司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

株式会社の登記で,代表者が希望すれば自宅住所を非公開に

2023-12-24 17:47:56 | 会社法(改正商法等)
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA128920S3A910C2000000/

「法務省は2024年度中にも株式会社の登記の際に代表者が希望すれば自宅住所を非公開にする方針だ・・・法務省は年内にもパブリックコメント(意見公募)を開始する。省令の「商業登記規則」の改正を予定する。」(上掲記事)

「希望すれば」・・・軒並み希望して,事実上「非公開」になるは必至。

 とはいえ,登記事項であることは変わらないので,司法書士としては,依頼(会社登記の申請にせよ,不動産登記の申請にせよ。)を受ける都度,「代表者の住所が記載された登記事項証明書」の提示を受けて,確認する必要があるといえよう。

 記事にはないが,会社自身が請求する場合には,会社が希望すれば,「代表者の住所が記載された登記事項証明書」が交付されるのであろう。改正後のビジネスにおいては,取引を開始する時点で,この証明書を徴求すべきことになる。

 しかし・・・そもそも会社の設立というのは,代表者個人とは別に権利義務の帰属主体である法人格を作出する行為であり,当該会社の責任の所在を明示する上で,代表者の住所の公示は必要不可欠であるはずである。

 プライバシー云々といって,「住所を公示したくない」というのは,この責任の所在を明らかにしない,隠したいということであるから,本来,そういう声に耳を貸す必要はないはずであろう。

 来年にも予定されている犯収法の改正では,職業専門家においても取引時の本人確認義務が厳格化される等,全ての特定事業者に対して顧客管理が厳格化される方向である。代表者の住所の記載がない登記事項証明書では,法人の代表者の本人確認にはならないから,「代表者の住所が記載された登記事項証明書」を要求することになろう。

 登記制度は,一体何のための公示制度なのか?

 今回の改正は,「取引の安全と円滑に資する」という登記制度の目的に反する愚行ではないのか。

商業登記法
 (目的)
第1条 この法律は、商法(明治三十二年法律第四十八号)、会社法(平成十七年法律第八十六号)その他の法律の規定により登記すべき事項を公示するための登記に関する制度について定めることにより、商号、会社等に係る信用の維持を図り、かつ、取引の安全と円滑に資することを目的とする。
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