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ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上


 ブラッドレー・ボンド+フィリップ・N・モーゼス  本兌有+杉ライカ訳
                      エンターブレイン

 近未来サイバーパンク活劇小説である。傑作とか佳作というより怪作といった方がいいだろう。舞台は日本。これがどういう日本かよく判らない。首都はネオサイタマ。重金属酸性雨が降る極端に公害が濃い環境だ。よく判らないがどうやら鎖国状態らしい。
 ソウカイヤと呼ばれるシンジケートが世の中をぎゅうじり、ソウカイヤに都合の悪い人はニンジャに殺される。人々はカチグミサラリマンとマケグミサラリマンに分類され、マケグミになると生きていくのも難しい。ソウカイヤとともにヨロシサン製薬という企業がはばをきかせ、バイオ・スモトリなる巨大なスモトリ型人造人間をつくっている。また「ザッケンナコラー」としかいわないクローン・ヤクザもある。
 で、お話というのが、ソウカイヤのニンジャに妻子を殺された男が、ニンジャを殺すニンジャ=ニンジャスレイヤーとなって悪者ニンジャを次々にやっつけていく。ま、よくあるお話だが、ブレードランナーっぽいというか、なんというか実にサイバーパンクな世界で、短い文章を連ねていく表現は、ある種のリズム感があり、根を詰めて読むと、酩酊感さえ感じる。
 作者の二人は日本がよく判っているのかいないのか、微妙なズレぐあいがおかしい。例えば、敵通しのニンジャがであっても、いきなりイクサはしない。
「ドウモ、ミニットマン=サン、ニンジャスレイヤーです」と、あいさつを交わしてからイクサを始める。不始末をすうとセプクさせられる。イクサに敗れると「ハイクを詠め」といわれ辞世のハイクを詠んで死ぬ。悪いことをしてやっつけられるとインガオホー。ニンジャが使うワザはジュー・ジツとカラテ。しゅしゅとスリケンを投げる。カチグミサラリマンになると自宅にオイランドロイドを囲える。などなど。
 ちなみにブラッドレー・ボンドとフィリップ・N・モーゼスなる作家はなかなか手だれのSF作家と思われるが、かような作家の名前は寡聞にして知らない。小生も長年のSFファンであるが勉強不足である。ハンセイ。
 
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