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西宮八園虎日記 3月29日

 阪急夙川駅のほど近く。閑静な高級住宅地にその店はある。女将が一人でやっている店で、基本は和食だが、おいしいものならそれにこだわらない。
 酒はこだわっている。この店には日本酒、ビール、ウィスキーしか置いていない。ワイン、焼酎は置かない。ビールはエビスビールだけ。日本酒とウィスキーは女将のおめがねにかなったものを置いている。
「八園」それが店の名だ。ここ西宮には甲東園、甲陽園、香櫨園、苦楽園、昭和園、甲風園、甲子園と園の字を持つ七つの高級住宅地があった。現存する地名もある。その八つ目の園ということで八園という店の名だ。
 女将本屋敷千鶴。かって阪神タイガースや阪急ブレーブスで俊足巧打の名内野手が伯父である。料理のセンスが良く、美人で客あしらいもうまい。酒豪でたいへんに楽しいお酒を飲む。そして、これが一番大切なことだが、女将はたいへんな阪神タイガースファンである。
 今夜も女将と美酒、美味を求めて阪神ファンたちが、ここ「八園」にやってくる。
「こんばんは」
「あら、玄白先生、お久しぶり」
「女将、元気だったか」
「甚兵衛さん、お元気そうですね」
「女将、今夜のお酒は」
「はい。大黒正宗を用意しました」
「うん。ひやでいただこう」
「甚兵衛さん、開幕戦、勝ちましたな」
「ピッチャーはよろしいな。点取られたんはメッセンジャーが犠牲フライで1点とられただけ」
「はい。あいかわらず打てませんな」
「でも、ま、新人の木浪、近本で同点、ベテランの鳥谷がスリーベース打ってサヨナラ勝ち。ま、ええんちゃいますか」
「おかみアテはなんや」
「ヒイカを煮つけました」
「お、ええな」
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