tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

大地

2007-01-09 20:01:21 | cinema

パール・バックの「大地」は、母が好きな小説だった。ぼくがたぶん幼稚園生のころ、リバイバル上映の「大地」に連れて行かれ、この映画を観たようだ。当時、よく母に連れられて洋画を見に行っていた。といっても、すぐに飽きて寝てしまうのだが・・・。当時のぼくにとって、映画とはでかい音の音響効果のある寝室だった。今でも、映画館に入ると、ふとそんな感じを抱くことがある。
さて、DVDで観てみたら、映画の内容をおぼろげに覚えていた。主人公のワン・ルンが食べて捨てた桃の種を新婦のオーランが拾って言うせりふ。
”A tree will grow from the seeds” 
”種から木が生長する”。実際に、オーランが植えた種は、10数年後、満開の花と、たくさんの実を結ぶ。映画は、桃の木の生長と背景にワン・ルン一家の推移の歴史性を描いている。(ところで、桃って、肝臓を浄化して血液に良いらしい。)
パール・バックはアメリカ人であるが中国で成長して、中国の生活を小説に書いた婦人作家である。
清朝末期農民一家の数十年にわたる物語。働き者のワン・ルンは、まだ見ぬ嫁をお屋敷にもらい受けに行く。中国では、こんな風習があったのだ。そして、現れたのは、みんなからいじめられ生気の無いお屋敷の奴隷オーラン。ワン・ルンは祖先からの土地を守り、オーランは、ただひたすら夫のため、そして「大地」のために尽くしつづける。しかし、嵐、飢饉、革命に翻弄され一家は路頭に迷う。
この映画でアカデミー主演女優賞を取ったルイーズ・ライナーは、鼻の穴を黒く広げて中国人女性を演じている。この映画が公開された1937年(昭和12年)には日中戦争が起こり、そしてその後の太平洋戦争。恐らく、日本での最初のロードショーは、支那事変による中国への注目が集まった昭和14年ごろなのかも知れない。パール・バック女史はこの作品でノーベル文学賞を受賞した。

オーランは内乱による騒動に巻き込まれ、偶然財宝を手にする。ワン・ルンは、そのお金を元に莫大な財産を築くが、質素な農民の暮らしを忘れ瀟洒な暮らしと第2の妻に狂い始める。家族が崩壊しかかった時に、イナゴの大群が彼の営々と耕した田畑に近づいているという知らせ・・・。
このイナゴの群れの記憶もあった。SFXの無い時代、どうやって雲のようなイナゴの群れを撮影したのだろうか。
最後のシーン。
”I beg you! Stay here with me!”
”I can not!”
”Forgive me!”
”Ou Lang, you are the earth!”
”オーラン、お前は大地だ”っていうせりふ。切ない。