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大脱走

監督 ジョン・スタージェス
出演 スティーブ・マックィーン、チャールス・ブロンソン、ジェームス・
コバーン、リチャード・アッテンボロー

 ものすごく久しぶりにこの映画を映画館で観る。娯楽映画のお手本のよう
な映画だ。明るく楽しい登場人物。スリルとスピード。ハラハラドキドキ。
観客を「どうするどうする」と、思わせておいて、「こうするこうする」とぐ
んぐん引っ張っていく。映画が始まってから終わるまで片時も観客を現実に
戻さない。優れた娯楽作品は短い言葉で説明できるというが、この映画は捕虜
収容所から捕虜たちが脱走する話。
会話が面白い。脱走用のトンネル掘りがばれそうになった。ブロンソンがあ
わててシャワーを浴びてごまかす。横でコバーンが見ている。ドイツ兵が聞く。
「何をしている」
「見りゃわかるだろ。シャワー浴びてんだ」
「お前はなにしてる」
「水難救助だ」
 話のテンポがよい。
「いつ出る」
「今夜だ」
「いつやる」
「今日だ」
 すべてこの調子。何日後なんてこといって、事を起こすまでダラダラと時間をひっぱらない。実に軽快に映画は進んでいく。例えばジェームス・ガーナーの調達屋。脱出用の機材の調達を担当しているのだが、無理難題を顔色一つ変えず平然とこなしていく。カメラを口先だけで調達したり。この物資の調達だけでも充分に面白い。もちろんメインのトンネル掘りの面白さ。そしてマックィーンが仕事と趣味を両立させたバイクのアクション。娯楽映画の見所のデパートみたいな作品だ。
 これは実話とのこと。250人脱出する予定が76人しか脱出できず、50人が射殺された。他は収容所に逆戻り。結局3人しか逃げおおせなかった。だからこの作戦は失敗といえる。しかし逃げた捕虜の捜索にドイツ軍は手をとられ、それがノルマンジー上陸作戦の成功の遠因になったという。






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5月23日(水) 若冲の曼荼羅

 毎日放送の「若沖降臨」を観た。民放なので少々演出過多なところが気になるがなかなか良い番組だった。若沖の絵を真正面からバーンと見せてくれて若沖独特の迫力を存分に楽しめた。
 この番組は京都の相国寺で開催されている「若沖展」にリンクして企画された番組。伊藤若沖は33幅の絵を相国寺に寄贈した。すなわち「釈迦三尊像」と「動植綵絵」の33幅。当初は「釈迦三尊像」の周囲を「動植綵絵」が取り囲むように配列されていたらしい。
 明治期廃仏毀釈で寺が危機にさらされた。そこで一連の「動植綵絵」は宮内庁に移管された。その後「動植綵絵」はずうっと宮内庁で保管されていて、このたび120年ぶりに里帰り。「釈迦三尊像」と再会をした。と、いうわけで今回の展覧会となったわけ。
「動植綵絵」はいろんな動物や植物を極めて精密にリアルに描いてあって若沖の独断場ともいえる作品群だ。有名な鶏の絵もこのシリーズの作品。非常にリアルに正確に描いてあるので小生は図鑑の類のものだと思っていた。しかしたんなる図鑑にしては異様な迫力だし、若沖独特の仕掛けが各所に施してある。はて、これはどう解釈したらいいものかと思っていた。
 それがこの番組を観て氷解した。「釈迦三尊像」と「動植綵絵」はいっしょにしてこそ意味があるのだ。つまり釈迦の周りを様々な生き物が取り囲んでいる。若沖は熱心な仏教徒だった。ようするに「釈迦三尊像」と「動植綵絵」は曼荼羅を構成しているのだ。若沖の意図した通りに並べると壮大な仏教的世界がそこに広がる。つまり「動植綵絵」は単なる図鑑ではなく宗教的なコンセプトを持った絵画だったのだ。小生はそこに手塚治虫の「火の鳥」のテーマとあい通じる「生命と宇宙」を感じた。ぜひ実物を観に行きたいものだ。

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