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とつぜん上方落語 第28回 米あげいかき

 いかき。なんのこちゃわらんでしょうな。笊と漢字で書いてもわかりまへんやろ。いかき、ざるのことです。ざるっちゅうても阪神タイガースの内野守備のこととちゃいます。細い竹や針金で編んだ、水気をきったりするのに使う容器のことでんな。
 昔は、このいかきを「大間目、中間目、小間目に米を上げる米揚げいかき」という売り声でもって行商人が売りに来てたんですな。
 ある日いかきの行商人が、米相場がたつ堂島へんにやってきましたんや。強気の相場師の店の前で「米をあげる米揚げいかき」とゆうたんですな。この相場師、強気も強気。「上げる」「のぼる」という言葉が大好き。いかき屋の売り声を聞いて大喜び。店に入れて歓待するんです。
このいかき屋、こんどは別の大店の前を通りかかりました。「米をあげる米揚げいかき」この大店のだんさんはむちゃくちゃ阪神タイガースファンです。ちょうど前の道が工事中で大きな騒音がしてたんですな。「トラをあげる米揚げいかき」と、この店のだんさんの耳に聞こえました。
「なに、トラを上げる。ええことゆう。呼んでいかきを買うてやれ」
 いかき屋、喜んで勢いよくドアを押して入ってきたからドアが倒れました。
「すんません。ドアを押し倒しまして」
「なに、ドラを押し倒す。いかき、全部買うてやんなさい」
「全部買うていただける。こら数えんでええからじゃまくそうない。助かります」
ジャイない。財布ごとやるぞ」
「うれしいです。これで今晩はコイの洗いで一杯飲めます」
コイの新井を呑む」
「これ、いかき屋さんに甲子園の巨人戦の切符10枚ほど上げなさい」
「うわあ。10枚も。甲子園行く前にウチに集まらなあきませんけど、そんなにようけ来たらウチのふすまがベリべりと破れますな」
ベイを破る。金本監督のサインボールあげます」
「金本さんのサイン。こりゃ家宝にして床の間に飾ります。毎日、前でスワって厄を落します」
スワを落す」
「これ、うちにある阪神電鉄の株券みんなあげなさい」
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