tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

今春闘:為替レートと賃金水準の関係に十分な配慮を

2022年01月20日 21時54分57秒 | 労働問題
前回は、プラザ合意で大幅円高になって10年余にわたって賃金水準の引き下げを強いられた日本の経験を教訓に、為替レートと賃金水準の関係を春闘の労使交渉の場でも考慮すべきではないかとの問題を提起しました。
今回はそれに関連した留意点などを見ていきたいと思います。

という事で、プラザ合意の様な事がなぜ起きたかを考えてみますと、あの時は欧米主要国が軒並み不況下(原因は石油危機)の過大な賃上げで、スタグフレーションに陥り、日本だけが賃上げを正常化し健全な経済を維持しました。

その割に、為替レートの変化は少なかったので、結果的に円安になり、日本経済は競争力を増し、ジャパンアズナンバーワンと言われる状態でした。

日本人は真面目で、労使交渉も合理的で、健全な経済運営に労使ともに努力しますから、過度なインフレやスタグフレーションにはならなかったのです。

プラザ合意は、その日本に、経済運営に失敗した欧米主要国が突き付けた要求です。競争力に自信を持っていた日本は鷹揚に「円高、受け入れましょう」といった結果、欧米の思う壺で、30年に亘る円高不況を経験することになったのです。
  
ところで今は日米の金融政策の相違から円安状態になっています。コロナがなければ、安い日本に世界中から観光と買い物の客が押し寄せているでしょう。

貿易収支は原油高で最近は赤字のこともありますが、基調は常に黒字、経常収支は大幅黒字が常態です。

一方、主要国の最近10年間の消費者物価の上昇率(2010年=100)を見ますと、2020年の数字は以下の通りです。
  日本     100.2
  アメリカ   118.7
  イギリス   120.9
  フランス   112.1
  ドイツ    114.2
という事で、日本のインフレ率の極小です。当然競争力は強くなります。(為替レートは通常この動きには追い付いていないので)

これだけ物価が安定していますと、国際競争力は増し、国際収支は常に黒字ですから、円は安定通貨として「何かあると円買い」という事で、基調的には常に円高という事になり、円高にしないために、日銀は異次元金融緩和を続けなければなりません。

偶々今は、アメリカが自国の事情で金利の引き上げを計画し円安になっていますが、更に日本と欧米諸国のインフレ格差が累積しますと、欧米から円は安過ぎるといわれる状態になりかねません。
インフレ嫌いと真面目さのゆえに、欧米から「円高にすべきだ」という声が出て、マーケット(国債投機資本など)がそれに過剰反応する前に、適時に、その芽を摘んでおくことが重要になるのではないでしょうか。

その対策として、最も適切な手段が賃金水準の引き上げでしょう。それもベースアップという形の全産業横断的、出来るだけ均等な賃金引上げという事になるのではないでしょうか。当然それはある程度の物価上昇を呼ぶことになります。

今春闘での、労使双方から、せっかくの円安への動きを十分活用し、また円高に戻ってしまわないような、国際的にも上手くアッピールできるような賃金交渉をお願いしたいと思うところです。

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