企業収益構造の変化と労働分配率:1
国際関係、国際政治の現状は、ますますひどくなるような気配です。トランプ病の蔓延
という人もいますが、それにしても感染力が強いですね。
今回は、頭を切り替え、経営、労使関係につて書くことにしました。
このところ企業収益は比較的高水準を維持し、企業の資本蓄積も進んで自己資本比率は上昇してきています。
しかし賃金はなかなか上がりません。連合の要求はサバを読まない真面目なものですが、それすら達成できていません。
理由はというと、解説はいろいろありますが、1つ、企業の収益構造の変化という問題もあるように思われます。
具体的に言いますと、営業利益率の水準も長期不況脱出で改善を見ましたが、営業収支から当期純利益に至る部分、つまり、「営業以外の収支勘定の改善」が著しいこと、に多くの方は気付いておられると思います。
法人企業製造業の売上高利益率の推移
財務省:法人企業統計年報
ところで上の図を見ていただいても解りますが、リーマンショックで2009年から最低水準に落ち込んだ企業の利益率は、為替レートの正常化とともに2012~14年度以降、大きく回復します。しかし、その中で、最も伸び率が低いのは営業利益率です。
図にはありませんが、この間、法人企業・製造業の売上高はかなり減っています。財務省の法人企業年報によれば、2008年度(リーマンショック前のピーク)の売上高は471兆円で、2018年度は406兆円です。
つまり売上減、利益増なのです。
もちろん合理化、コストカットの成果で営業利益率もリーマンショック 前を何とか回復していますが、経常利益率、課税前利益率、当期純利益率はリーマンショック前をかなり上回っています。
これはどういう事でしょうか。お解りの方も多いと思いますが、現実は、今の日本の製造業は、日々の営業活動とは別の所で利益が増えているという事です。
具体的に言えば、
・ゼロ金利政策や自己資本充実で支払金利が減った
・円安で為替差益などが増えた
・海外進出、海外企業買収などで、利子・配当収入が増えた
・企業減税で税負担が減った
等によるものが大きいという事でしょう。
ここで本題に入ります。
企業は労使の協力と努力で利益を出していると考えられていますが、労使が協力するのは、本業の部分、営業利益の部分が中心です。金利負担減、為替差益、利子配当収入、企業減税などで利益が増えても、それは生産や営業、技術といった労使の努力によるものとはあまり関係ないようです。
近年の日本経済では国民経済レベルでも、GDP(国内総生産)よりGNP(国民総生産≒国民総所得)の方が20兆円(GDPの約4%)ほど大きくなっていますが、これは 第一次諸特収支(海外からの利子・配当収入が主体)に相当する金額です。
海外からの利子・配当など、こうした国内労働によらない利益の増加(すでに進出先の国の労働者に賃金を支払った後の利益の配分)で企業の利益や国民所得が増えた場合、「それは日本の労働者に対する分配(賃金引き上げ)の対象になるか」という問題です。(法人税減税で利益増の場合も似た性格でしょう)
営業活動以外の所で、利益が増えても、賃金引き上げに回らないということになりますと、当然、労働分配率は下がってきます。現状もそんな傾向があるように感じられます。
この問題は、あからさまには議論されていませんが、今後も海外投資収益などの増加は確実ですから、労使もアカデミアも、しっかり議論しておく必要がありそうです。
お読みいただいた皆様方はいかにお考えでしょうか。次回この問題の考え方について取り上げてみたいと思っています。
国際関係、国際政治の現状は、ますますひどくなるような気配です。トランプ病の蔓延
という人もいますが、それにしても感染力が強いですね。
今回は、頭を切り替え、経営、労使関係につて書くことにしました。
このところ企業収益は比較的高水準を維持し、企業の資本蓄積も進んで自己資本比率は上昇してきています。
しかし賃金はなかなか上がりません。連合の要求はサバを読まない真面目なものですが、それすら達成できていません。
理由はというと、解説はいろいろありますが、1つ、企業の収益構造の変化という問題もあるように思われます。
具体的に言いますと、営業利益率の水準も長期不況脱出で改善を見ましたが、営業収支から当期純利益に至る部分、つまり、「営業以外の収支勘定の改善」が著しいこと、に多くの方は気付いておられると思います。
法人企業製造業の売上高利益率の推移
財務省:法人企業統計年報
ところで上の図を見ていただいても解りますが、リーマンショックで2009年から最低水準に落ち込んだ企業の利益率は、為替レートの正常化とともに2012~14年度以降、大きく回復します。しかし、その中で、最も伸び率が低いのは営業利益率です。
図にはありませんが、この間、法人企業・製造業の売上高はかなり減っています。財務省の法人企業年報によれば、2008年度(リーマンショック前のピーク)の売上高は471兆円で、2018年度は406兆円です。
つまり売上減、利益増なのです。
もちろん合理化、コストカットの成果で営業利益率もリーマンショック 前を何とか回復していますが、経常利益率、課税前利益率、当期純利益率はリーマンショック前をかなり上回っています。
これはどういう事でしょうか。お解りの方も多いと思いますが、現実は、今の日本の製造業は、日々の営業活動とは別の所で利益が増えているという事です。
具体的に言えば、
・ゼロ金利政策や自己資本充実で支払金利が減った
・円安で為替差益などが増えた
・海外進出、海外企業買収などで、利子・配当収入が増えた
・企業減税で税負担が減った
等によるものが大きいという事でしょう。
ここで本題に入ります。
企業は労使の協力と努力で利益を出していると考えられていますが、労使が協力するのは、本業の部分、営業利益の部分が中心です。金利負担減、為替差益、利子配当収入、企業減税などで利益が増えても、それは生産や営業、技術といった労使の努力によるものとはあまり関係ないようです。
近年の日本経済では国民経済レベルでも、GDP(国内総生産)よりGNP(国民総生産≒国民総所得)の方が20兆円(GDPの約4%)ほど大きくなっていますが、これは 第一次諸特収支(海外からの利子・配当収入が主体)に相当する金額です。
海外からの利子・配当など、こうした国内労働によらない利益の増加(すでに進出先の国の労働者に賃金を支払った後の利益の配分)で企業の利益や国民所得が増えた場合、「それは日本の労働者に対する分配(賃金引き上げ)の対象になるか」という問題です。(法人税減税で利益増の場合も似た性格でしょう)
営業活動以外の所で、利益が増えても、賃金引き上げに回らないということになりますと、当然、労働分配率は下がってきます。現状もそんな傾向があるように感じられます。
この問題は、あからさまには議論されていませんが、今後も海外投資収益などの増加は確実ですから、労使もアカデミアも、しっかり議論しておく必要がありそうです。
お読みいただいた皆様方はいかにお考えでしょうか。次回この問題の考え方について取り上げてみたいと思っています。