万年経常赤字のアメリカの国際経済戦略
1970年代に入り、覇権国アメリカは経済力の相対的低下を変動相場制で切り抜けようとしたのですが、経常赤字は続きます。国の赤字も家計の赤字と同じように、ファイナンスしなければ(資金繰りをつけなければ)なりません。
赤字の主因は貿易収支で、問題は貿易赤字の解消ですが、アメリカの消費意欲は旺盛で、国内総支出の方が国内総生産を上回るので、経常赤字は消えません。
変動相場制ですから、ドルを大幅に切り下げれば赤字解消になるはずですが、基軸通貨国の面目にかけてもそれは出来ないでしょう。
当時の日本は、高度成長期で、1968年にはGDPで西ドイツを抜き、アメリカについで世界二位になり、1973年からの2度の石油危機も、石油のほぼ全量を輸入に頼りながら、欧米に先駆けて克服、アメリカ経済を追い上げ、アメリカの貿易赤字の元凶と見られていたようです。
そこでアメリカは、ドル切り下げはなく、円を切り上げさせて日本の競争力を削ぎ、日本の追い上げをストップさせ、覇権国の権威を守ろうと策したのでしょう。
それは具体的には1985年のG5の場で「 プラザ合意」による円切り上げ要請でした。
日本は数々の恩義あるアメリカの要請を快諾しています。さらにアメリカの内需拡大すべしという助言もあって、真面目な日本は、大幅な金融緩和をやり、「バブル経済」を招き、その「崩壊」も経験し、30年近いゼロ成長時代を苦しんで、アメリカの日本追い落とし策は大成功という事になりました。
そして次に、日本に代わってアメリカ経済を追い上げたのは中国でした。中国は共産党独裁の国で、社会的市場経済の原則を掲げ、経済体制の異なる国です。
そして、アメリカは勿論、世界中からの投資を受け入れ、急速に生産力を強め、2010年には日本を抜いてGDPはアメリカに次ぐ2位に躍進、世界の工場として、日本に代わり対米輸出のトップになり、アメリカの赤字を増やすことになります。
中国は日本と違い覇権国を目指す可能性も高いと思われます。そして、アメリカは、対日政策の成功の二匹目のドジョウを狙い、中国に「人民元切り上げ」を迫ります。
しかし、中国は、すでに日本の失敗を良く学んでおり、「人民元の価値はアメリカではなく中国が決める」と突っぱねます。
一方アメリカはマネー資本主義という新たな戦略も考えていました。貿易が赤字ならば、その赤字をマネーゲームで埋めればよい、という理論です。
アメリカは金融工学という分野を打ち立て、その分野でノーベル賞を受ける学者も生み出し、日本でも、理工系の製造業離れ(金融業界志向)といった状況が生まれています。
この理論を生かしたのが、当時「なぜアメリカ経済は(経常赤字でも)繁栄を続けるのか」といわれた「グリーンスパン・マジック」だったようです。
この戦略の現実は、サブプライムローンという低信用債権を担保に証券を発行、金融工学で飾り付けてAAA格付けして世界に売り捌くといったことも含んでいました。
結果的に、サブプライムローンか焦げ付き、AAA格付けの証券は暴落、それを買った世界中の金融機関やその他法人個人の財産に大穴が空き、世界金融恐慌かといわれたリーマンショックが2008年に起きたわけです。
結果、アメリカの経済価値の拠り所と見られていたアメリカの証券の信用は失われ、アメリカの致命傷になったようです。
今、アメリカは、また二匹目のドジョウを狙って「 CLO」という証券を出していますが、アメリカ国内以外でまともに買っているのは、日本の金融機関ぐらいではないでしょうか。
こうして、今に至る万年経常赤字を抱えて、アメリカは、今、トランプ政権になっている訳です。
もうトランプ政権には、経常赤字を改善するためのまともな手段というのは経済引き締めをして、国内需要をGDPの範囲にすることしか残されていないように見えます。
しかしそれをやればアメリカは大不況になり、世界もその影響を受けることが当然予想されます。
トランプさんも悪い時に大統領になったのかもしれませんが、何か八方塞がりの中で、八方破れの政策で無理を重ねているように感じられます。
さて、これからトランプさんは何をやろうというのでしょうか。そしてトランプさんの来年の選挙はどうなるのでしょうか。
次回もう少し考えてみたいと思います。
1970年代に入り、覇権国アメリカは経済力の相対的低下を変動相場制で切り抜けようとしたのですが、経常赤字は続きます。国の赤字も家計の赤字と同じように、ファイナンスしなければ(資金繰りをつけなければ)なりません。
赤字の主因は貿易収支で、問題は貿易赤字の解消ですが、アメリカの消費意欲は旺盛で、国内総支出の方が国内総生産を上回るので、経常赤字は消えません。
変動相場制ですから、ドルを大幅に切り下げれば赤字解消になるはずですが、基軸通貨国の面目にかけてもそれは出来ないでしょう。
当時の日本は、高度成長期で、1968年にはGDPで西ドイツを抜き、アメリカについで世界二位になり、1973年からの2度の石油危機も、石油のほぼ全量を輸入に頼りながら、欧米に先駆けて克服、アメリカ経済を追い上げ、アメリカの貿易赤字の元凶と見られていたようです。
そこでアメリカは、ドル切り下げはなく、円を切り上げさせて日本の競争力を削ぎ、日本の追い上げをストップさせ、覇権国の権威を守ろうと策したのでしょう。
それは具体的には1985年のG5の場で「 プラザ合意」による円切り上げ要請でした。
日本は数々の恩義あるアメリカの要請を快諾しています。さらにアメリカの内需拡大すべしという助言もあって、真面目な日本は、大幅な金融緩和をやり、「バブル経済」を招き、その「崩壊」も経験し、30年近いゼロ成長時代を苦しんで、アメリカの日本追い落とし策は大成功という事になりました。
そして次に、日本に代わってアメリカ経済を追い上げたのは中国でした。中国は共産党独裁の国で、社会的市場経済の原則を掲げ、経済体制の異なる国です。
そして、アメリカは勿論、世界中からの投資を受け入れ、急速に生産力を強め、2010年には日本を抜いてGDPはアメリカに次ぐ2位に躍進、世界の工場として、日本に代わり対米輸出のトップになり、アメリカの赤字を増やすことになります。
中国は日本と違い覇権国を目指す可能性も高いと思われます。そして、アメリカは、対日政策の成功の二匹目のドジョウを狙い、中国に「人民元切り上げ」を迫ります。
しかし、中国は、すでに日本の失敗を良く学んでおり、「人民元の価値はアメリカではなく中国が決める」と突っぱねます。
一方アメリカはマネー資本主義という新たな戦略も考えていました。貿易が赤字ならば、その赤字をマネーゲームで埋めればよい、という理論です。
アメリカは金融工学という分野を打ち立て、その分野でノーベル賞を受ける学者も生み出し、日本でも、理工系の製造業離れ(金融業界志向)といった状況が生まれています。
この理論を生かしたのが、当時「なぜアメリカ経済は(経常赤字でも)繁栄を続けるのか」といわれた「グリーンスパン・マジック」だったようです。
この戦略の現実は、サブプライムローンという低信用債権を担保に証券を発行、金融工学で飾り付けてAAA格付けして世界に売り捌くといったことも含んでいました。
結果的に、サブプライムローンか焦げ付き、AAA格付けの証券は暴落、それを買った世界中の金融機関やその他法人個人の財産に大穴が空き、世界金融恐慌かといわれたリーマンショックが2008年に起きたわけです。
結果、アメリカの経済価値の拠り所と見られていたアメリカの証券の信用は失われ、アメリカの致命傷になったようです。
今、アメリカは、また二匹目のドジョウを狙って「 CLO」という証券を出していますが、アメリカ国内以外でまともに買っているのは、日本の金融機関ぐらいではないでしょうか。
こうして、今に至る万年経常赤字を抱えて、アメリカは、今、トランプ政権になっている訳です。
もうトランプ政権には、経常赤字を改善するためのまともな手段というのは経済引き締めをして、国内需要をGDPの範囲にすることしか残されていないように見えます。
しかしそれをやればアメリカは大不況になり、世界もその影響を受けることが当然予想されます。
トランプさんも悪い時に大統領になったのかもしれませんが、何か八方塞がりの中で、八方破れの政策で無理を重ねているように感じられます。
さて、これからトランプさんは何をやろうというのでしょうか。そしてトランプさんの来年の選挙はどうなるのでしょうか。
次回もう少し考えてみたいと思います。