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アホの壁


筒井康隆        新潮社

 筒井さんも歳とったな。すっかり丸くなってしまった。昔の筒井さんのエッセイ「欠陥大百科」「暗黒世界のオデッセイ」などを期待して読むとがっかりする。すっかり毒が抜けてしまった。
「人はなぜアホなことを言うか」
「人はなぜアホなことをするのか」
「人はなぜアホな喧嘩をするのか」
「人はなぜアホな計画を立てるか」
「人はなぜアホな戦争をするのか」
 これが各章のタイトルであるが、さすがにアホを否定をしていない。ところが、アホ=劣ったモノ、というあたり前の価値観がちらちらと垣間見える。筒井康隆はかっては価値観破壊者であった。世に認められている価値のあるモノ、エライモノをブチ壊して、筒井独特の価値、エライを創出していた。
 だから、本書も、アホをアホという1つの価値として設定して、アホ文化アホ文明アホ宇宙をでっちあげることぐらいはして欲しかった。筒井康隆75歳。さすがにそこまでエネルギーはないか。
 筒井ファンが読むと失望するかも知れないが、普通のアホ論として読むと面白い。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (減二)
2010-12-22 22:30:05
筒井先生のSFの激しく面白い時期に恵まれて、筒井先生が面白い時期以降、世の中に、ご失望なさっているのかと思います(勝手な想像ですが)。現実は酷いです。せめて、雫石様のブログをはじめ、面白い世界があっても良いと思っています。SFは現実が無いようで楽しいです。
家のエンジニアのパパ熟睡中。
 
 
 
減二さん (雫石鉄也)
2010-12-23 08:56:03
昔の、筒井さんは面白かったですね。
わたしの場合、現実はつらい所もありますが、その中でも、楽しみを見つけております。本を読む。映画を観る。落語を聞く。タイガースを応援する。楽しいこともそれなりにあります。
SFは、現実がないSFもありますが、しっかり現実に即したSFもあります。
 
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