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アホの壁


筒井康隆        新潮社

 筒井さんも歳とったな。すっかり丸くなってしまった。昔の筒井さんのエッセイ「欠陥大百科」「暗黒世界のオデッセイ」などを期待して読むとがっかりする。すっかり毒が抜けてしまった。
「人はなぜアホなことを言うか」
「人はなぜアホなことをするのか」
「人はなぜアホな喧嘩をするのか」
「人はなぜアホな計画を立てるか」
「人はなぜアホな戦争をするのか」
 これが各章のタイトルであるが、さすがにアホを否定をしていない。ところが、アホ=劣ったモノ、というあたり前の価値観がちらちらと垣間見える。筒井康隆はかっては価値観破壊者であった。世に認められている価値のあるモノ、エライモノをブチ壊して、筒井独特の価値、エライを創出していた。
 だから、本書も、アホをアホという1つの価値として設定して、アホ文化アホ文明アホ宇宙をでっちあげることぐらいはして欲しかった。筒井康隆75歳。さすがにそこまでエネルギーはないか。
 筒井ファンが読むと失望するかも知れないが、普通のアホ論として読むと面白い。
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