tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

東京電力の経営数字 自己資本比率

2011年04月19日 16時04分13秒 | 経営
東京電力の経営数字-1
 昔から、電力債や電力会社の株は堅実な資産作りのための安定した手段として人気でした。就職先としても、お役所と並んで、安定志向の人たちの目標でした。しかも、役所と違って、民間会社ですから親しみもありました。

 そうした超優良会社の代表格の東京電力が、今回の大震災による原発事故で、まさに大揺れに揺れています。
 これは一体どういう事なのでしょうか。その辺りを、経営指標の面から見てみましょう。(平成21年度、単独、従業員数36328人)

 先ず、経営の健全性、財務の安定性を見るための代表的に指標である「自己資本比率 」を見てみますと、平成12年度の13.5パーセントから改善して、漸く17.1パーセント(総資産12.6兆円、自己資本2.16兆円)。優良会社としては異常に低い数字です。
 有名企業では、ファナックの90パーセント前後、トヨタやホンダの60~80パーセント、財務の世界では50パーセントが標準といわれます。

 債務の多くは社債(東電債)で調達したもので、東京電力の経営は絶対に安定したものという認識の下で、東電債は最も安定した投資資産と見られてきていたからこそ、低い自己資本比率でも安心して買う人が多かったということでしょう。

 高度成長期、大蔵省の「法人企業統計」よれば、中小企業も含めた日本の法人企業の自己資本比率の平均は13~17パーセントでした。
 そんな低い自己資本比率でよく経営ができるな(銀行からカネを借りられるな)などと(特に外国から)言われていましたが、その頃の日本企業には、地価上昇による多額の含み益があり、銀行がそれを担保に融資する、メインバンク制度があってこその成立でした。

 客観的に見て、低い自己資本比率で経営出来る背後には、何かそれを担保するものがあるという事でしょう。勿論それは、電力会社の経営は、原子力もふくめて、政府のエネルギー政策に支えられているという「信用」によるものといえると思います。

 自己資本比率だけから見ても、東京電力の姿は、純粋の民間企業としては、極めて不安定なはずの企業が、政府の政策に支えられて、安定を維持しているというものに見えます。
 多分、東京電力は、法的には民間企業であっても、その存在を支えているのは「国策企業」という広い「国民の認識」だといえましょう。

 だからこそ、日本社会は、安心して、電力多消費社会へ驀進できたのです。東京電力とその経営体質はそのためのツールとして大変大きな役割を果たしてきたといえましょう。