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大魔神


監督 安田公義
出演 高田美和、青山良彦、藤巻潤、五味龍太郎

 特撮映画というと、東宝、円谷で、現代劇を思い浮かべるムキも多いだろう。この映画は大映で、時代劇。珍しいといえば珍しい特撮映画だ。大映の特撮映画というと「ガメラ」シリーズがあるが、小生はこの「大魔神」の方が好きだ。日本の特撮映画を1本選べといわれたら、東宝の「ゴジラ」第1作か、この「大魔神」か大いに迷う。この映画、それほどの傑作だと評価する。
 戦国時代、善政をしいていた領主を下克上で倒した、家老が新領主に。新領主は圧制をしく。領民は塗炭の苦しみ。前領主の遺児の兄妹と忠義の家臣は生き延びていて、民を思い、お家再興を計っていた。ところが捕らえられ処刑されることになる。
 遺児の姫が、お山の神様に祈ると、埴輪の武人像が大魔神「アラカツマ」に変身、新領主たちを滅ぼす。
 ヨーロッパの「ゴーレム伝説」に材を取ったストーリーは、このように単純で勧善懲悪。「大魔神」シリーズは3作あるが、3作とも同じようなストーリー。3作もみる必要はない。第1作だけ観れば充分。この映画はストーリーを楽しむ映画ではない。
「大魔神」の造形を楽しむ映画である。お姫様のお祈りで、石造りの武人像が、山を割って出現。腕を顔の前で交差させると、無表情な埴輪の顔が、青い、憤怒の表情の大魔神「アラカツマ」に変身。後に仮面ライダー等での特撮の変身シーン数あれど、この変身シーンに優る変身シーンはないだろう。
 この大魔神の顔がいい。アジア人でなし、ヨーロッパ人でなし、カーク・ダグラスが怒ったらこんな顔になるだろうか。まず、恐ろしい。威厳がある。そして少しだけ悲しそう。
 大魔神は、お山から城下に飛来して、暴れまわる。城を破壊し、領主を惨殺する。あたかも人の感情を理解していないよう。でも、処刑されかけた前領主の若君と家来を助けて、今の領主を殺害するから、だれが悪人でだれが善人かは理解しているようだ。
 大魔神はゴジラのように巨大ではない。人の大きさと比べると、身長10メートルもないだろう。この大きさが非常にリアルで、戦国時代の建物とつりあいが取れた大きさ。砂煙を巻き上げながら、地響きを立て、ゆっくりと人々を追う大魔神は大迫力だ。ゴジラやガメラも人智を越えた、荒ぶる神の要素を持ってはいたが、元来は生き物である。ところ大魔神は荒ぶる神そのもの。生き物の要素は全くない。
 第1作ゴジラは、芹沢博士のオキシジェン・デストロイヤーで倒れたが、大魔神は人間に倒せない。大魔神は神だから、祈りによってしか想いを伝えられない。大魔神の怒りを鎮めたのは、お姫様の涙。大魔神は乙女の祈りで目覚め、乙女の涙で鎮まる。神だからだ、
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