goo

とつぜん対談 第31回 女中さんとの対談

 ここは、とあるお屋敷の勝手口の前です。ここで待てといわれています。きょうの対談相手の職場はこのお屋敷です。なにしろ忙しい方で、ご自分の時間が非常に取りにくい方です。むりをいって時間を割いてもらいました。
 あ、出て来られました。

雫石
 お忙しい中、申しわけありません。

女中
 いえ、今はちょっと手がすいてるの。3時になると、買物に行って、夕食のしたくをしなくちゃならないから、それまでだったらお相手したげるわ。

雫石
 このお屋敷のお手伝いさんになって、何年ですか。

女中
 あの、いっておきますけれど、私、お手伝いさんではありません。私は女中です。

雫石 
 え、女中という言葉は 差別的なニュアンスがあるとかで、最近は使いませんけど。

女中
 なにが差別なのよ。私は女中です。プロの女中です。女中でいけないのなら、私はなんなのよ。

雫石
 だから、家政婦とか、お手伝いさんとか、ハウスキーパーとか。

女中
 それらが女中とどう違うの。やってる仕事は女中の仕事じゃない。そんなの言葉のいい替えよ。そのうち、家政婦、お手伝いもダメとなるわ。そして新しい言葉を創るの。その言葉もダメになるわ。

雫石
 昔、女中という仕事が軽く見られていたころの名残でしょう。

女中
 少なくとも、私は軽く見られるような仕事はしていないつもりよ。プロの女中として、お金をもらっている以上、私は女中の仕事に誇りを持ってるわ。

雫石
 いままでいろんな家でお仕事したのではないですか。

女中
 そうね。私も、この仕事長いからいろんな所で仕事したわ。

雫石
 有名な人の家で仕事したこともありますか。

女中
 そうねえ。俳優の○○とか、プロ野球選手の△△とか、大臣の◇◇とかの家で女中をやったわ。

雫石
 え、△△というと阪神タイガースの△△ですか。

女中
 そうよ。

雫石
 私、阪神ファンなんです。△△は家ではどんなんですか。奥さんはどんな人ですか。

女中
 バカね。あんた。そんなこと女中の私がいえますか。職業上得た他人のプライバシーをぺらぺらしゃべるような女と思ったの、私を。

雫石
 すみません。でも、週刊誌なんか見ると。

女中
 確かに、自分が仕事してた家庭の秘密を週刊誌やテレビのワイドショーにぺらぺらしゃべる女中がいるね。あんなの女中の風上にもおけないクズよ。プロの女中は絶対にあんなことしないわ。

雫石
 あなたは本物のプロですね。

女中
 お金もらって仕事してるんだからあたり前よ。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )