鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

実は別モノ?

2009-03-03 13:51:54 | 鳥・冬
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All Photos by Chishima,J.
シメ 2008年2月 北海道帯広市)


 少し前のことになるが、私も参加しているあるメーリングリストで、「シメは図鑑には夏鳥と書いてあるのに秋以降も群れでいる。温暖化で冬も過ごすようになったのだろうか?」といった議論があった。確かに多くの図鑑には、北海道あるいは北日本では夏鳥と書いてあり、それが真冬に群れでいるのだから疑問に思うのも無理はない。昔の状況はわからないが、私が北海道にやって来た15年前には、シメは帯広の市街地や近郊でかなりの数が冬も見られていた。図鑑から「北海道では夏鳥」の知識を叩き込まれていたから、やはり驚いたものである。
 これら真冬のシメは、付近で繁殖したものが冬期でも餌が取れるなどの理由でとどまっているのだろうか?どうやら、それだけではないことを窺わせるニュースが、同じ頃新聞に掲載された。それは、カムチャツカで足環を付けられたシメが、年明けの1月6日に道南の七飯町で死亡し、回収されたというものであった。このことは、冬の北海道にはカムチャツカなど、より北方から飛来するシメが存在することを示唆している。足輪の回収はまだ一例なので、「北方由来シメ」が北海道で越冬しているシメの中に占める割合はわからない。もしかしたら夏に北海道で繁殖した個体は概ね本州以南に渡ってしまい、「北方由来シメ」ばかりなのかもしれないし、逆に足環の個体が例外的な事例で、実は夏から引き続いて越冬している個体が主流かもしれない。あるいは両者は半々くらいで混合して冬を送っているのかもしれない。


街路樹のナナカマドを食べるシメ
2008年1月 北海道帯広市
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 同様に、冬に北方由来の個体群と思われるものがやって来るのがカワラヒワである。繁殖を終え、幼鳥も加わって数を増したカワラヒワの群れが、晩夏から初秋にかけてその名の通り河原や、農耕地などで目立つようになり、10月半ばくらいまではその状態が続く。冬色が濃くなる10月末までにはそれらはほぼ姿を消し、野外に出てもカワラヒワに出会わない日々が続く。ところが、根雪も降り積もった12月末から1月、これから冬本番を迎えようという時期になって、再びカワラヒワが数を増す。渡来数は年によって差があるが、多い年には数十~百羽以上の群れが海岸や雪の少ない原野など、所々で見られる。この季節のカワラヒワは大型で、雌雄ともに三列風切外弁の白色が顕著な、亜種オオカワラヒワの特徴を有したものが多い。おそらくカムチャツカや北千島など、より北方の繁殖地から寒さや降雪に追われるようにして北海道まで南下してきたのだろう。
 カワラヒワやシメというと、赤や黄色が鮮やかなアトリ科の中にあっては地味な方で、北海道では普通の小鳥であるため、バードウオッチャーにもさほど見向きされない存在である。しかし、一年中いるように見えて夏と冬では実は別モノである可能性があると思うと、また違った魅力を見出せるかもしれない。

カワラヒワ(亜種オオカワラヒワ)2点
2009年2月 北海道十勝郡浦幌町

数羽が雪の解けた路肩で採餌中。手前はオスで緑、黄、茶色のコントラストが美しい。
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メス。
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(2009年3月3日   千嶋 淳)