鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

十勝川下流・河跡湖の鳥たち-①タンチョウ

2005-06-22 09:37:00 | 水鳥(カモ・海鳥以外)
 大雪山系に源を発した<ahref="http://www.mlit.go.jp/river/jiten/nihon_kawa/data/hokaido/tokachigawa/tokachigawa.html">十勝川は、池田町で利別川と合流するあたりから川幅も太く流れも緩やかで、大河の様相を呈するようになる。かつて大河は大きく蛇行し、その氾濫原には広大な湿原や湖沼が広がっていた。そこには季節になれば夥しい数の水鳥類が飛来しただろうことは想像に難くない。現在、治水や土地利用の関係から川は改修で直線化され、湿地は大部分が農地へと転用された。しかし、農耕地などの中に申し訳程度に小さな沼がいくつも残っているのを、地図上でも見ることができる。
農耕地の中の河跡湖
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Photo by Chishima,J.
そのような沼の多くは河跡湖(かせきこ)と呼ばれる、昔の川の流れや湿地の名残である。河跡湖は、広漠な湿地を失った春秋のガン・カモ・ハクチョウ類をはじめとして多くの水鳥類が採餌や休息、繁殖などのために訪れ、私たちの目を楽しませてくれる。
多くの生物をはぐくむ残された沼
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Photo by Chishima,J.


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 河跡湖に飛来する鳥類の中でも、道東らしいものとしてタンチョウとアカエリカイツブリを挙げることができる。
ひときわひかる存在感
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Photo by Chishima,J.
タンチョウは狩猟や生息地の消失などによって、一時期は釧路湿原の一部に30~40羽程度が生息するまでに減少したが、冬期の給餌を主とする地元の努力で個体数は回復し、2005年にはついに1000羽を超えたと推定された。十勝地方では元々湧洞沼や生花苗沼など海岸部の海跡湖を中心に生息していたようだが、個体数回復にともなって十勝川沿いにやや内陸部にも入ってくるようになり、河跡湖は繁殖や採餌にとって重要な空間を提供している。河跡湖の多くは農耕地の中にあるため、どうしても採餌や移動の際には農耕地を利用することになり、農業との軋轢も一部で懸念が出始めている。
デントコーン畑(未作付け)に出現したタンチョウ
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Photo by Chishima,J.
また、これは十勝に限ったことではないが生息地、特に繁殖地はかなり飽和を来たしており、ツルをもっと分散させる、もしくはそのための環境を創造する努力が必要と思われる。個体数は順調に回復してきたが、タンチョウとの共存は多くの課題とともに新しい局面を迎えようとしている。
(2005年6月18日 千嶋 淳)