか言う。意味分からん…。
<2幕>
二匹の尾の長い猿(に扮した役者たち)が飛び跳ねる。第二夫人が第一夫人の部屋に来て、1、2日匿ってくれと頼む。その後国外逃亡する手はず
となっているという。第一王妃が国王の発病後しばらくしてそばに寄りつかなくなり部屋にこもりきりなことをめぐって2人は言い合う。王は
らい病の由。そこへ王太后が第二王妃を探しに来て、今日が約束の10日目だと分かる。そこに更に王登場。皆が自分を避ける、と3人を責める王。
言い争う内に王が第一王妃の袖をまくると手も腕もどす黒い紫色。彼女が王と同じ病であることが皆に知れる。
第一王妃はナーガ女神への嫉妬心を露わにするが、王は「定刻になった」といつも通りナーガの神殿に向かう。
<2場>場面は暗い神殿。正面の王座に王が座り、祈り、首を垂れると、手足を暗い茶色に塗った3人のほっそりした女たちが現れ、エロティック
な踊りを踊る。この場面が実に美しい。王が「お前こそが私の永遠の女」とか言っていると、そこにいつもと違う金色の衣をまとった第一王妃
が現れる。「ここに来てはならぬ」と王。だが彼女は既に覚悟を決めており…。
ああ、疲れた。この調子で書いていくとまだまだ終わらないので、以下、文字通りのあらすじ(粗筋)を書くと、
第一王妃は「今から私がナーガとなる」と火の中に身を投げる。王がショックで気を失っている間に宰相が王を殺そうとするのを王太后が後ろから
刺す。ラスト、病み衰えた王は完成した寺院を見つめながら第二王妃をも遠ざけ、一人死んでゆく。と思いきや、死んだのは彼の肉体のみで、
彼の精神は若い頃のまま強く美しく生き続けるのだった???
とまあ三島由紀夫らしい話であります。面白いけど難解。
特によく分からないのは
①王とナーガとの関係
②王太后の気持ち(これから宰相との間に子を産むつもり、とか聞こえたが?)
③肉体と精神の関係
というところだろうか。
だが演出も美術(松井るみ)も期待通りよかったし、役者は第一王妃役の中村中、王太后役の鳳蘭、第二王妃役の倉科カナが、いずれも好演。
主役の鈴木亮平は初めて見たが、うまいし熱演。数ヶ月かけて鍛えたというその肉体の美しさ!演出家の言う通り「三島が嫉妬する」と思われる
ほど。今回参加した、カンボジアの舞踊家たちの舞踊も素晴らしかった。