goo

必死の逃亡者


監督 ウィリアム・ワイラー
出演 フレドリック・マーチ、ハンフリー・ボガート、マーサ・スコット

 邦題がおかしい。必死なのは逃亡者だけではなく、人質になった被害者も必死である。被害者の方が必死度がより強い。この映画のテーマを的確に表現しようと思えば「必死の被害者」の方がいい。
 アメリカの男は家族を最も大切にする。職場の机上には妻や子供の写真がある。この映画の主人公ダンの職場にも妻エリーの写真が飾ってあった。日本の会社でそんなことしたら笑いものだ。日本なら親の死に目妻の出産に、男が仕事を優先して立ち会わないのを「男は仕事最優先」と美徳とされるが、アメリカでは美徳ではない。仕事よりも家族が大切なのだ。プロ野球の助っ人外国人選手はチームが大変な時でも平気で帰国するが、彼らにとっては当然のことだ。
 その大切な家族を凶悪な脱獄犯3人に人質にされた男が必死で家族を守る話。緊迫したサスペンスが全編に渡って描かれている。
 ヒリアード家は郊外の裕福な家。主人ダンは銀行のえらい人。妻と娘、息子の4人家族。平和な朝。4人そろって朝食を食べている。
 この家に3人の脱獄犯が押し入った。グレンとハルのグリフィン兄弟。凶暴な大男サム。グレンがリーダーで抜け目なく冷徹な犯罪者。サムは少し知恵足らずで乱暴者。
 ダンはこの3人と智謀の限りを尽くして渡り合う。警察に知れれば家族が殺される。しかし、警察に知らせなければ事態は解決しない。ダンや娘シンディは外出はするが、妻エリー息子ラルフが家にいるから戻らなければならい。インディの恋人チャックがたびたび家にやってくる。シンディもデートに出かける。しかし家族が人質。絶体絶命の危機をダンとその家族はいかにして切り抜けるか。
 脱獄犯のリーダーグレンをハンフリー・ボガートがやっていたが、ボガートがこんな本格的な悪役をやるとは思わなんだ。さすがである。悪役やっても、しっかりと憎らしい見事な悪役である。ボガートのような役者は日本でいえば高倉健ではないだろうか。高倉健も「新幹線大爆破」で悪役をやったが、高倉演じる犯人沖田は、犯罪者ではあるが共感できるところもあり、100%悪人とはいえない。ところがこの映画のボガート演じるグレンは共感できないし、ひたすら悪い犯罪者。どうも高倉健よりハンフリー・ブガートの方が芸域が広いようだ。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )