雫石鉄也の
とつぜんブログ
独白するユニバーサル横メルカトル
平山夢明 光文社
エロはないが、グロ、サドのオンパレード。全部で八編の短編を収録した短編集だが、いずれも人間の持つ残虐性がこってりと描かれている。八編のうち「Ωの聖餐」が一番だろう。語り手は飲酒運転で死亡事故を起こした過去を持つ元数学者。この男はいまはヤクザの組にいる。組での彼の仕事は組長がつぶれたサーカス団から連れてきた大食い男の世話をすること。体重400キロを越すこの大食い男オメガの食料は人肉。組員が殺したり、処理を請け負った死体をオメガはほぼ三日で食う。なにせ超肥大漢。うんこもしっこもゲロもすさまじい量。この手の話の苦手な人はその描写だけでまいってしまうかも。しかし、ここまで凄まじいと、ある種「聖」を感じる。
オメガは怪物じみた外見に似合わず高い知性を有している。なぜか?その理由を知った語り手は、数学を志したものとしての止むに止まれぬ欲望を押さえきれずある計画を実行する。
他の作品では「C10H14N2と少年」が人間の持つ絶望的な残酷性を「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」が底知れぬサドとマゾを描いていた。たしかにモノを食べながら読む作品集ではないが、なかなか読ませる短編集であった。万人にお勧めできないが、グロ、サドは表面だけで中身は人間の本質が描かれている傑作短編集だ。
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5月14日(月) 神戸市立図書館の関係者の方々へ
ときどき図書館を利用する。他の市立図書館は知らないが、神戸市立の図書館では、本の貸し出し返却の事務処理効率化のためバーコードシステムを導入している。それは結構なことだがバーコードの添付位置が問題。ご覧のように本の表紙に貼り付けてある。
本の表紙は本の顔である。これでは顔の真ん中にバンソウコウをベタッと貼るに等しい。本の表紙は装丁者にとっては大切な表現の場。非常に魅力的な装丁の本もたくさんある。平賀甲賀さんの装丁なんて装丁目当てに本を買ったことがあるぐらいだ。この行為はそれをぶち壊している。展示する絵画の真ん中にガムテープを貼る美術館員がいるだろうか。小生が装丁者なら即刻抗議して直ちにやめてもらうが。図書館利用者は本好きの人が多いに違いない。どうして誰も問題にしなかったか不思議だ。
このブログを神戸市立の図書館の関係者がご覧ならば、この件に関してぜひともご再考を強く願いたい。
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