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パイナップルARMY


工藤かずや+浦沢直樹          小学館

 うう、面白い。この漫画、私のツボにはまってしまった。私は、SF者でありながら、冒険小説も大好きだ。「男のロマン」なんて、口にだしていうのも、こっぱずかしい言葉が好きなんだから困ったもんだ。
 この漫画の主人公はジェド・豪士。男性、30代後半、日系人。元アメリカ海兵隊員でベトナム戦争の従軍経験あり。ベトナム後、傭兵となり中南米、アフリカなどを転戦。傭兵引退後戦闘インストラクターとなる。
 豪士は自分では戦わない。あくまでインストラクターである。必要があって敵と戦わなければならない素人に戦闘を教える。銃器、格闘技、爆弾処理、そのようなモノと無縁であった市井の人に、訓練を施し、戦闘のプロと戦うすべを教える。それが豪士の仕事だ。
 豪士は主人公とはいいつつも、実質は狂言回しといってもいい。物語のテーマを具現化するのが主人公であると定義するのなら、この漫画の主人公は豪士に戦闘のレクチャーを依頼する依頼者だろう。本作は連作短編集だから、エピソードごとにいろんな依頼者が登場する。
 女性の依頼者もいるが、ほとんどが男性の依頼者だ。実にいろいろな男が登場する。男の図鑑ともいうべき漫画である。男の沽券、男の矜持、男の嫉妬、男の未練、男の野望、男のけじめ、男の義務、男の夢。男たちはそれらのものを、守るため/捨てるため/拾うため、戦う。
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