All Photos by Chishima,J.
(ヒシクイをはじめとしたガン類の乱舞 以下すべて 2013年3月 北海道十勝川下流域)
先週の土曜日(23日)は、NPO法人日本野鳥の会十勝支部と東十勝ロングトレイル協議会の共催による十勝川下流天然記念物鳥類観察会にガイドとして参加させていただきました。十勝川下流域には春と秋の年に2回、マガン、ヒシクイ、タンチョウ、オジロワシ、オオワシと天然記念物の鳥5種が揃い、更に近年ではハクガンやシジュウカラガンも観察できるので、日帰りでそれらを見てしまおうという贅沢なバスツアーです。
午前9時前に帯広を出発し、道中ヒシクイやオジロワシを見ながら十勝川沿いに下ります。いよいよ下流域に入るとまずは、旧河川跡の湿地に多くのヒシクイ(亜種オオヒシクイ)やオオハクチョウがごそっと集まっていたのを皮切りにタンチョウやガン類も次々姿を現します。抜けるような青空を背に飛ぶそれらの水鳥は、いつもに増して美しく見えます。これだけの大型水鳥や猛禽類の生息環境であるにも関わらず、開拓の過程で湿地の98%が失われ、食糧生産の拠点となった農地では食害や踏圧といった人間との軋轢も生じていることを紹介しながら進んでゆくと、昨秋刈り残した畑に無数のガン類が集まっており、ハクガンやシジュウカラガンも見ることができました。特にシジュウカラガンは、30羽近い群れがすぐ頭上を飛び、一同の興奮も最高潮に達した瞬間でした。
刈り残したデントコーン畑に群がるオオハクチョウとヒシクイ
浦幌市街で昼食の後は再度海岸に戻り、ハヤブサやクロガモを観察していると、ゼニガタアザラシ、ゴマフアザラシ、ネズミイルカと海獣類が3種も次々と姿を現してくれ、十勝の海にも豊かな動物たちの世界のあることを、午前中に紹介させていただいた拙著「十勝の海の動物たち」とともに実感いただけたのではないかと思います。
その後は河口近くの氷と開水面の入り混じったエリアで、多数のカワアイサに加えてオオワシも無事観察でき、天然記念物5種+ハクガンとシジュウカラガンを堪能して帰途に就きました。
十勝は、道東や道央圏に比べると探鳥地としてはマイナーですが、季節によっては世界でもここだけの鳥たちを満喫できます。一方でそれらが害鳥視されている側面もあり、灌漑や湿地の水位低下により生息環境の悪化も進んでいるので、鳥たちの存在によってより豊かな地域となることを目指して今後も活動してゆきたいと思います。
望遠鏡で水鳥を観察する参加者
(2013年3月25日 千嶋 淳)