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ソロモンの偽証 前篇 事件


監督 成島出
出演 藤野涼子、板垣瑞生、石井杏奈、永作博美、松重豊、小日向文世、黒木華
 
宮部みゆき作品の映像化は失敗することが多い。「模倣犯」は原作は素晴らしかったが映画はクズであった。そんわけで多少心配しながらこの映画を観たしだい。なにせ原作は大傑作で、小生は2013年度のベスト1にした。あの長大な小説をどう映像化するのか興味があった。
結論からいう。及第。条件付でお勧め。その条件とは、原作を読んでからこの映画を観るということ。今は文庫も出ているので読みやすいだろう。あの長い小説をそのまま1本の映画にするには物理的に無理。だから全篇後篇の2本の映画にしたのは正解だった。ただ、映画は原作のダイジェスト版の感はいなめない。とつぜん容疑者の自宅が火事になったり。担任の教師の自宅マンションの防犯カメラの映像がとうとつに映ったり。原作を読んでいないとなんのことかわからない。
話は、学校で転落死した生徒がいる。警察は自殺とした。しかし、これは他殺であり犯人を知っているとの告発文が校長、担任教師、同じクラスで刑事の娘に届く。この刑事の娘が主人公の藤野涼子。この涼子が真相を探るため学校で裁判をやるといいだす。
中学生が大人を説得しながら殺人事件の裁判。とても現実ではありえない話を、原作では宮部が腕力で読者を納得させてしまう。映画は、このあたりは、なんとか及第点をやれる。これは主役の藤野涼子の演技のたまものではないか。藤野はこの映画のためにオーディションで選ばれた演技経験のない素人だが、原作の藤野涼子のイメージに非常によく合っていた。なかなかの熱演で優等生で生真面目な涼子をよく演じていた。ただ、藤野涼子は優等生ではあるが、イヤな女のところもある。そこのところの表現は少し足りなかった。
藤野をはじめ、弁護人神原和彦役の板垣たち、生徒たちを演じた子らはみんなうまかった。その中でも特に、この物語の重要なキーとなる人物三宅樹里をやった石井杏奈。いじめにあって足げにされている時の目、暗闇で妖しく光る目。目の演技だけで樹里の持つ心の闇を表現していた。よく女優を表現するのに小悪魔というが、小がつかない悪魔的な演技を披露してくれた。主役の藤野涼子より三宅役の石井杏奈の方が良い女優に育つのではないか。
 後篇も観よう。   

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