平ねぎ数理工学研究所ブログ

意志は固く頭は柔らかく

神谷八段の文章

2018-03-17 20:25:55 | 将棋

春は名のみの風の寒さや~('O)と歌う間もなく3月も残りわずかとなりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今日は神谷八段の文章を紹介しましょう。
神谷八段といえば、先日のC2組最終戦で、相手の増田五段の玉が詰んでいたのにうっかり投了してしまいました。
あの局面では、何はともあれひとまず金を取りますよね。普通はそれから考えます。
私くらいの棋力でも、7八銀、6七金は読めますよ。
プロ棋士に見えないはずはないので、よほど疲れていたのでしょう。
還暦近くなると午前2時は起きているだけできついです。千日手指し直し局なら尚更です。
人間ですから仕方ないですね。機械じゃないので。
さて、問題の文章ですが、最初に読んだとき意味がよくわかりませんでした。
神谷八段と加藤九段の対局なのに、なぜ神谷八段の盤と加藤九段の盤が二つあるのだろう
何度も読み直してようやく理解できました。
自分の盤が真ん中にあるのに文句を言うはずがないと勝手に考えていました。
プロ棋士は凡人には思いもよらないことを思いつくのですね。だから強いんだ。


くじ引きも面白いです。
それから、神谷八段の文章は達意の名文ですね。
こういう文章はなかなか真似ができないです。

追記 

『敗因は投了の図

追記 2018.03.22

番を動かす癖は昔から

将棋世界1999年3月号、真部一男八段(当時)の「将棋論考」より。

若手との対戦が圧倒的に多くなっている現在、同世代との一局は何かしら気持ちに安心感というか安定感のようなものを感じる。
過去30年ほどの様々な思い出が、ふと蘇るせいなのかもしれない。
1月14日、竜王戦で中原永世十段との手合がついた。
約1年半ぶりの対戦であり、前回もやはり竜王戦だったが、これは敗者復活戦で今回は本戦である。

(中略)

中原51歳、真部46歳、これくらいの年齢になれば、もう同世代といっても許してもらえるだろう。
同世代とはいっても中原は名人位15期既に十六世名人の資格を持つ大棋士である。
当日私は緊張と期待を感じながら将棋会館に向かった。
生憎、交通事情が悪く対局室に入った時は定刻を3分過ぎていた。
非礼を詫びて着座した。ここまでは何事もないありふれた対局前のひとコマである。
対局室は三間ぶち抜いた大広間の最上席、高雄の間でありその上座に中原が座り、隣に加藤一二三九段が井上慶太八段と対座している。
入室した際に、視覚的にはほんの一瞬だけ加藤が部屋の中央近くに位置しているようにも感じられたが、全くといってよいほど気にも留めなかった。
振り駒で中原の先手となり、私は遅刻時間の3倍を引かれて対局開始である。
中原の▲2六歩で始まり私は指し慣れた四間飛車を採用した。
異変はここから始まった。7手目急に中原が考え込んでしまったのだ。
何ということもない出だしであり、しかも近年中原は早指しだ。
何を考えているのか見当もつかない。
中原流相掛かりで知られるように、中原は作戦家であり、近頃は四間飛車も多用して、独特の左穴熊対策も編み出している。
よし何でもやってこい、こちらも負けていないぞ!と久々に序盤から気合が乗ってきた。
ところが中原の次の一手は私の棋士生活26年で最も意表を衝くものであった。

やにわに立ち上がった中原は、加藤の方に近寄りながらこういったのだ
「加藤さんやっぱりおかしいよ」続けて「もう少し盤を向こうへ動かして下さい」。
私はびっくりしながらそちらを見れば、確かに部屋の6割ほどの面積を、あちらは占領しているようだ。
加藤にしても意外だったのだろう。無言である。
席に戻った中原は「一日中、気分の悪い状態でいるわけにはいかない」と呟き、
「そっちも大事な将棋だっていうのは分かるけど、こっちだって竜王戦なんだ」。
加藤-井上はA級順位戦である。
「50センチ、50センチでいいから動かしてよ」。
文章では激しい言葉づかいに思われるかもしれないが、あの泰然とした中原の言動だけにどうしたって険悪な感じにはならない。
ただ、あの中原にしての振る舞いだけに、逆に迫力があるともいえる。
そして続いての一手には、私の曲がった腰椎が思わず伸び切った。
「加藤さん喧嘩を売るの、喧嘩を売るんだったらそれでもいいよ」。
大広間は、静まり返った。
大名人のさすがの迫力に、神武以来の天才も苦笑を浮かべながら手を振って
「いやいや、そんな他意はありませんよ」と穏やかに応じて、盤の位置をズラして場は丸く収まった。
遅刻してきた私は知らなかったのだが、この出来事には実は前哨戦があった。
定刻に入室してきた中原は、二つの盤の位置取りが不自然であると直ぐに感じ、そして加藤に少し動かしてくれないかと話したらしい。
ところが加藤は、もう決まっていますからと応じなかったようだ。
その時は中原も、まあ仕方がないかと思いそれ以上主張しなかったのだが、
時間が経つにつれ、次第にやはりこれはおかしいと思い始め、先の行動に及んだのである。
だから遅刻した私の以外の人達は、その前段階を知っていたというわけだ。
事情を知らぬ私だけが仰天したのである。そして盤の配置にも細かく気を配る両巨頭に、将棋に対する強い思いを見せられ、
長く一線で活躍する者と、並棋士との違いをつくづく知らされたものだった。
終局後、中原と話したのだが中原は「あんなことがあったけど僕は加藤さんに何の悪気もないのを知っているし、彼のことを好きなんだよ。
4、5日は変な気分が残るだろうけど、それで後は何でもないんだ」と屈託ない笑顔で述懐していた。
おそらく加藤にしてもそうだろう。英雄は英雄を知るということだ。私にはそういう関係が少し羨ましかった。


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8 コメント

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わからん (高地のアホ)
2018-03-20 20:49:46
私には何度読み返しても意味が分かりません。解説してください。
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高知のアホさん=高知のマホさんでOK? (平ねぎ)
2018-03-20 22:12:34
中央に置かれた盤の対局者は加藤九段と神谷八段です。
隅に追いやられた盤の対局者は「加藤&神谷」以外の二人です。
神谷八段がクレームをつけたので分かりにくくり、さらに、くじ引きをしたので訳が分からなくなったんだと思います。
加藤九段は大変人ですが神谷八段も大変人ですね(たとえ、邪心があったとしても)。
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詰み手順 (平ねぎ)
2018-03-21 11:40:22
△6九飛成、▲同玉、△7八銀打、▲同玉、△6七金打、ここで、▲同玉なら、△5六角打以下短手数で詰む、そこで△6七金打には、▲8八玉と逃げる。
以下、△7九角打、▲9八玉、△9六香打、▲9七銀合、△同香成、▲同桂、△8八金打、▲同銀、△同角成、▲同玉、△7七銀打、▲9八玉、▲8九銀打、▲同玉、△7八金、▲9八玉、△8八金まで23手詰
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天然トボケ (高地のアホ)
2018-03-21 14:21:19
タイトル戦決勝でもない限り、1部屋の対局は2組いるということなのですね。
将棋対局ををよく見慣れている人なら常識的な風景でしょうが、よく知らない人には多分何度読んでもわからないでしょうねえ・・・。
そういえば、加藤一二三プロは対局時にチョコレートを一杯持ってきていてむしゃむしゃ食べながら対局するという奇行があって、対局者の顰蹙を買っていると言う記事はここで読んだのでしょうか?
 これもこの行為だけを紹介されても加藤プロの行為の意味が何のことだかよくわからなかったのですが、脳みそは糖分しか受け付けないということなのだということが後日わかりました。
 チョコレート⇒=ブドウ糖=脳への栄養補給ということなら、糖尿病の低血糖防止液を持参してゴクゴク飲むほうがすぐ効くので時間勝負の対局には適していると思うのですが、そこが加藤プロの天然トボケなんでしょうねえ。
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Unknown (平ねぎ)
2018-03-21 15:16:23
加藤さんは昔から食いしん坊です。
https://www.youtube.com/watch?v=pr4-bgZ7F3U
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反則負け (平ねぎ)
2018-03-21 15:56:52
あの動画ですが、
二つの反則、
(1)行けない場所に行った
(2)2手指し
で、加藤九段の反則負けです。
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加藤九段の待った (平ねぎ)
2018-03-21 16:52:12
https://www.youtube.com/watch?v=Fb0EH2clFbk
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加藤の待ったを恐れた大山 (平ねぎ)
2018-03-21 16:59:43
https://blog.goo.ne.jp/tnnt_1571/e/9e0e3b1749b89129a7d9f224d1597cc7
加藤の手から金をむしり取ったと言われています。
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